お子さんが不登校になった場合、保護者としては、学校へ行きたくない理由や原因を知りたいものです。
しかしお子さんに「どうして?」と直接聞いても、「めんどくさい」としか言ってもらえない。そのような方もいるのではないでしょうか。こうした状況の場合、お子さんが無気力になっている可能性があります。
この記事では、不登校のお子さんが無気力になる原因を解説します。お子さんの状況別に対応方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
「めんどくさい」と言うお子さんは無気力型の不登校?
ひとくちに「不登校」と言っても、そこにはさまざまな原因があるでしょう。
不登校を原因によって分類する考え方もあり、その中で、「めんどくさい」と言って学校を休み続けているお子さんは、「無気力型の不登校」の可能性があります。
無気力型は不登校の約半数を占めるタイプ
無気力型とは、文部科学省が定義している不登校の6分類のうちの1つです。無気力感によって引き起こされる不登校のタイプを指します。
文部科学省が発表した「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、不登校の理由として「無気力・不安」と答える小中学生が、不登校全体の半数以上を占めています。
(*出典1)令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
「無気力で不登校になる」という状態がよくわからない保護者もいるかもしれませんが、無気力は不登校の理由として一般的なのです。
他のタイプについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
▶不登校のお子さんへの対応はどうする?タイプ別、年齢別に解説します
無気力型の特徴
「無気力型の不登校」とは、具体的にどのようなお子さんのことを指すのでしょうか?
無気力型の不登校には、以下のような特徴があります。
- 文字通り何に対しても「無気力」な状態
- 学校に行かないことへの罪悪感は少ない
- 精神的には比較的落ち着いている
- 心因性の身体症状はないことが多い
- 家では元気で、自分の好きなことをして過ごす
こうした特徴から、無気力型の不登校のお子さんを見ると、お子さんが怠けているように感じるかもしれません。しかし、お子さんなりの無気力さを抱えているため、その背景を考えてみることが大切です。
無気力の背景を理解しようとする姿勢が大切
保護者からすると、お子さんの無気力の原因や背景が気になるでしょう。しかし、はっきりわからない場合も多いです。
こうした状況では、無理に特定の原因に決めつけるのではなく、無気力の背景を理解しようとする姿勢が大切です。
保護者だけで原因を決めつけてしまうと、逆にお子さんに不快感を与えてしまったり、保護者への信頼が薄れてしまったりする可能性があります。
一方、無気力型の不登校でも、原因がはっきりするケースがあります。
たとえば、生活リズムの乱れや、学校の勉強への苦手意識などです。こうした場合であっても、解決策を押し付けるのは避けましょう。保護者が無理にお子さんの行動を変えようとすると、お子さんの自己肯定感が下がってしまい、さらなる無気力につながる可能性もあります。
じっくりお子さんを見守りながら、徐々に気力を取り戻してもらうことを目指しましょう。
「めんどくさい」の本当の意味とは?
お子さんの「めんどくさい」には、本心を明かしたくない心理や、理由をうまく言語化できない状態が隠れているケースがあります。
「めんどくさい」の言葉の背景には、具体的にどのようなパターンがあるのでしょうか?ここでは、5つのパターンを解説します。
①学校に行きたくない理由を話したくない
学校に行きたくない本当の理由を保護者に知られないようにするために、「めんどくさい」で済まそうとする場合があります。
学校に行けない理由を伝えても「どうせ理解してもらえない」「また傷つくだけ」といった、自己防衛の本能が働いている可能性もあります。
また、「本当の理由を話すと保護者が心配してしまう」という思いやりや配慮の気持ちが隠れているケースも少なくありません。
「めんどくさい」と言われたときには、お子さんが自分を守ったり、保護者に心配をかけないようにしている可能性があることも考えましょう。
本心を打ち明けてもらうために、お子さんに「話しても大丈夫だ」と安心感を与えることが大切です。
②自分でも理由がよくわからない・うまく言語化できない
不登校の理由が、自分でもよくわからなかったりうまく言語化できなかったりするお子さんもいます。理由を言葉にしようと努力しても自分の気持ちがわからず、「めんどくさい」としか言えないのです。
不登校の理由は1つでないことが多いです。複数の要因が絡み合っていることもあります。たとえば、学校の先生との関係が悪化して、その結果、学業の成績にも影響が出るといったケースです。
こうした状況において、自分を客観視して、不登校の理由を整理するのは難しいものです。
保護者がサポートできることとしては、お子さんの話をしっかりと聞いて、理由に自ら気づけるよう促すことが挙げられます。カウンセラーなど、専門家に相談して気持ちの整理をするのもよいかもしれません。
③心の病気を抱えている
不登校のお子さんの中には、心の病気を抱えてしまっているケースもあります。
うつ病や社会不安障害などの問題を抱えているお子さんは、学校に行くのがめんどくさいと感じることがあります。こうした場合、学校に行かない理由を聞かれても、「めんどくさい」と答えるのが精一杯なのかもしれません。
病気かどうかの判断は難しいです。「いつも塞ぎ込んでいる人は、うつ病の可能性がある」「人前に出るのを過剰に避けようとする人は、社会不安障害かもしれない」など、病気ごとにいくつかチェックポイントはありますが、保護者が安易に判断することはおすすめしません。
「もしかしたら病気かも…」と思った場合は、病院で診察を受けることが大切です。
④不登校の理由を考えられないほど疲れ切っている
不登校のお子さんは、ある日突然の思いつきのように、「今日から学校行かない」と休むわけではありません。長い期間悩んだ末に、「もう学校に行きたくない」となってしまうのです。
そのため、「学校を休む」と決めるまでの間に悩みながら無理に通学を続けてきたことで、すでに精神的に疲れ果てている可能性があります。
精神的に疲れていると、不登校の根本的な理由を考えることさえも面倒に感じられるでしょう。
こうした場合、生活リズムを整えるとともに、精神的な回復を図ることが大切です。お子さんが精神的に疲れている場合は、まずは回復を優先して休ませることを考えましょう。
⑤怠惰で、文字通りめんどくさいと思っている
不登校のお子さんの中には、文字通り学校に行くのがめんどくさいと感じているお子さんもいます。学校内での勉強や部活、対人関係などの負担が重く感じられ、めんどくさくなってしまうのです。
また、すでに不登校の期間が長引いている場合、生活リズムの乱れや学校への復帰意欲の薄れから、「めんどくさい」と発している可能性もあります。
ただし、こうしたお子さんの不登校の背景にも、何らかの理由が隠れていることが多いです。
そのため、丁寧にケアしていくことが大切です。学校に行けていないことを責めるのではなく、お子さんが家で安心して過ごせるような環境を整えましょう。早寝早起きや、決まった時間に食事を取るなど、生活リズムが整うよう促すのもおすすめです。
「めんどくさい」に隠された意味を知るためには?
ここまで解説してきたように、不登校のお子さんの「めんどくさい」は、文字通りの意味にとどまらないケースも多いです。
では、お子さんの本心を知るために何ができるのでしょうか。保護者ができる5つの行動をご紹介します。
①お子さんを優しく見守る
まずは、お子さんを優しく見守ることが大切です。
「不登校の理由をはっきりさせよう」「学校に行ってもらおう」と考えて、無理に保護者の意見を押し付けたり解決を急いだりすると、逆効果になってしまいます。
お子さんの気持ちを無視して保護者主導で不登校を解決しようとすると、お子さんの自己肯定感を下げてしまい、反発を招きやすいです。
お子さんが自ら学校に復帰したいと思うことができるように、「環境を整えつつ必要に応じてサポートする」姿勢が理想的です。
そのためにまずは、お子さんの家での様子をしっかりと見守りましょう。改めて見てみると、お子さんが今夢中になっていることなど新たな気づきがあるでしょう。そうした気づきが、お子さんの状態を理解するカギになるでしょう。
②生活リズムを整える
学校にしばらく行っていないと、生活リズムが乱れているケースもあります。その場合、まずは生活リズムを改善することがポイントです。
別の理由があって不登校になったにもかかわらず、生活リズムの乱れがきっかけで倦怠感が生じる場合もあります。生活リズムの乱れからくる表面的な無気力感が目立ってしまうと、本来の理由を見落としてしまう可能性があります。ですから、生活リズムの改善は優先順位の高いアクションです。
また、生活リズムを改善するだけでも、お子さんの気持ちが多少前向きになることがあります。保護者の中にも、規則正しい生活ができているときに爽快感を味わった経験がある方も多いでしょう。
以上の理由から、具体的なアクションとしてまずは生活リズムを整えることをおすすめします。
③お子さんが話しやすい空気を作る
お子さんが話しやすい環境を作ることも大切です。
保護者とお子さんの間で積極的にコミュニケーションを取るのはもちろんのこと、保護者同士の意思疎通も欠かせません。
父親と母親の言っていることがまったく違う、矛盾が生じているといったことがあると、お子さんは、何を信じればよいのかわからなくなってしまい、保護者を信じきれなくなってしまいます。
たとえば、父親は学校の勉強を主軸にして欲しいと言い、母親は学校の勉強はほどほどにして、スポーツなど課外活動を頑張って欲しいという場合です。大人であれば、意見を聞いたうえで取捨選択したり、うまく両方の折り合いをつけたりできますが、お子さんはどうすればよいかわからなくなってしまう可能性があります。
こうした状況が度々生じると、お子さんは自分の気持ちを伝えづらくなってしまうのです。
家族全体で、コミュニケーションの量を増やし、お子さんが話しやすい空気を作りましょう。
④お子さんに理由を直接聞く
「直接聞いても答えてくれるはずがない」と思っている保護者もいるでしょう。
しかし、「自ら話はしないけど、聞かれたことには答えようとする」といったタイプのお子さんもいます。
また、答えたくなかったり、うまく答えられないお子さんに対してであっても、理由を聞くことで「あなたのことを気にかけているよ、心配しているよ」という気持ちを伝えることができます。
お子さんとしては、その気持ちが伝わってくるだけでも、救われるような気持ちになったり嬉しくなったりするでしょう。
勇気のいることではありますが、お子さんが自ら話してくれない場合は、保護者から聞くのも1つの方法です。
⑤専門家の助けを借りる
不登校のお子さんへの対応は、保護者の力だけでは対処しきれない部分もあるでしょう。必要に応じて、専門家の力に頼ることも検討しましょう。
「お子さんのことは保護者だけでどうにかしたい」と考えるかもしれませんが、自力で解決することにこだわって状況が悪化してしまえば本末転倒です。
お子さんのことをよく知る保護者と、不登校のお子さんに関する知識を豊富に持つ専門家が力を合わせることで、お子さんの状況を的確に把握できます。
無気力型不登校の4段階別、特徴と対応方法
ここからは、無気力型の不登校を4段階に分けて、それぞれの特徴と対応方法を解説します。
不登校になったばかりの子と長い不登校から回復に向かっている子とでは対応方法も異なってきます。
自分のお子さんがどの段階にあるか考えながら読んでみてくださいね。
①前駆期
<特徴>
前駆期は、「めんどくさい」「だるい」といった言動が増えて、徐々に学校に行きたがらなくなる段階です。強い催促があれば学校に行くのも、この時期の特徴となります。
なぜ学校に行きたくないのか、なぜ無気力になってしまうのかがわかりにくい時期です。保護者としては、本格的に不登校になってしまうのを阻止したいところですが、本人も無気力の原因がわからないことが少なくないため、責め立てるような言動は控えましょう。
<対応方法>
まずは家庭内で、お子さんが話しやすい雰囲気を作っていくとよいでしょう。いきなり、学校に行きたくない理由など話しにくい話題を出しても、お子さんは本心を明かしてくれないかもしれません。
お子さんへの共感を意識して対話を増やしていき、徐々に信頼関係を築くことが大切です。
また保護者自身が、若い頃に悩んでいた話や失敗した話をするのもおすすめです。
「自分の親にもうまくいかない時期があったんだ」と知れば、お子さんも自分の悩みを話しやすくなるでしょう。
②進行期
<特徴>
進行期の特徴としては、お子さんが「学校に行きたくない」と明確に主張し始めます。
前駆期との大きな違いは、強く催促しても学校に行こうとしないことです。むしろ、登校を強制されることは、お子さんにとって大きなストレスとなります。
この段階のお子さんは、好きなことだけをして過ごしがちになります。
<対応方法>
登校を強制するのではなく、対話によって解決することを目指しましょう。学校の話題がストレスとなる場合もあるため、お子さんが興味や関心を持っている話題から始めることをおすすめします。
必要最低限の話しかしなくなりがちですが、突き放してしまうとかえって長期化する恐れがあります。
お子さんが高校生で出席日数や単位の状況が気になる場合は、学校に確認しておきましょう。
③混乱期
<特徴>
混乱期は、文字通りの意味ではなく、お子さんが再登校に向けて行動を始める段階です。編入、進学、受験などについて自ら調べている可能性があります。
小中学生のお子さんの場合、進学について、勉強は追いつけるのか考えていることが多いでしょう。
お子さんが高校生の場合、学校へ復帰する意欲は低くても、アルバイトや一人暮らしに意欲を示している場合もあります。
<対応方法>
お子さんから「〇〇がしたい」と言われた場合、まずはその気持ちや姿勢を肯定しましょう。そのうえで、お子さんに任せきりにするのではなく、保護者もお子さんにアドバイスをしたり一緒に考えたりすることがおすすめです。
そうした中で、お子さんが本当にやりたいことを見つけて、進路上の課題を解決するためのサポートをしていきましょう。
④回復期
<特徴>
回復期では、お子さんがやりたいことを見つけたり、学校への意欲を取り戻したりして、無気力な状態から回復していきます。自分に与えられた役割や課題を受け止め、日々のやるべきことを前向きに取り組む姿が見られるでしょう。
家族と、将来や学校についても話せるようになります。問題がなければ、少しずつ復学することも可能です。
<対応方法>
久々に学校に行くと、想像以上に疲れが出るものです。学校へ復帰する際は、別室登校や保健室登校など、段階的に始めるとよいでしょう。
欠席が長期化している場合、進学など進路に影響する場合がありますが、本人の意思を尊重しながら、将来について一緒に考えていきましょう。
まとめ
この記事では、「めんどくさい」と言って学校へ行かなくなってしまうお子さんに対し、どのように対応すればよいかを解説しました。
「めんどくさい」の言葉の背景にある本当の意味を理解するよう努め、お子さんの状況に合わせて対応することが大切です。お子さんが話しやすい雰囲気を作ったり、生活リズムを整えたりすることもおすすめです。
保護者は、不登校のお子さんを早く学校へ復帰させたいと焦る気持ちもあるでしょう。しかし、無理に学校へ行かせると逆効果になってしまうこともあります。まずは、お子さんを優しく見守ることから始めてみましょう。