- 「お子さんが朝なかなか起きてこなくて困っている…」
- 「朝起きられるようにするにはどうすれば良いだろうか?」
- 「このままだと不登校になりそうで心配…」
中学生のお子さんをもつ保護者の間で、「朝起きられない」ことに悩みや不安を抱えている方は多いことでしょう。
お子さんには、できれば朝時間通りに起きて、毎日学校に通ってほしいですよね。
そこで本記事では、中学生のお子さんが朝起きられない原因と、保護者にできる対策を詳しくお伝えします。
朝起きれないのは怠けているからではない!
朝起きられずに学校に遅刻したり欠席したりするお子さんは一定数います。
そうしたお子さんに対して「怠けている」「サボっていてだらしない」という印象を抱いてしまいがちです。
しかし実際のところ、ただ怠けているというわけではありません。
何らかの原因がある場合が多いです。
怠けや気の緩み以外に、何か起きられない理由があるのではないかという視点を持って、冷静にお子さんと接することが大事になってきます。
それでは、いったいなぜお子さんは朝起きられないのでしょうか?
考えられる主な原因を3つ解説します。
中学生のお子さんが朝起きられない3つの原因
原因①|睡眠の質と量の問題
よくある原因の1つが、睡眠不足や睡眠の質が低いということです。
中学生になると、勉強に部活動と忙しくなり、毎日やらなければならないことに追われることが増え、結果的に慢性的な睡眠不足になることが多いです。
また、日常的にストレスを感じるお子さんも睡眠の質が低くなりがちです。
ストレスは自律神経の働きを乱し、睡眠の質を下げる大きな要因になります。
精神的に緊張した状態が続くと、ふつう夜に副交感神経が働くところ、交感神経が活発になり、覚醒状態で眠りが浅くなります。睡眠の質が落ちると次の日も疲れがとれず、起きられない原因になってしまいます。
他にも、スマートフォンの使いすぎは睡眠の質に影響します。
寝る前にスマホでブルーライトを浴び続けると、なかなか寝付けなかったり、眠っても睡眠の質が悪くなります。
お子さんが寝床についたと思っていても、布団の中でこっそりスマホのSNSやゲームをしているかもしれません。
(*出典1)日本医療機能評価機構認定病院 地方独立行政法人 筑後市立病院|Vol.43 睡眠不足とブルーライト
原因②| 起立性調節障害の症状の疑いがある
起立性調節障害とは、自律神経の異常で循環器系の調節がうまくいかなくなる病気です。
実は、中学生のおよそ1割が起立性調節障害と言われているくらい、珍しい病気ではありません。
思春期は身体が急速に成長する時期で、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
その結果、血流が悪く貧血のような症状が起こり、「朝起きられない」状態になります。
実際、以下のチェックリストに3つ以上もしくは強い症状が2つ以上当てはまり、かつ他の病気が見られない場合は起立性調節障害の可能性があると言われています。(*出典1)
- 立ちくらみやめまいを起こしやすい
- 朝なかなか起きられない(午前中は調子が悪い)
- 立ち上がったときに、気持ちが悪くなったり気を失ったりする
- 少し動いただけで動悸・息切れがする
- 入浴時や、嫌なことを見聞きしたときに気持ちが悪くなる
- 食欲不振がある
- 倦怠感がある、もしくは疲れやすい
- 頭痛がある
- 顔色が青白い
- ときどき腹痛を訴えている
- 乗り物酔いしやすい
(*出典2)一般社団法人 起立性調節障害改善協会|起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト
主な症状は「朝、身体や頭が重く起きあがることができない」ですが、午後には回復してくる場合が多いです。
こういった症状・傾向が確認された場合は、一度病院で診察してもらうことをおすすめします。
原因③ |心理的な要因が関わっている
お子さんが朝起きられないのには、さまざまな心理的要因が関わっているかもしれません。
心理的要因は主に以下の2つが挙げられるでしょう。
①学校への不安感
【原因の例】
- 学校の人間関係がうまくいっていない
- 学校の先生との関係がよくない
- いじめに遭っている
②良好な親子関係を築けていない
【原因の例】
- お子さんに対して過保護である
- 放任主義でお子さんをあまり構っていない
- 親とお子さんの力関係が逆転している
学校に行くのが不安だけれど、起きたら学校に行かなければならないという重圧に耐えられなくなって、朝起きられなくなることがあります。
ストレスに敏感なお子さんや真面目なお子さんに多く、心理的な不安が症状として出る場合があります。
また良好な親子関係が築けていないと、お子さんの自己肯定感が下がり、ストレスを多く感じることで起きられなくなることに繋がります。
お子さんの心の状態に問題がありそうなら、原因は何なのか、その原因を取り除くことはできるのか、お子さんとのコミュニケーションを通して明らかにしていくことが大切です。
朝起きられない・起きない中学生は不登校になりやすくなる?
不登校の3人に1人は朝起きられないことが原因
中学生になると、朝起きれないお子さんが増加する傾向があります。
起こしても起きないし、無理やり起こしても不機嫌になって困ってしまうとお悩みの方は多いです。
しかし、朝起きられないという状態を放置しておくのはとても危険です。
学校に遅刻することが増えると、ますます学校に行きにくくなり、最悪の場合、不登校になってしまうかもしれません。
文部科学省の調査によると、朝起きられないなど「生活リズムの乱れ」が不登校のきっかけになった人は34%いました(複数回答可)。
いじめを含む「人間関係」(53%) に次いで2番目に多い回答でした。
(*出典3)文部科学省|不登校に関する実態調査~平成 18 年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~
実に不登校になってしまった人の3人に1人が、朝起きられないことから不登校が始まったことを考えると、早急に対策を考えなければならないことがわかります。
お子さんを無理やり起こそうとするのはNG
朝起きられない状態のお子さんを放置するのは危険です。
でも、お子さんを無理やり起こそうとするとかえって逆効果になります。
なぜなら、無理やり起こされると、余計にストレスがかかって自律神経のバランスをさらに崩す可能性があるからです。
他にも親子関係をより悪化させる可能性もあるので、無理やりお子さんを起こすのはおすすめしません。
お子さんをどのように起こすかについては、より慎重な姿勢で望まなければいけません。
朝起きられるようになるために保護者ができる対策
起きられないお子さんをよく観察する
朝お子さんが起きられない原因は、今までお伝えしてきた通りさまざま考えられます。
また1つの原因だけでなく、いろいろな原因が複数混ざっていることもありえます。
そのため、お子さんの日々の言動に意識を向け、注意深く観察してみましょう。
以下はお子さんを観察する際に注目すべきポイントと、疑われる朝起きられない原因です。
- 起きないお子さんの顔色がよくない or 体の不調を訴える
→起立性調節障害などの病気の可能性
- 就寝時間を過ぎても起きている様子がある
→両親に悟られないようにこっそり夜更かしをしていて寝不足の可能性
- 学校に行くこと自体辛そうである
→学校に行くのが不安だから起きたくない
お子さんの朝起きられない原因がわかってきたら、お子さんに負担をかけない程度で、一緒に話し合ってみましょう。その際、お子さんの気持ちや考えを否定するのではなく、「自分はお子さんの味方」というスタンスでいることが大事です。
良い親子関係を築くことが重要
中学生のお子さんは、多感な時期でもあって、学校でストレスを抱えやすくなります。
そのストレス解消のためには、家庭がストレスを癒せる居場所であることがとても大事です。
親がお子さんに対して過保護であったり、逆に放任であったりと、親からの愛情不足を感じていると、学校でのストレスを解消できません。
それどころか、家庭でもますますストレスを貯めてしまうことになります。
その結果、ストレスが原因で寝つきにくくなったり、そもそも学校に行く気が失せて朝起きない、といった行動に繋がってしまいかねません。
お子さんとの関係を良好に保つことで、お子さんの自己肯定感も高まります。
その結果、学校に行くことが楽しくなったり、朝起きるのも苦痛でなくなるといったポジティブなサイクルを生み出すきっかけになるのです。
良い親子関係を築くためのポイントを以下にまとめます。
- 適切な距離感でお子さんに接する
- 結果ではなく、お子さんが行動した過程に目を向けて褒める
- 良い行いをしたら素直に認めてあげる
- ダメなことはダメと毅然とした態度で教える
お子さんが安心してのびのびと過ごせる家庭をつくるためにも、良好な親子関係を築いていきましょう。
生活リズムを整える
朝起きられない原因の1つに、生活リズムの乱れがあります。
生活リズムを整えるためにも、夜更かししないことや、就寝前にスマホやゲームなど明るい画面を極力見ないことが大事ですが、なかなかお子さんのこうした行動を変えるのは容易ではありません。
そこで、親にできる対策の例を以下にまとめます。
- 朝はカーテンを開けてしっかり朝日を浴びせる
- 朝ごはんをきちんと食べさせる
- 日中はよく活動させる
- 夜はできる限り照明を暗くする
- 就寝環境を整える
- お子さんに過度なストレスを与えない
- スマホを寝室に持ち込まないルールを作る
以上はすべて、睡眠の質を高めるための方法になります。
生活リズムを整えるためには、睡眠時間と睡眠の質の両方を高めていくことが大事です。
そのため、お子さんが睡眠の質を高められるように工夫をしつつ、それに加えて睡眠時間もしっかり確保できるよう、夜更かししないように促すことも大事です。
起立性調節障害やうつ病が疑われる場合は早めに診断を
朝起きれない原因に、起立性調節障害や、そのほか心理的な要因も考えられるとお伝えしました。
もしそうした症状が少しでも疑われるなら、専門の医療機関を受診することをおすすめします。
親だけでなくお子さん自身も気づくことができない病気が潜んでいる可能性もあるので、異常を感じたらすぐに専門知識を持つ病院や医師に相談しましょう。
まとめ
今回は、「中学生のお子さんが朝起きられない原因と、保護者にできる対策」について解説しました。
〈中学生のお子さんが朝起きられない3つの原因〉
原因① 十分で良質な睡眠が取れていない
原因② 起立性調節障害の症状の疑いがある
原因③ 心理的な要因が関わっている
〈朝起きられるようになるために保護者ができる対策〉
- 起きられないお子さんをよく観察する
- 良い親子関係を築いて子どもの自己肯定感を育てる
- 生活リズムを整える
- 起立性調節障害やうつ病が疑われる場合は早めに診断を受ける
ここまでの内容が少しでも皆さんの悩み解決の一助になれば幸いです。
【出典一覧】
*1 日本医療機能評価機構認定病院 地方独立行政法人 筑後市立病院|Vol.43 睡眠不足とブルーライト
参考箇所:中学生のお子さんが朝起きられない3つの原因
*2 一般社団法人 起立性調節障害改善協会|起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト
参考箇所:中学生のお子さんが朝起きられない3つの原因
*3 文部科学省|不登校に関する実態調査~平成 18 年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~
参考箇所:朝起きられない・起きない中学生は不登校になりやすくなる?