お子さんが不登校の状態で、何の悩みもないという保護者はほとんどいないでしょう。不登校児童・生徒が急増している今、お子さんの不登校について悩んでいる保護者も増えています。
不登校の原因は、友人関係のトラブルや学業不振、無気力状態などさまざまですが、そもそもお子さんが保護者に悩みを打ち明けられないことが多いうえ、保護者も「家庭の問題」と捉えてしまい、第三者への相談をためらいがちになってしまいます。
不登校は、お子さんと保護者だけで解決することが難しい問題です。
無理に自分たちだけで問題に対処しようとすると、不登校が長引いたり、お子さんの心身の状態がさらに悪化するなど、解決から遠ざかる恐れもあります。
本記事では、不登校に関する悩みの内容と、その悩みを相談できる専門機関についてご紹介します。
お悩み解決の糸口にしていただけると幸いです。
最初に頼るべき相談先
不登校のお子さんを抱えたとき、保護者として最初に頼るべき相談先は、学校の担任教師です。担任教師は日々お子さんを観察しており、学校での状況を最もよく理解しています。友人関係のトラブルやいじめ、学習面での問題など、さまざまな原因に早く気づき、適切な対応を取ることができます。
また、担任教師はスクールカウンセラーや養護教諭と連携し、必要に応じて専門的なサポートを提供するための窓口となってくれます。保護者が一人で悩む前に、まずは担任教師に現状を伝え、学校全体でどのようにお子さんをサポートできるかを一緒に考えてもらうことが重要です。
教師は単に授業を担当するだけでなく、お子さんの心理的・社会的な成長を見守る存在でもあるため、問題が複雑化する前に早めに相談し、学校と協力して最善の対策を講じましょう。
不登校傾向、不登校になった場合の相談先
不登校支援の専門機関はその道のプロなので、さまざまなケースへの対応経験があります。家族だけで悩む必要はありません。
学校の担任教師以外の相談先についてもご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
①スクールカウンセラー
スクールカウンセラーは、専門的な知識と経験が豊富であるため、精神的に疲弊しているお子さんの話をしっかり聞いてくれるでしょう。
学校とも連携しやすく、スクールカウンセラーと学校、家庭の3者で学校復帰に向けた話し合いをすることもできます。
ただ、お子さんの「話を聞く」ことを軸に対応されることも多いため、具体的な問題解決に至らないこともあります。
②教育センター・教育相談所
各教育委員会が、教育相談を行うための相談窓口として設置している公的機関です。
不登校に関する悩みを相談できるほか、必要に応じた情報を提供してもらえたり、カウンセリングや医療機関などの関係機関との連絡調整を行ってもらえます。
➂教育支援センター(適応指導教室)
不登校に関する支援を行うために教育委員会が設置している公的機関です。
保護者の悩みを相談できるほか、不登校のお子さんに対する通所指導(カウンセリング、教科指導、体験活動など)も行っています。
④チャイルドライン
いじめなどの悩みを持つ18歳までのお子さんを対象とした電話相談窓口です。電話に出るのはボランティアの大人たちで、問題解決を目的とせず、お子さんの「気持ち」を尊重しながらアドバイスをくれます。
名前や在籍校を伝える必要もないため、利用のハードルが低く、気軽に相談できるでしょう。
➄子どもの人権110番
不登校やいじめなどの相談を電話で受けつけています。法務局員や人権擁護委員が相談に乗ってくれます。
⑥24時間子どもSOSダイヤル
夜間休日問わず24時間いつでも利用できる電話相談窓口です。電話は、所在地の教育委員会の相談機関に接続され、さまざまな悩みや不登校に関する相談もできます。保護者も利用できます。
⑦フリースクール
不登校のお子さんに対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設です。 規模や活動内容は施設によって大きく異なりますが、不登校のお子さんを対象とした施設であるため、不登校に関する知見があり、長年不登校のお子さんと関わってきた専門カウンセラーが相談にのってくれる可能性も高いでしょう。
学校への復帰はもちろん、問題解決へのアドバイスをもらえる可能性もあります。
⑧児童相談所
子どもの一時保護などでよく知られている児童相談所ですが、お子さんや保護者からのさまざまな相談に応じ、適切な助言や援助を行っています。
⑨子供家庭支援センター
市区町村における子どもと家庭に関する総合相談窓口です。18歳未満の子どもや子育て家庭に関するあらゆる相談に応じています。児童相談所とも連携しています。
⑩保健所
事業内容や勤務している専門職員、対応可能な相談内容は保健所により異なりますが、思春期のお子さんに関する悩みや不登校・ひきこもりに関する相談ができます。
⑪精神保健福祉センター
専門的な知識を持った担当者が心の不調を持った人の早期的な自立や社会生活への復帰をサポートしています。
うつ病などの精神疾患や不登校・ひきこもりについての相談もできます。
各センターでは「こころの電話相談窓口」を設けており、電話でも相談できるのが特徴です。
⑫ひきこもり地域指導センター
社会福祉士や保健士、臨床心理士、引きこもり支援コーディネーターなどが在籍しており、学校復帰に向けた支援を受けることができます。
⑬青少年センター
青少年育成センターや青少年指導センター、青少年相談センター、少年センターなど、地域の活動内容に応じてさまざまな名称で呼ばれていますが、不登校やひきこもりといった問題に、精神医学や心理学の視点からケアを行っています。
参考箇所:子どもが不登校になった場合、どこに相談したらよいですか。
不登校の悩みを誰かに相談するメリット
不登校の悩みを他者に相談することには、多くのメリットがあります。問題を抱え込まず、積極的に相談することで、お子さんと保護者の双方にとってプラスになる効果が期待されます。
早期の問題解決が期待できる
早めに相談することで、問題が深刻化する前に対処することが可能です。たとえば、いじめや学習に対する不安が早期に把握できれば、学校と協力して適切なサポートを受けられます。
第三者の視点が得られる
相談することで、家族や学校の関係者以外の第三者の視点やアドバイスを得られます。これにより、客観的な意見や新しい解決方法を見つけることができるでしょう。
心理的な負担が軽減される
悩みを誰かに打ち明けることで、保護者やお子さんの心理的な負担が軽減されます。相談することで、自分たちだけでは解決できない問題も、他者の協力を得ながら進めていくことが可能です。
お子さんの自己肯定感が高まる
相談を通じてサポートを受けることで、お子さん自身が「誰かに支えられている」という安心感を持ちやすくなり、自己肯定感の向上にもつながります。
誰かに不登校の悩みを相談するときの注意点
相談する際には、いくつかの注意点があります。適切に相談することで、より効果的なサポートを得ることができます。
相談内容を具体的に伝える
曖昧な話ではなく、どのような状況で何が起きているのかを具体的に説明しましょう。具体的な相談内容が伝わることで、相手も的確なアドバイスやサポートを提供しやすくなります。
お子さんの気持ちを尊重する
お子さんが相談内容にどう感じているかを確認し、無理に問題を押し付けないように気をつけましょう。相談に進む前に、お子さん自身の意見を尊重することが大切です。
相談先の特性を理解する
相談先によって対応できる内容が異なるため、事前にどのような相談が可能なのかを確認しておきましょう。たとえば、スクールカウンセラーは心理面に特化している一方で、学習面での問題には他の専門機関のサポートが必要な場合があります。
不登校は抱え込まず第三者との協力が重要
お子さんが不登校になっても、「しばらくは様子を見よう」と対応を先延ばしにされる保護者がいますが、実は不登校は長引くほど解決が難しくなるため、早めの対応が必要不可欠です。
そして、お子さんと保護者だけで解決を目指すのは、なかなか難しいと思われます。
なぜなら、不登校の原因はいくつかの要因が重なり合っていて複雑なことが多く、原因の特定が難しいからです。
さらに、小学校高学年以降はお子さんが思春期に入るため、学校であった出来事すべてを保護者に打ち明けるということがなくなり、コミュニケーションをとるだけでも一苦労というケースが少なくありません。
お子さんが不登校になると保護者は「原因探し」を始めます。
しかし、もともと特定が難しい不登校の原因探しを保護者だけでするということは、不登校問題だけでなく、親子関係をもこじらせる恐れがあります。
不登校のお子さんが抱えがちな悩み
不登校といっても、不登校の要因やお子さんが何に悩んでいるのかは千差万別です。
一概に、何に悩んでいるということはできないのですが、ここでは、不登校のお子さんが特に抱えやすい悩みについて紹介します。
人間関係について
不登校の理由として、仲間外れや悪口で傷ついたといった人間関係のトラブルをお子さんから聞いた方も少なくないのではないでしょうか?
思春期が始まると、人間関係のトラブルが発生しやすくなります。
思春期のお子さんは「親や友達と異なる自分独自の内面の世界があることに気づきはじめるとともに、自意識と客観的事実との違いに悩み、さまざまな葛藤の中で、自らの生き方を模索しはじめる時期」にあり、繊細で傷つきやすい状態であるため、小さなトラブルが解消せず、大きく縺れてしまうことがあります。
そのような経験から、「学校でクラスメイトとコミュニケーションをとるのが怖い」「仲間外れにされたりいじめられたりするのが怖い」という気持ちになり、人間関係に対して恐怖や不安を感じるようになります。
勉強の遅れや進学について
もともと成績が良かったお子さんの成績が伸び悩み、成績不振が原因で不登校になるケースがあります。
そういったケースでは、「頑張っても意味がない」と自信を失うことにより無気力状態になることが多いのですが、勉強が不登校の直接の原因ではなかったお子さんも、不登校が続くことで「授業についていけなくなるのではないか」「進学できなくなるのではないか」と学業面での焦りが出てきます。
そういった学業面での焦りから、不登校状態である自分に対する自己肯定感が低くなり、更に登校への意欲を失っていくという負のスパイラルに陥る可能性が出てきます。
将来について
学生は、将来の自分がどのように生きているかわからないからこそ、漠然とした未来に不安になることがあります。
自分の希望通りに進学できるのか?
将来やりたいことがわからない状態のままでいいのか?
自分の望む職に就けるのか?
さらに、不登校のお子さんは、他のクラスメイトと同じように学校生活を送れていないという認識があるからこそ、「こんな自分が社会に出てやっていけるのだろうか?」と将来への不安が大きくなる傾向があります。
参考: 文部科学省 子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題
参考箇所:(3)青年前期(中学校)
不登校のお子さんを持つ保護者が抱えがちな悩み
不登校で悩むのは、お子さんだけではありません。不登校のお子さんと同じ数だけ、お子さんの不登校で悩んでいる保護者がいます。
ここでは、不登校のお子さんを持つ保護者が特に抱えやすい悩みについて紹介します。
お子さんの将来への不安
学校は勉強するための場所ですが、集団生活を学ぶ場でもあります。
お子さんが不登校になると、授業についていけなくなることや進学できるかどうかの不安だけでなく、このまま社会に出られなくなってしまうのではないかという不安に苛まれる方も少なくありません。
お子さんの健康への不安
不登校のお子さんは、朝起きて学校に行くというリズムを失ってしまうため、生活リズムが乱れ、昼夜逆転生活を送っていることがよくあります。
規則正しい生活が送れなくなると、朝食・昼食・夕食を決まった時間に食べることもできなくなるため、お子さんの睡眠や食事に悩んでいるという声はよく聞かれます。
周囲とは違うことへの不安
不登校のお子さんのいる家庭はどうしても少数派になってしまうので、不登校のお子さんがいる他の家庭を知らないケースも多くあります。
「近所(ママ友)のお子さんはみんな学校に通っているのに、うちだけどうして・・」
と自分のお子さんだけが不登校になっていると思い、悩みを打ち明けられないだけではなく、保護者同士のコミュニケーションそのものを避けるようになる場合もあります。
親子関係への不安
お子さんが不登校になると、「自分の教育が悪かったせいではないか?」と自分を責めてしまう保護者がいます。
また、お子さんに不登校の原因をしつこく質問したり、学校に行くよう無理に促すことで、親子関係が悪化していくこともあります。
そういった状況では「子どもとの向き合い方」に自信が持てなくなり、子どもへの接し方にも悩むようになってしまいます。
【まとめ】不登校のお子さんには安心して過ごせる居場所を。
不登校に関する悩みはさまざまです。担任の先生に相談して学校と連携することが一番ですが、それだけでは問題が解決しないこともあります。
不登校を相談する専門機関は、ご紹介したとおりたくさんあります。専門機関を活用して、ご自身に合った、最適な相談先をみつけることが大切です。
また、不登校のお子さんを持つ保護者にしていただきたいことは、お子さんに寄り添い、お子さんが安心して過ごせる居場所を提供することです。
「私はあなたの味方だよ」とどんな気持ちにも寄り添い、共感することで、お子さんは悩みを打ち明けやすくなります。
「家族や友達には話しにくいけど、自分では解決できない」「不登校に悩み、落ち込んでいる」という方はぜひ専門機関に相談してみてくださいね。