新型コロナウイルスによる生活環境の変化などが背景にあり、不登校児童の数は増加の一途を辿っています。
多感な時期でもある高校生のお子さんは、小さな変化がストレスにつながりやすく、様々な要因が絡み合った結果として不登校の状態になることがあります。
学校を長く欠席すると進級や卒業にも影響が出るため、保護者としては何とかしたいという思いもあるかもしれません。
この記事では、高校生が不登校になる原因や不登校のサイン、保護者ができる対応方法など幅広く解説します。
高校生全体の1.69%が不登校の現状
そもそも、不登校とはどのような状態を指すのでしょうか?
文部科学省は、不登校を以下の2つの条件を満たす状態のことだと定義しています。
- 年間30日以上欠席した者(病気や経済的な理由による者は除く)
- 何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因や背景により、児童・生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にあること
さらに、文部科学省が行った調査によると、令和3年度における高校生の不登校者数は50,985人。全国の高校生全体の1.69%が不登校だとわかりました。
この調査データには、年間30日以上欠席した生徒しか含まれていないため、欠席日数29日以下の不登校傾向にある生徒たちはさらに多く存在すると考えられます。
また、小・中学校と違い、高校生の場合は「進級・卒業に必要な出席日数が定められている」ことにも留意しなければなりません。一定の期間以上学校を欠席した場合、留年もしくは退学となるケースも見受けられます。
不登校についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
▶日本の不登校の現状は?不登校7つのタイプの原因・解決方法も解説
(*出典1)令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
(*出典2)不登校の現状に関する認識 文部科学省
高校生が不登校になる6つの要因
高校生が不登校に要因として以下の6項目が多い傾向です。
- 無気力・不安(36.8%)
- 生活リズムの乱れ・あそび・非行(12.4%)
- 入学・転編入学・進級時の不適応(10.5%)
- いじめを除く友人関係をめぐる問題(10.5%)
- 学業の不振(7.4%)
- 進路に係る不安(5.1%)
不登校を引き起こす原因が必ずしもひとつであるとは限らず、これらの要素が複数重なって学校にいけなくなることもあります。
(*出典3)不登校の現状に関する認識 文部科学省
不登校の要因は、いくつかのタイプに分類され、それぞれ対応についても変わることがあります。
詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
▶日本の不登校の現状は?不登校7つのタイプの原因・解決方法も解説
高校生に見られる不登校の前兆
不登校状態になる際は、いきなりその状態になるわけではありません。
文部科学省が定義する不登校の状態になるまでにはいくつかのステップがあり、その間に、お子さんたちに見られる前兆があります。
そのような前兆について、いくつかの例をご紹介します。
学校生活について話さなくなった
いつもは学校生活についてよく話していたのに、あるときからあまり話さなくなったと感じたら注意が必要です。
その理由は、学校で何か嫌なことがあったとしても、心配をかけたくないという気持ちが働き、周りの大人に話さない可能性もあるためです。
「なかなか自分から話しづらい」「悩みを気軽に相談できない」などの理由も考えられます。保護者から話しかけてみるようにしてください。
友達と話したことや学校で起きたことなどを突然話さなくなった場合には、保護者からお子さんに話しかけてみてください。
登校を渋るようになった
登校の行き渋りは、典型的な不登校の兆候のひとつです。以下のような行動がみられる場合は、お子さんが悩みを抱えているかもしれません。
- 朝起きるのが遅い
- 起こすと反抗的な態度をとる
- 頭痛や腹痛を訴える
- 通学の準備に時間がかかる
- 登校時間をすぎると元気になる
もしお子さんが「学校にいきたくない」と訴えるようになったら、SOSのサインかもしれないと覚えておきましょう。
家で勉強や宿題に取り組まなくなった
高校生が不登校となる予兆のひとつとして「家で勉強しなくなった」ということがあげられます。
このような場合には「人間関係のトラブルなどにより無気力になっている」「授業についていけない」などの原因が隠れている可能性があります。
何もせずに放っておくと、お子さんがさらに授業についていけなくなり、自信を無くしてしまうかもしれません。もしかしたらお子さんは、自分ではどうしたらいいかわからず困惑しているケースも考えられます。
保護者から声をかけ、どうしたら改善できるかを話し合うことも一つの手です。「授業についていけない」ということだけが要因の場合、塾や家庭教師を利用することで解決できる可能性もあります。
保護者ができる不登校の高校生への対応
高校は義務教育ではないため、不登校が続くと進級や卒業ができなくなる可能性があります。また、不登校が長期化すると原因の解決が難しくなる可能性も高まります。
そのため、保護者が不登校の傾向を察知し、適切に対応することが大切です。
ここでは、不登校の高校生について、保護者ができる8つの対応をご紹介します。
不登校について正しく理解する
まず、不登校について保護者が正しく理解することが大切です。
不登校は様々な要因が複雑に絡み合って起こる事象であり、誰でもその状態になる可能性があります。
ですので、不登校は問題行動などではなく、一時的に学校に行けなくなってしまっている状態だということを理解しておきましょう。
不登校であることに対して一番苦しんでいるのはお子さん自身です。「子どもがどのような気持ちでいるのか」「保護者ができることは何か」など、お子さんの気持ちに寄り添い、できることを一緒に探していくことが大切です。
原因を必要以上に言及しない
お子さんが話したくないのであれば、学校に行きたくない原因を追求しないようにしましょう。繰り返し原因を聞くことは、お子さんを追い詰め、自尊心を傷つけてしまう可能性があります。
保護者としては、不登校となった原因を少しでも知りたいという気持ちがあるかもしれません。
お子さんが話したくないのであれば無理に聞き出そうとせず、見守る姿勢でお子さんに安心感を与えるよう意識しましょう。
無理に登校させない
お子さんが「学校を休みたい」と訴えたときには、その通りに休ませてあげましょう。
「一度休ませたら癖になるから」「文句を言わずに早く準備しなさい」と無理やり学校に行かせてしまうと、お子さんが心を閉ざしてしまう可能性があります。
先述した通り、不登校になる要因はさまざまです。その要因が学校の中にある場合、無理に登校させることで事態がより深刻になる恐れがあります。
まず、お子さんの気持ちを認めてあげることが大切です。そうすることで「親は自分の味方でいてくれる」とお子さんが感じられ、悩みについて相談しやすくなります。
また、「今日も学校に行けなかった」という罪悪感は自己嫌悪を引き起こす場合もあります。「学校を休んでもいいよ」という保護者の一言によってお子さんの気持ちが一気に楽になることもあるでしょう。
保護者は「このまま休み続けたら学校に戻れないかもしれない」と不安に思うかもしれません。しかし、無理に登校をさせることは、不登校の深刻化や親子関係にも影響をあたえるかもしれません。
ありのままのお子さんを受け止めることが解決への第一歩へとつながります。
学校や担任の先生に相談する
お子さんが不登校かもしれないと感じたら、担任の先生や学校、スクールカウンセラーに相談してみましょう。
スクールカウンセラーとは、学生の悩みだけでなく、先生や保護者などの心のケアを行っている教育心理学の専門家のことです。
家では元気だというお子さんでも、学校では何らかのサインを発していることがあります。たとえば「保健室に行くことが増えた」「友達とうまくいっていないように見受けられる」など、学校に相談することにより、家庭では分からない学校での様子を把握できます。
お子さんとの家庭内での関わり方や、学習面での不安点などを先生やスクールカウンセラーに相談しても良いでしょう。
しかし、学校の先生との関係性が原因で不登校となったケースもあるようです。そのような場合は学校に連絡するよりも、不登校の悩みを相談できる機関を探してみた方が良いかもしれません。
たとえば、「児童相談所」「児童相談センター」「児童家庭支援センター」などがあげられます。お子さんの悩みだけでなく、保護者の相談も受け付けているため、近隣の機関を調べてみても良いでしょう。
医療機関を受診する
頭痛や腹痛などの体調不良を訴え不登校になってしまっている場合は、内科や精神科、心療内科など医療機関への相談も検討すべきかもしれません。身体の不調が原因でお子さんが不登校となってしまうケースもあるためです。
他にもストレスが原因で身体にも症状が現れることがあります。たとえば、起立性調節障害が原因で不登校となる高校生もいます。起立性調節障害とは、自律神経失調症のひとつで、頭痛・立ちくらみ・めまい・倦怠感などの症状がみられる疾患です。
頭痛や倦怠感などは、一見するとちょっとした体調不良にも見えるかもしれません。しかし、そのまま放置するとさらに症状が悪化する可能性もあります。
体調が悪化することにより、不登校からの復帰が困難になるかもしれません。そのような状況を防ぐためにも、身体の不調がある場合は、可能な限り早めに対処することが大切です。
家庭教師やフリースクールの利用を検討する
お子さんが学校を休みがちになったら、家庭教師や塾、フリースクールの利用を検討してみましょう。その理由は、学校を欠席すると勉強面での遅れが発生し、授業についていけず進学・卒業できないケースがあるためです。
フリースクールとは、不登校のお子さんに対して学習環境を提供している民間の施設です。
手厚いサポート体制が整っており、一人ひとりの状況に合わせて指導してくれます。そのため、学校に行けない分の学習も十分にカバーできるでしょう。
また、学習面の支援を受けられるだけでなく、家族以外の人々と関わりを持てることも大きなメリットです。
フリースクールや塾を利用している不登校の高校生も多くいます。同じような境遇の同年代だからこそ悩みを共有したり、支えあったりできることもあるでしょう。
学校に通っていないと社会との繋がりが薄れ、他人とコミュニケーションを取ることが怖くなってしまうケースもあります。そうならないためにも、家族以外との接点を持てる塾やフリースクールの利用も視野に入れて考えても良いかもしれません。
進級に必要な出席日数を確認しておく
お子さんに不登校の傾向が見られたら、進級に必要な各科目の出席日数などをチェックしておきましょう。
多くの高校では、本来の出席日数の2/3以上を基準としています。しかし、学校によって最低出席日数の目安は異なるため、各自で学校に連絡してみてください。
必要な出席日数がわかっていれば「様子をみるために休んでいただけなのに、いつの間にか留年が確定してしまった」「留年は避けたいけどあと1日しか休めない」という状況を避けられるでしょう。
留年ギリギリではなく前もって把握しておくことで、お子さんと一緒にこの先のことを考えられる時間ができます。
出席回数が足りていなくても、補講や課題の提出などにより進級できる学校もあります。「欠席しすぎて留年しか選択肢がない」という状況にならないよう、あらかじめ出席日数を学校に確認しておくと安心です。
(*出典4)文部科学省 平成25年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について
不登校の高校生の復学以外の選択肢
お子さんが現在通っている高校への復学が難しい場合、以下の2つの選択肢が考えられます。
- 転校・編入
- 高卒認定の取得
それぞれについて詳しくみていきましょう。
転校・編入
環境を変えて高校に復学する場合に、転校もしくは編入という2つの手段があります。
①転校
転入学とも呼ばれており、今の高校から他の高校に移ることを指します。転校の特徴は、在籍期間に空白をあけずに違う学校に移るため、同学年の生徒と一緒のタイミングで卒業できることです。
②編入
高校を一度退学して他の高校に再度入学することです。転校と違い一旦高校をやめることになるため、空白期間ができます。卒業時期がズレてしまうケースもあるので留意しましょう。
転校・編入どちらがいい?
結論として、転校と転入どちらを選んでも高卒資格の取得が可能です。卒業時期をズラしたく無い場合は転校を選択した方がいいでしょう。
また、全日制の高校から通信制の高校に移る不登校の生徒も多く見受けられます。
通信制の高校であれば、全日制の高校のように登校日数の制限が厳しくありません。高校によって制度は異なりますが、レポートを提出して1年間に3日登校すれば卒業できるという高校もあるようです。
さらに、一人ひとりに対するサポート体制が充実しているため、自分のペースで学習できることもポイントです。
高校を卒業しておきたいという場合は、転校や編入を検討してみると良いでしょう。
高卒認定の取得
転校や編入が難しい場合は、高卒認定の取得を検討してみましょう。
高卒認定は、正式名称を「高等学校卒業程度認定試験」といいます。試験に合格すると、高校卒業と同等の学力を有していると証明できます。
試験日が属する年度の終わりまでに満16歳以上になる人であれば、誰でも試験を受験できる試験です。
文部科学省は、年に2回高卒認定試験を実施しており、合格できれば専門学校や大学の受験に挑戦することも可能です。
高校を卒業できなくても将来の選択肢が狭まってしまうことはないため安心してください。
高卒認定を取得しても最終学歴が高卒になるわけではありませんが、選べる進路の幅が広がることは大きなメリットだといえます。
不登校の高校生の大学受験について詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。
▶不登校でも大学受験はできる?入学資格、受験勉強のポイント、保護者ができることを解説!
まとめ
今回は、高校生の不登校について解説しました。
- 高校生が不登校になる要因は、環境の変化・勉強・人間関係・遊びや非行・将来への不安・こころの不調などさまざま
- 高校生の不登校が長期化すると進級や・卒業が難しくなるため、初期対応が大切
- 学校復帰が難しい場合は、転校や編入、高卒認定の取得など他の選択肢もある
環境の変化や人間関係の悩みなど、さまざまな要因が積み重なって不登校を引き起こします。お子さんが学校に行きたくないと訴えた場合は、無理に学校に行かせることはせず、一旦休ませてあげることが大切です。
まずは保護者が不登校について正しく理解し、お子さんに寄り添う対応をしていきましょう。
【出典一覧】
*1 令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
参考箇所:高校生全体の1.69%が不登校。潜在的にはさらに多い
*2 不登校の現状に関する認識 文部科学省
参考箇所:高校生全体の1.69%が不登校。潜在的にはさらに多い
*3 不登校の現状に関する認識 文部科学省
参考箇所:高校生が不登校になる6つの要因
*4 文部科学省 平成25年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について
参考箇所:進級に必要な出席日数を確認しておく