「子どもが不登校になったのは、私の育て方が悪かったの?」と悩む保護者は少なくありません。しかし、お子さんが不登校になる理由はさまざまで、決して保護者の責任だけではありません。
ただ、保護者の考え方や接し方が、お子さんに影響を与えることは確かです。
では、不登校になりやすい家庭にはどのような特徴があるのでしょうか? そして、保護者はどのように対応すれば、お子さんが前向きに進めるのでしょうか?
この記事では、「不登校になりやすい親の特徴」や「親ができる対応」「不登校との付き合い方」について詳しく解説します。
不登校は決して「悪いこと」ではなく、お子さんが自分に合った生き方を模索する一つの過程です。焦らず、お子さんと一緒に歩んでいくためのヒントをお伝えします。
不登校は親のせい?親の関わり方が不登校に影響する?
親の関わり方が影響を与えることも
不登校の原因は単純なものではなく、保護者だけの影響で決まるものではありません。
不登校の背景には、学校の環境や人間関係、発達の特性、精神的な負担など、さまざまな要因が絡み合っています。どんなに愛情深く育てても、不登校になることはあり得ます。
しかし、保護者の関わり方がお子さんの気持ちや行動に影響を与えることは事実です。
たとえば、「どうして学校に行けないの?」と責めるような言葉かけをしてしまうと、お子さんはさらにプレッシャーを感じてしまいます。
一方で、お子さんの気持ちに寄り添い、安心できる環境を作ることで、少しずつ心を開き、自分なりの進み方を見つけていくことができます。
接し方次第で、お子さんが安心して過ごせるかどうかが変わる
不登校のお子さんにとって最も大切なのは、「家が安心できる場所であること」です。
学校に行けないことで不安や罪悪感を抱えているお子さんにとって、家での保護者の態度や言葉は大きな影響を与えます。
保護者が「学校に行かなくても大丈夫」「今はゆっくり休んでいいよ」と伝えることで、お子さんは自分を否定せずにいられるようになります。逆に、「いつになったら行けるの?」と焦らせるような言葉は、お子さんの心を追い詰めてしまいます。
また、保護者自身が不安を抱えすぎないことも大切です。 保護者が落ち着いてお子さんを見守ることで、お子さんは安心感を得られます。
不登校は決して「終わり」ではなく、新しい生き方を模索する過程です。保護者が「この子にはこの子のペースがある」と信じて寄り添うことで、お子さんは自分なりの道を見つけていくことができるでしょう。
不登校は親もしんどい。不登校になりやすい親の特徴
ここでは、不登校になりやすい保護者の特徴を解説します。
不登校になりやすい親の特徴① 過干渉・過保護になりやすい
保護者がお子さんを守りたいという気持ちが強すぎると、お子さんは自分で考え、行動する機会を失い、自信を持ちにくくなります。
子どもが失敗しないように先回りする
宿題の管理や学校の準備を保護者がすべてやってしまうと、お子さんは「自分で考えて動く力」を育む機会を失います。
保護者がお子さんの失敗を避けることで、お子さんの問題解決の経験が不足し、学校で困難に直面したときに対応できなくなることがあります。
自分の価値観を押し付け、子どもの自主性を尊重できない
「これが正しい」「こうするべき」と保護者の考えを押し付けると、お子さんは自分の意志を持つことに不安を感じるようになります。「どうせ親が決めるから…」と消極的になり、学校の選択や勉強への意欲を失いやすくなります。
「いい学校・いい成績」を求めすぎる
「〇〇高校に行けば将来安泰」「成績が悪いと将来が心配」といった価値観を押し付けると、お子さんは過度なプレッシャーを感じます。結果として、学校が「安心できる場所」ではなく、「評価される場所」になり、行きたくなくなることがあります。
不登校になりやすい親の特徴② 厳しすぎる・完璧主義の傾向がある
保護者が厳格すぎたり完璧主義だったりすると、お子さんは「失敗できない」という強いプレッシャーを感じ、精神的に追い詰められやすくなります。
「〇〇しなければならない」と厳しいルールを作りすぎる
「宿題は必ず〇時までに終わらせる」「遅刻・欠席は絶対にダメ」など、保護者のルールが厳しすぎると、お子さんは息苦しさを感じながら生活することになります。
少しでもルールを破ると強い罪悪感を抱き、不登校につながることがあります。
失敗や弱音を許さず、子どもがプレッシャーを感じる
「そんなことで落ち込んでいてどうするの?」「もっと努力すればできるよ」と失敗を責められると、お子さんは「自分はダメな人間だ」と思い込むようになります。
自己肯定感が低くなると、学校での小さな挫折でも大きなストレスを感じ、不登校の引き金になることがあります。
保護者自身が「こうあるべき」という価値観を持ちすぎている
「社会に出るにはこうしないといけない」「普通はこうするもの」という考えを強く持ちすぎると、お子さんが自分らしく生きることが難しくなります。
「親の期待に応えられない=価値がない」と感じるようになり、学校生活にも自信を持てなくなります。
不登校になりやすい親の特徴③ 共感が苦手・感情的になりやすい
お子さんが不安を抱えているときに、保護者が適切に寄り添えないと、お子さんは「理解されない」と感じ、学校に行くことへの不安が増してしまいます。
お子さんの話を聞かず、アドバイスばかりする
「こうすればいいんじゃない?」「もっと頑張れば大丈夫」とアドバイスばかりされると、お子さんは「自分の気持ちを分かってもらえない」と感じます。
お子さんが求めているのは解決策ではなく、「大変だったね」と共感してもらうことです。
感情的に怒ったり、「なんで学校に行けないの?」と責めてしまう
「なんで学校に行けないの?」「ちゃんとしなさい!」と強い言葉で責めると、お子さんはさらに追い詰められます。
プレッシャーを感じることで、「もうどうしようもない」と学校に対する不安が強まり、不登校が長引くこともあります。
保護者自身もストレスを抱え、余裕がない
保護者が仕事や家庭のストレスを抱えていると、ついお子さんにイライラをぶつけてしまうことがあります。保護者が余裕をなくすと、お子さんは「これ以上迷惑をかけられない」と思い、悩みを打ち明けることができなくなります。
不登校になりやすい親の特徴④ お子さんの気持ちを軽視する
お子さんの悩みを軽く考えてしまうと、SOSを見逃しやすくなり、お子さんは「どうせ話しても分かってもらえない」と感じるようになります。
「気の持ちようでどうにかなる」と思ってしまう
「気にしすぎだよ」「強くなれば大丈夫」といった言葉は、お子さんの不安を否定することになります。
精神的な負担を軽視されると、お子さんは「この苦しさを理解してもらえない」と感じ、保護者に相談しにくくなります。
「みんな頑張っているのに」と他の子と比較する
「〇〇ちゃんは頑張ってるのに」「普通の子は学校に行ってるよ」と言われると、お子さんは「自分はダメなんだ」と思い込み、ますます自信を失います。
他の子と比べるのではなく、お子さんのペースに寄り添うことが大切です。
お子さんが出すSOSのサインを見逃しやすい
「学校に行きたくない」「頭が痛い」「お腹が痛い」といった言葉を、ただの甘えととらえてしまうと、お子さんの不安はさらに強くなります。
学校に行けない理由がわからないことも多いため、まずはお子さんの気持ちを受け止めることが重要です。
不登校の子どもに親ができる対応
① まずはお子さんの気持ちを受け止める
不登校のお子さんは、「学校に行かなければならないのに行けない」という不安や罪悪感を抱えていることが多いです。
まずは、お子さんの気持ちを否定せずに受け止め、安心感を与えることが大切です。
「学校に行かなくても大丈夫」という安心感を伝える
・「無理に行かなくてもいいよ」「大丈夫、ゆっくり考えよう」と伝え、プレッシャーを減らす。
お子さんの不安や悩みに寄り添う言葉かけ
・「今どんな気持ち?」「何がつらい?」と、お子さんの気持ちを聞く姿勢を持つ。
・「頑張らなくてもいいよ」と、ありのままのお子さんを受け入れる言葉をかける。
② 生活リズムを整えるサポートをする
学校に行かなくなると、生活リズムが乱れやすくなります。
無理に学校へ行かせようとするのではなく、家庭でできることを一緒に考え、健康的な生活習慣を維持することが重要です。
昼夜逆転を防ぐための工夫
・朝はカーテンを開けて日光を浴びる。
・生活のリズムを作るために、食事の時間を一定にする。
無理に学校へ行かせようとせず、家庭でできる学びを考える
・本を読む、動画で学ぶ、親子で一緒に料理をするなど、日常生活の中で学びを取り入れる。
・「勉強しなさい」と強制するのではなく、お子さんの興味を引き出す方法を考える。
③ お子さんが自信を取り戻せる環境をつくる
不登校のお子さんは、「自分はダメだ」と自信をなくしていることが多いです。
学校以外の居場所を見つけたり、小さな成功体験を積み重ねることで、自己肯定感を取り戻せるようサポートしましょう。
学校以外の選択肢(フリースクール・オンライン学習など)を一緒に探す
・「学校に行かないと何もできなくなる」という思い込みをなくし、他の選択肢を知る。
・フリースクールや通信制高校など、お子さんが無理なく学べる場所を検討する。
小さな成功体験を積み重ねる機会を増やす
・できることから始めて、少しずつ成功体験を増やしていく。
・家庭の中で役割を持たせる(料理を作る、ペットの世話をするなど)。
④ 保護者自身もリラックスできる時間を持つ
不登校の問題に向き合う保護者自身も、大きなストレスを抱えやすくなります。保護者が心に余裕を持つことで、お子さんにも安心感を与えることができます。
保護者が無理をしすぎると、お子さんにも伝わる
・「なんとかしなければ」と焦る気持ちはお子さんにも伝わり、余計にプレッシャーを与えてしまう。
・保護者自身がリラックスする時間を持つことで、落ち着いて対応できるようになる。
親の会やカウンセリング、支援機関を利用して保護者の負担を減らす
・同じ悩みを持つ保護者同士で話すことで、気持ちが楽になる。
・カウンセラーや専門機関に相談し、具体的なアドバイスをもらう。
不登校の対応には正解はありません。大切なのは、お子さんの気持ちに寄り添いながら、親子ともに無理なく過ごせる環境を作ることです。
焦らず、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。
不登校との付き合い方—長期的な視点で向き合う
不登校は決して「終わり」ではなく、「今の状態のひとつ」にすぎません。
焦って解決しようとするのではなく、長期的な視点を持ち、お子さんが自分らしく生きられる道を一緒に探していくことが大切です。
不登校との付き合い方のこつをお伝えします。
「今は学校に行けないだけ」と考える
不登校は、お子さんが何らかの理由で「今は学校に行けない」状態になっているだけで、一生続くものではありません。無理に解決しようとせず、お子さんのペースを尊重することが大切です。
不登校は一時的なもの。無理に解決しようとしない
・「学校に行かない=将来がダメになる」わけではない。お子さんが安心できる環境を整えることを優先する。
・「いつまでに学校に戻すか」ではなく、「今、何ができるか」を考える。
将来の選択肢は無限にある
・学校に行かなくても、学ぶ方法や進路はたくさんある。通信制高校やフリースクール、オンライン学習など、お子さんに合った道を探していく。
・「学校に戻る」ことだけをゴールにせず、お子さんが自分らしく生きる方法を見つける。
学校以外の社会とのつながりを見つける
学校がすべてではありません。家庭以外の場所で人と関わり、社会とのつながりを持つことで、お子さんは安心感を得たり、新しい可能性を見つけたりすることができます。
学校以外の場所で人と関われる環境をつくる
・フリースクール、習い事、地域のイベントなど、学校以外の居場所を見つける。
・オンラインゲームやSNSを通じた交流も、お子さんにとっては大切なつながりになることがある。
お子さんの興味や得意なことを伸ばせる機会を提供する
・「勉強だけが成長ではない」。好きなこと(絵を描く、プログラミング、料理など)を通じて、自信をつける機会を増やす。
・体験活動(キャンプ、ボランティア、習い事など)を通じて、社会との接点を持たせる。
保護者も一緒に学びながら成長する
不登校は、保護者にとっても「成長の機会」になります。保護者自身が視野を広げ、柔軟な考え方を持つことで、お子さんにとっても安心できる環境を作ることができます。
不登校を通じて、親子で新しい価値観を学ぶ機会にする
・「学校に行くのが当たり前」という固定観念を見直し、多様な生き方を知る。
・保護者も本や講演会、他の家庭の体験談などから学び、理解を深める。
保護者も柔軟な視点を持ち、変化を受け入れる姿勢を持つ
・「お子さんをどうするか」ではなく、「保護者自身がどう向き合うか」を考える。
・不登校はお子さんの問題ではなく、家族全体で向き合うべき課題として捉える。
不登校は「問題」ではなく、「ひとつの経験」です。焦らず、長い目でお子さんと向き合いながら、新しい可能性を一緒に探していきましょう。
不登校は「終わり」ではなく「新しいスタート」
不登校は決して人生の終わりではなく、新しいスタートのきっかけでもあります。
学校に行けなくなると、保護者もお子さんも「みんなと同じ道を歩めない」という焦りを感じることがあります。
しかし、社会には学校以外にもさまざまな学びの場や選択肢があり、不登校を経験したお子さんの中には、フリースクールやオンライン学習、好きな分野の探求を通じて新たな道を見つけた人もたくさんいます。
大切なのは、「学校に行くこと」だけを目的にせず、「お子さんが自分らしく生きる方法」を一緒に探していくことです。
まずは「今は休む時期なんだね」とお子さんの気持ちを受け止め、安心できる環境を作ることが最優先です。そして、お子さんが少しずつ前を向けるようになったら、一緒に次のステップを考えていけばよいのです。
「今は休んでいるだけ」「子どもには子どものペースがある」と信じ、長い目で見守る姿勢を持つことが、何よりもお子さんにとって安心につながります。
不登校は「終わり」ではなく、「自分らしい生き方を見つけるための新しいスタート」。お子さんが自分の道を見つけるために、保護者もゆったりとした気持ちで支えていきましょう。
更新日:2025/02/12