不登校のお子さんのために、学校以外でお子さんの居場所を探している保護者の方は多いのではないでしょうか?
不登校の児童生徒が増えている今、教育支援センター(適応指導教室)やフリースクール、オルタナティブスクールなど、不登校のお子さんを支援するための施設も増えています。また、不登校のお子さんに特化した施設ではありませんが、障がいを持ったお子さんや発達に特性のあるお子さんをサポートするための施設「放課後等デイサービス」を利用するという選択肢もあります。
本記事では、放課後等デイサービスの概要や、どのようなお子さんが放課後等デイサービスを利用できるのか、不登校のお子さんが利用するための条件や利用までの手順をお伝えします!
放課後等デイサービスとは
放課後等デイサービスは、小学校1年生から高校3年生までの、障がいを持ったお子さんや発達に特性のあるお子さんをサポートするための施設です。
放課後等デイサービスを利用できる条件として、原則、学校に通っている必要がありますが、特例として、高校卒業後も放課後等デイサービスでサポートを受ける必要があると判断された場合に限り、20歳まで通うことができます。
利用が認められたお子さんは、主に授業終了後の放課後や休日、夏休み・冬休みなどの長期休暇に利用します。
放課後等デイサービスは障がいを持つお子さんのための福祉サービスですが、自治体が発行する「受給者証」を取得していれば不登校の児童生徒も利用できます。
個々の発達の特性に沿った支援を受けることができ、学校ではサポートしきれない部分をカバーできるため、不登校のお子さんが社会との接点を持つ場所としても、放課後等デイサービスを選択肢に入れて検討してみるとよいでしょう。
放課後等デイサービスの役割
厚生労働省は、放課後等デイサービスの基本的役割として、「放課後等デイサービスガイドラインについて*1」で次の3つを定義しています。
①子どもの最善の利益の保障
障がいを持った子どもや発達に特性のある子どもに対して、授業の終了後、または休業日に生活能力の向上のために必要な訓練を行います。
学校や家庭とは異なる時間、空間、人、体験等を通じて、個々の状況に応じた発達支援を行い、子どもの最善の利益の保障と健全な育成を図ります。
②共生社会の実現に向けた後方支援
放課後児童クラブや児童館などの一般的な子育て支援施設を、専門的な知識や経験に基づいてバックアップする「後方支援」を行います。
③保護者支援
障がいを持った子どもを育てる保護者を支援するため、
① 子育ての悩みに対する相談
② 子どもの育ちを支える力をつけるための支援
③ 保護者の時間を保障するため、ケアを一時的に代行
を行っています。
放課後等デイサービスの支援内容
放課後等デイサービスでは、お子さん一人一人の発達の特性に合わせたサポートが受けられます。
通学が決まると、お子さんの発達に合わせた療育プログラムが組まれ、児童発達支援管理責任者(児発管)が作成する「個別支援計画書」に基づいた支援内容が実施されます。
施設の活動を通してコミュニケーション能力を培えたり、施設のルールやマナーを守るといった社会生活を送るスキルも身につけられます。
また、学校の判断によりますが、放課後等デイサービスの利用を学校の出席として扱ってもらえるケースもあります。
放課後等デイサービスを利用するための条件は?
放課後等デイサービスの利用対象者は、原則として小学生から高校生(6歳~18歳)までです。主な利用対象は、発達障がいや身体障がい、知的障がい、学習障がいなど、さまざまな障がいを持つ児童生徒です。
そのため、お子さんが「不登校だから」という理由だけでは利用できませんが、利用申請には、必ずしも医師による診断や療育手帳が必要なわけではありません。
基準は自治体によってさまざまであるため、お住まいの各自治体に確認が必要ですが、たとえば、発達障がいと診断されていないお子さんでも、医師や児童相談所などの意見書があり、自治体が支援を受ける必要があると判断すれば、放課後等デイサービスを利用することができます。
利用までの手順
①通える範囲にある施設を調べる
放課後等デイサービスは、施設によって利用基準や提供サービスが異なるため、自宅から通える範囲にある施設を探し、サービス内容を確認することから始めましょう。
不登校のお子さんが放課後等デイサービスを利用する場合は、午前中から利用できるかどうかも大きなポイントです。施設のホームページなどに利用可能時間が掲載されていることが多いので、まずはホームページを確認してみてください。
また、見学や体験を実施している施設も多くあります。実際に施設に行き、お子さん自身が通うイメージができるかどうか、見学や体験を通してお子さんの意思を確認してあげてください。
②受給者証を取得する
利用したい施設が決まったら、「受給者証」(正式には「通所受給者証」)を申請します。
受給者証は、自治体に申請すると審査のうえ交付されます。
受給者証には、氏名や住所、放課後等デイサービスを利用できる日数、月の利用上限負担額が記載されています。
これまでに何らかの障がいの診断がなくても、医師の意見書などがあれば発行されるため、お子さんが不登校の場合も、健康状態や精神状態を伝えて審査を受けると取得可能です。
【受給者証発行までの流れ】
1. 自治体の窓口で放課後等デイサービス通所受給者証を申請したい旨を伝えて相談
2. 障害児支援利用計画案を作成
子どもの特性に対してどのような方針で支援をしていくのか計画を立てます。
相談支援員、もしくは保護者の方が作成します。保護者の方が作成する場合も、自治体の窓口で相談すると、作成をサポートしてもらえる可能性があります。
3. 必要書類を揃えて申請
受給者証の申請には、以下のものが必要です。
・印鑑(認印も可)
・マイナンバー(お子さんと保護者のもの)
・支援が必要なことが分かる書類(医師の意見書など)
・市町村民税課税証明書(他の自治体から転入した場合)
・負担上限金額の申請に必要な書類(生活保護受給証明書や市民税非課税世帯証明書など)
・障害児支援利用計画案
申請に必要なものは自治体によって異なる可能性があるため、詳しくは各自治体に確認してください。
4. 受給者証の交付
申請内容を基に審査が行われ、受給が決定すると受給者証が交付されます。申請から1ヶ月ほどかかることが多いです。
受給者証の期限は1年間です。受給者証に記載されている「給付決定期間」を確認しておきましょう。
継続して放課後等デイサービスを利用する場合、期限が切れる前に更新の手続きが必要となります。
③施設の利用を開始する
受給者証が発行された後、障害児支援利用計画案などを基に施設利用日が決まります。
受給者証に書かれている放課後等デイサービスを利用できる日数と、申し込んだ施設の空き状況を見ながら、不登校のお子さんに必要な支援計画を作成していきます。
さいごに
不登校のお子さんの中には、診断されたことがなくても、実は発達障がいによって同年代の子どもとうまくコミュニケーションが図れなかったり、学習障がいによって授業についていけなかったりするケースがあります。
放課後等デイサービスは、個々の発達の特性に合わせた支援を受けられるからこそ、不登校のお子さんにとっても、家庭や学校とは別の新しい居場所になり得る可能性があります。
放課後等デイサービスが、不登校のお子さんにとって安心して通える社会との接点、居場所になれば、お子さんの成長にもプラスになるのではないでしょうか。
【出典一覧】
*1 厚生労働省:放課後等デイサービスガイドラインについて