不登校の児童生徒が年々増加していることについて、耳にした方も多いかもしれません。
不登校になる要因として、お子さんを取り巻く環境も影響します。ですので、前提として不登校という”状態”は誰にでも起こりうる可能性があります。
不登校は問題行動ではなく、様々な要因や背景から結果として起こりうるものですので、お子さんに対して共感し、寄り添う姿勢が重要です。
(*出典1)不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)
その前提を踏まえ、不登校になるお子さんの性格傾向を把握しておくことで、対応の方法やコミュニケーションの取り方についてのヒントになったり、不登校傾向の早い気づきや、対応・対策に役立つ可能性があるかもしれません。
この記事では、不登校になる人の特徴的な性格傾向などについて、研究結果なども踏まえて解説していきます。
学生時代に不登校だった人のその後は?
「不登校が今後の人生にどのような影響を与えるのだろうか」と不安に感じる保護者も少なくはないのではないでしょうか。
不登校だった人のその後を知っておけば、必要以上に不安にならず、早期に対策することも可能です。まずは、不登校だった人の進路や将来について統計を基にしつつご紹介します。
不登校の経験者の高校進学率は8割以上に
とくに、不登校状態である中学生の保護者からすると、「このままでは、高校進学も危ういのではないか」と感じる方もいるでしょう。
文部科学省が発表した、不登校だった中学3年生の5年後を調査した結果によると、不登校の生徒の高校進学率は、85.1%だとわかりました。
さらに、不登校を経験した中学生が20歳になったときに、進学もしくは就労している割合は81.9%という数字でした。
(*出典2)「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)
ひきこもりやニートになる可能性が高いというデータも
一方、不登校だった人は、ひきこもりやニートになる可能性が高いというデータも出ています。
内閣府が令和元年に発表した調査によると、不登校を経験していない人と比べ、不登校だった人が引きこもりを経験する割合は急増しています。また、不登校といじめが重なると、引きこもりを経験する割合が、60.8%にまで増加する結果となりました。
(*出典3)内閣府 子供・若者の意識に関する調査(令和元年度)
同じように、不登校とニートの関係性を調べた調査では、不登校を経験していない人がニートを経験する割合は9.1%、不登校だった人が37.3%と大きな差がみられます。
(*出典4)内閣府 子供・若者の意識に関する調査(令和元年度)
お子さんが不登校を乗り越え前向きに人生を歩んでいくには、保護者のサポートは欠かせません。お子さんが前を向けるようにするためにも、不登校を早期に発見し、対応していくことが大切です。
不登校になりやすい性格傾向とは?
不登校になりやすいお子さんの性格傾向は、いくつかのパターンとして研究によって明らかになっています。
お子さんが不登校になりやすいのかを判断しやすいです。お子さんが以下の特徴に当てはまるかどうかチェックしてみてください。
(*出典5)不登校生徒の性格傾向-ビッグ・ファイブ性格特性論か
不登校児童の3つの性格特徴
不登校児の性格についての研究で明らかになった特徴として、以下が挙げられています。
それぞれをわかりやすく噛み砕いて説明していきます。
①内向性(外向性が低い)
一般的に内向性とは、興味関心が自分自身に向けられる傾向のある性格のことを言います。
特徴として、思慮深いことや自己主張が控えめであったり、ためらいがちというものが挙げられます。
感情を表に出さない傾向もあるため、何か心理的に嫌なことがあった際のSOSに周囲が気付きづらく不登校状態になりやすいのかもしれません。
②情動性
心理学用語としては、比較的急激な感情の動きをいいます。
不登校生徒の性格傾向の研究内でも、不登校時の様子としてフラストレーション傾向が見られることも言及されており、感情的になりやすい状態や性格特徴があるようです。
③分離性(愛着性が低い)
分離性とは、人付き合いが薄かったり、共感性が低い性格傾向などをいいます。
分離的で内向型の人は「人と付き合わず孤立がち」とも説明されています。
不登校と合わせて考えると、自身の悩みなどについて誰にも相談できず、結果として学校に通えない状態になってしまうような性格特徴なのかもしれません。
(*出典6)愛着性・分離性(A次元)東京大学総合文化研究科認知行動科学
不登校時によくみられる様子について
また同研究の中では、25,992名の不登校のお子さんを対象に、「不登校児の様子」の分析についても説明されており、6つの要素が挙げられています。
(*出典6)
①自我防衛
こちらは「他人の目が気になる」「あせりや不安を感じる」「体調がすぐれない」などの回答で構成された因子です。
不登校状態のお子さんは、周囲から自分がどう見えるかに対して過敏になっていると言えるでしょう。
②離脱志向
こちらは「家から離脱」「夜遊びなどをする」「学校外の友人とつきあう」などの回答で構成された因子です。
自分の居場所を学校以外に求めた結果、こういった行動に出るお子さんも多いのかもしれません。
③学歴志向
「自宅で勉強」などで構成された因子です。
学校には行かない状態であっても、勉強は続けている傾向のあるお子さんもいるようです。
④フラストレーション傾向
「いらいらする」「口論やけんかをする」などで構成された因子です。
不登校のお子さんの性格特徴にあった「情動性」とも結びつきますが、感情的になりやすい状態になっている人もいるといえるでしょう。
⑤安心空間志向
「趣味を楽しむ」などで構成された因子です。
不登校状態であっても、自身のやりたいことに目を向けて過ごしている様子のお子さんもいるようです。
⑥方向喪失
「生活時間が乱れる」「やる気が起きない」などで構成された因子です。
これは不登校になったから、生活時間が乱れているというわけでもなく、起立性調節障害が要因である可能性もあるといえるでしょう。
◆起立性調節障害とは
引用:起立性調節障害から「不登校」になることはある?
起立性調節障害(OD)は、起立時に脳血流が低下することで朝起きられなくなる疾患です。
一般社団法人 起立性調節障害改善協会によると、「不登校児のなかで起立性調節障害が並存している割合は約30-40%程度」ともいわれており、朝起きられないことから生活時間が乱れ、学校にいけない可能性もあるかもしれません。
その際、お子さんは「学校に行きたいが行けない」という状態にあるため、保護者の方はお子さんを責めないように接することが重要といえるでしょう。
(*出典7)一般社団法人 起立性調節障害改善協会 「起立性調節障害から「不登校」になることはある?」
不登校になりやすい家庭環境とは
家庭環境はお子さんの性格形成に大きな影響を与えます。
不登校の背景には様々な要因があるため、その中の1つに家庭環境がある場合もあります。
もしも不登校の背景に家庭環境があるならば、家庭の環境やお子さんへの関わり方を見直す方で改善に繋がるケースもあるといえるでしょう。
ここでは、いくつかの研究データに基づき、家庭環境が不登校の背景となったケースについて紹介していきます。
親子の関わりが薄く、保護者に不登校の過去があり、初期から不登校を容認していたケース
とある1つの親子のケースについて紹介します。
お子さんが部活動を無断欠席を契機に学校を休みがちになり、不登校が長期化したものがあります。
背景として、元々家庭内でのコミュニケーションが不活発だったこと、保護者も不登校経験がありそれを肯定的に捉えていたというものがあったようです。
保護者自身が過去の不登校経験を肯定的に捉えていたことも影響し、初期対応から不登校を容認したということでした。
お子さん自身は「部活の欠席を怒られると思って」という理由から学校を休んだことをきっかけとして不登校の長期化に発展したことから、もしも部活動を欠席した直後のタイミングで親子のコミュニケーションがあれば、たまたまの部活動欠席は些細な出来事として終わっていたかもしれません。
(*出典8)不登校現象の家庭要因に対する一考察 :「学校への意味付け」に関わる文化的再生産
このように、結果として振り返ると簡単なことのように見えてしまうかもしれませんが、不登校の背景は複雑な要素が絡み合っており、簡単に解決するとは言い切れないでしょう。
家庭内だけで対処しようとせず、学校や第三者機関などに早めに相談することをおすすめします。
不登校児童の保護者が取れる対応とは
もしお子さんが不登校になってしまったら、どのような対応をすれば良いのでしょうか?
お子さんのために保護者が取れる対応について、以下のステップが参考になります。
まずは状況や背景に関わらず、お子さんの気持ちを受け止めることで、その後に不登校の要因となっている諸問題について深く話し合うことができるようになります。
その後、複数の選択肢を提示し、お子さん自身が目標を選ぶということが重要です。その目標に向けて実行し、自分自身を評価していけるステップが生まれれば、一歩一歩進んでいくことができるでしょう。
(*出典9)新潟大学大学院 教育実践学研究科 8.不登校を考える
不登校の対応については、下記の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
▶日本の不登校の現状は?不登校7つのタイプの原因・解決方法も解説
まとめ
この記事では、不登校だった人のその後や、不登校児童の性格特徴について解説しました。
内容をまとめると以下の通りです。
- 不登校だった人の多くが、学校復帰や社会復帰を果たしている
- 不登校のお子さんの性格特徴として「内向性」「情動性」「分離性」が挙げられている
- 要因が家庭環境にある場合、解決に繋がるかもしれない
繰り返しになりますが、不登校であることについてはお子さんが悪いのではなく、様々な要因が絡み合って生まれている「状態」です。
まずはお子さんの気持ちを受け止めて、課題を客観視し、スモールステップで解決できるように進んでいきましょう。
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【出典一覧】
*1 不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)
参考箇所:冒頭
*2 「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)
参考箇所:不登校の経験者の高校進学率は8割以上に
*3 *4 内閣府 子供・若者の意識に関する調査(令和元年度)
参考箇所:ひきこもりやニートになる可能性が高いというデータも
*5 不登校生徒の性格傾向-ビッグ・ファイブ性格特性論からの検討-
参考箇所:不登校になりやすい性格傾向とは?
*6 愛着性・分離性(A次元)東京大学総合文化研究科認知行動科学
参考箇所:不登校児童の3つの性格特徴
*7 一般社団法人 起立性調節障害改善協会 「起立性調節障害から「不登校」になることはある?」
参考箇所:不登校時によくみられる様子について ⑥方向喪失
*8 不登校現象の家庭要因に対する一考察 :「学校への意味付け」に関わる文化的再生産
参考箇所:【ケース①】家庭内のコミュニケーションが不活発で、保護者に不登校の過去があり、初期から不登校を容認していた
*9 新潟大学大学院 教育実践学研究科 8.不登校を考える
参考箇所:不登校児童の保護者が取れる対応とは
【監修者コメント】
本記事では、不登校の状態を経験したお子さんのその後の状況や性格特性や背景などを中心にご紹介しています。冒頭にも記載がありますが、不登校は決して問題行動ではなく、様々な要因や背景から結果として起こりうるものといわれています。
しかし、問題行動ではないとする一方で、不登校の状態については解消したいと願う人も少なくないのが実情でもあるように思います。もちろん中には不登校の状態を肯定的に捉えている人もいますし、不登校状態があったことが、その時の自分には必要なことで、自分の人生を守ることにもつながり、その後の自分の人生にも有益につながっていると捉えている人もいることだと思います。
不登校には模範回答がなく、誰かにとっての正解が、誰かにとっては悪手になりうることもあります。一概に言えないことがそれだけ多いものではありますが、それでも、不登校の子どもの性格傾向などを知りたくなるのもリアルな実情であると考えられます。
そんなことも踏まえつつ、不登校については様々な研究もされています。本記事についてはそうした知見や統計をご紹介していますので、一つの目安としてご参照いただければと思います。