近年増加傾向にある不登校児童。
不登校状態、または不登校傾向にあるお子さんが「家でゲームばかりしている」と気になっている方も少なくないのではないでしょうか。
不登校の小学生・中学生に対する調査では、学校を休んでいる間の過ごし方として「インターネット・ゲーム・動画視聴」が非常に高い結果となっています。
学校を休んでいる間の過ごし方として「インターネット・ゲーム・動画視聴」での「していた」「ときどきしていた」の回答割合
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小学生:82%
中学生:87%
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このことから、不登校状態で自宅にいる間、ほとんどのお子さんがゲームや動画サイトに触れて過ごすともいえるでしょう。
その中で、ゲームとどう付き合っていくかという点は重要です。
際限なくゲームをプレーして生活リズムが乱れたり、オンラインゲームのコミュニケーションにのめり込み、リアルの世界が疎かになってしまうというリスクも無いとはいえません。
今回は、不登校のお子さんがゲームに依存しがちな理由と、禁止以外の対処法をご紹介します。
(*出典1)不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書
不登校がゲーム依存になるのはよくあること?
不登校のお子さんがゲームばかりしていて心配だという方は非常に多いでしょう。
実際、家でお子さんがゲームばかりしていると感じている保護者は多いです。
ある調査によると、不登校に限らず、10代の16.9%がネットゲーム依存の傾向にあるようです。
このデータからわかるように、お子さんがゲームばかりしているのは決して珍しいことではありません。
この記事では、不登校のお子さんとゲームの関わり方について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
(*出典2)タイプ別にみたネット依存傾向者と脱却者の分析
不登校のお子さんがゲームに依存しがちな3つの理由
ここでは、不登校のお子さんがどうしてゲームに依存しているのか、3つの理由を解説していきます。
①現実から逃避できるから
不登校のお子さんは学校で居場所や仲間が少ないため、孤独感に襲われているかもしれません。
そんな現実の孤独感から目を背けたくて、ゲームの世界に逃避している場合があるでしょう。
ゲームの中では、好きなキャラクターや世界観に囲まれ、心地よい興奮を感じることができます。また、オンラインゲームでは、匿名性のある他のプレイヤーと交流できるため、居心地の良さを感じることができるのです。ゲームの世界で得られる安心感や居場所感は、不登校の子どもにとって大きな支えとなっているのです。
②ゲーム内ならコミュニケーションを取りやすいから
不登校の子どもは、対人関係にストレスを感じることが多く、学校では友人関係の構築が難しい場合があります。そのため、ゲームの中でのコミュニケーションを社会的なコミュニケーションの代用としていることがあるでしょう。
オンラインゲームでは、プレイヤー同士でチャットができたり、ボイスチャットで会話ができます。匿名性のあるこのようなコミュニケーションは、不登校の子どもにとって精神的な負担が少ないのです。ゲームを通じて得られるコミュニケーション経験は、実社会での人間関係構築の練習にもなるでしょう。
③達成感で自己肯定感を得られるから
ゲームでは、目標を達成するごとに報酬がもらえたり、新しいステージが開放されるなどの達成感が得られます。
不登校の子どもは、学校での達成感や充実感が得づらいため、ゲームの中で小さな達成感を積み重ねることで精神的な満足感を得ているのです。また、ゲームのクリアや高得点獲得といった目標達成は、できないことが多い実生活と比較するとある意味容易で、自信を回復する手段にもなりえます。
ゲームで得られる達成感が自己肯定感の向上に結びつき、結果的にゲーム依存を深めてしまう場合があるのです。
不登校のお子さんにゲームを禁止してもいい?
「ゲーム=娯楽」というイメージがあるため、お子さんがゲームをプレーすることに対して、否定的な感情をお持ちの方も多いはずです。
ですが、お子さんのゲームを禁止してしまうのはNGです。
不登校のお子さんは、自分が不登校であることに対して少なからず罪悪感を抱いています。そんなお子さんにとって、ゲームは一時的に罪悪感を忘れられる手段です。
そのため、ゲームの禁止はお子さんがさらなる罪悪感を抱くきっかけを生み出します。
また、ゲームをすることで、不安やストレスを和らげられます。お子さんは将来に対する不安や、不登校であることに不安を感じています。
ゲームばかりしているのは、「今はゲームでしかそんな気持ちを忘れられない」からです。不安やストレスを和らげるための別の手段を一緒に見つけてあげましょう。
ゲームを禁止する以外の対処法
お子さんが家でゲームばかりしていると、心配になってゲームを禁止してしまいがちです。ですが、前述のとおり、ゲームを禁止してしまうのは逆効果です。
それではどうすればよいのか、対処法を詳しく解説していきます。
①利用時間やルールを決める
まず一つめの対処法は「利用時間やルールを決める」です。
頭ごなしにゲームを禁止しても、かえって反発を招いてしまうだけです。
ゲームを禁止するのではなく「10時から14時まではゲームをしてもいい」などと、具体的な利用時間やルールを示してゲームをさせてあげるのがよいでしょう。
お子さんもゲームをしたいという欲求を満たせ、ストレスの解消にもつながります。
お子さんと話し合って、お子さんの意向を踏まえながら利用時間のやルールを決めるようにしましょう。
②1日のスケジュールを立てる
1日中やることがないために、ゲームをしてしまっている場合もあります。
起床時間や就寝時間、勉強をする時間といった形で、1日のスケジュールを立ててしまいましょう。この時、自由時間を設けてあげることがお子さんにとって非常に大切です。
自由時間がないと、保護者に拘束されているという感覚になります。多めに自由時間を確保してあげるのもよいかもしれません。
お子さんが細かくスケジュールを立てるのを嫌がった場合には、日課やタスクを提示してあげるのも一つの手です。
③居場所を見つける
ゲームがお子さんの居場所だという場合もあります。
この場合、別の居場所を見つけないとお子さんがゲームから離れることはなかなか難しいです。
例として、お子さんの居場所の一つに「フリースクール」があります。フリースクールとは、何らかの事情で学校に通えないお子さんのための施設です。
フリースクールに通うことで、学校の出席として認められる場合もあります。
フリースクールについてはこちらの記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
▶フリースクールとは?基本情報から学費・進学可否まで幅広く解説
その他にも、塾や教育支援センターなどがお子さんの居場所になり得ます。
お子さんと一緒にゲームや学校以外の居場所を探してみましょう。
まとめ
不登校のお子さんの自宅での過ごし方の中で、ゲームやインターネットを利用して遊ぶという回答は非常に多い結果となっていました。
保護者としては、自宅で過ごす時間の中で勉強や読書をして欲しいと思うことは自然なことかもしれません。
しかしながら、不登校状態のお子さんは、一時的に傷ついたり心が疲弊していることもあるため、自宅で過ごす時間を出来るだけストレスなく心身の回復に努められるようにすることが望ましいです。
ゲームと上手く付き合いながら、お子さんが安心してご家庭で過ごすことができるよう、考えていきましょう。
【出典】
*1 文部科学省|不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書
参考箇所:冒頭部分
*2 タイプ別にみたネット依存傾向者と脱却者の分析
参考箇所:不登校がゲーム依存になるのはよくあること?