一度不登校を経験したお子さんは、登校するようになったとしても、何かをきっかけに不登校が再発することが少なくありません。
不登校の間、我慢強くお子さんに寄り添い、様子を見守ってきた保護者の方だからこそ、登校し始めたお子さんの様子にほっとしているでしょうし、不登校が再発するショックは大きく、落ち込んでしまう方も多いでしょう。
本記事では、不登校が再発する原因や、再発防止のために保護者ができること、再発した場合の対応のポイントについてお伝えします!
不登校の再発は珍しくない
不登校は非常に再発しやすく、不登校の再発率は70~80%とも言われています。
再発率が高い理由は、お子さんが不登校になったときに保護者や先生に登校を促され、根本的な問題が解決していなくても、頑張ってみようと登校するケースが少なくないからです。
お子さんが気力を振り絞って登校を再開しても、不登校になった原因が残ったままだと、時間の経過とともに登校が耐えきれないほど苦痛になり、不登校の再発につながります。
不登校を繰り返してしまう5つの原因
では、不登校が再発する原因にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、よく見られる5つの原因をご紹介します。
1. 生活リズムを合わせられないから
毎日登校するには、「朝になったら起きる」という規則正しい生活が必要です。しかし、日常的に夜更かしが続いて昼夜逆転気味の生活になっていたり、健康的な食事や運動ができていないと、お子さんの体調や精神状態は悪くなり、朝に起きることができなくなります。
登校していても不登校中でも、お子さんが規則正しい生活をできるように保護者が意識的に声掛けを続けていくことが重要です。
2. 勉強についていけないから
不登校になる原因が「授業内容がわからない・ついていけない」というものだった場合、学習の対策をしないまま再登校をしても、授業が理解できないままであるため、「学校が楽しくない」「授業に参加することが苦痛」という状態が続きます。
学習内容が理解できず授業についていけない場合、塾や家庭教師を活用することでカバーできるケースと、そもそもお子さんに学習障がいがあるため通常の授業についていくのが難しいというケースがあります。
お子さんの学習理解がどのような状態なのか、授業についていけない原因は何なのか、保護者が見極めて適切なフォローが必要になります。
3. クラスに上手くなじめないから
お子さんによってはクラスになじめないことが不登校の原因になっている場合があります。気の合う友人ができず、孤独感を抱えてしまっている場合や仲間外れにされるなどのいじめが原因になっていることもあります。
クラスになじめないという状況は、入学・進級時に起こりやすいので、お子さんの環境が変わるタイミングで解消することもあります。
また、感受性が強く、集団行動に大きなストレスを感じるお子さんや、内向的で集団生活が苦手なお子さんもいます。お子さんの性格によっては、集団生活そのものが苦手であるため、どのクラスになってもなじめないと感じることもあります。
保護者の育て方や家庭環境だけではなく、生まれながらのお子さんの気質によっても不登校のなりやすさは変わります。
4. 先生やクラスメイトの言葉に傷ついたから
先生やクラスメイトから言われた言葉に傷つき、学校に行きたくなくなる場合があります。
たとえ、先生やクラスメイトに悪気がなくても、言われたお子さんが嫌な気持ちになり、それがきっかけで学校に行きたくなくなることもあります。
一度傷ついてしまったお子さんは、先生やクラスメイトが謝罪をすれば解決するとは言えず、傷ついた気持ちが癒え、元気になるためには時間を要する場合もあります。
5. そもそも不登校になった理由が解決していないから
不登校になる原因はお子さんによってさまざまで、また原因は一つではなく、複数の要因が複合的に絡み合っていることが多くあります。
お子さん本人が学校に行きたくない原因をはっきりと認識できないことも少なくなく、本人や保護者が「不登校の原因は取り除かれた」と思っていても、実は根本的には解決していないこともあります。
不登校が再発する前兆
不登校が再発する前兆として、どのような様子が見られることがあるのでしょうか?
身体的なサイン
不登校だったお子さんが登校を再開しても、下記の身体的なサインが見られた場合は登校することを身体が拒否している可能性があります。
・頭痛
・腹痛
・発熱
・食欲不振
・倦怠感
・めまい
前回不登校になった際に、同じような身体的不調を訴えていた場合はその可能性が高いでしょう。
不登校が再発する前兆といえるので、無理して登校を続けさせず、適宜休ませるなどの対応をしてお子さんの様子を見守ってあげてください。
心理的なサイン
不登校再発の心理的なサインとして、以下の症状が見られることがあります。
・無気力
・イライラした状態が続く
・集中力の低下
・落ち込む
・不眠
身体的なサインに比べ、保護者が気づきにくいのが心理的なサインの特徴です。お子さんが再登校しても、お子さんの様子や日常生活の変化に注意し、サインを見逃さないようにしましょう。
不登校再発防止のために保護者にできる5つのこと
前述したとおり、不登校の再発率は非常に高く、何をすれば必ず再発を防げるということはありません。
ただ、お子さんの心身の状況を悪化させないために保護者の方が気を付けられることもあります。
お子さんの変化を見逃さない
学校に行くことに対して、憂鬱そうな様子を見せていたり、家庭内での発言が減る、または急に増えるなど、お子さんの様子に変化がないか、見逃さないようにすることが重要です。
言葉ではっきりと「学校に行きたくない」とは伝えられないお子さんも、日常生活の中で何らかの変化があるはずです。
その変化を見逃さず、お子さんに適切な声掛けをしてあげることが、不登校の再発防止に有効です。
無理やり登校させない
不登校を繰り返してしまう原因でもご説明しましたが、不登校になった原因が根本的に解決していない状態で無理に登校させることは不登校の再発につながります。
場合によっては、時期尚早な再登校がお子さんの心身の状態を悪化させてしまうので、お子さんの気持ちに寄り添わず、保護者の「学校に行ってほしい」という気持ちだけで無理に登校させることはやめた方がよいでしょう。
最初から全出席させようとしない
再登校する際に、朝から夕方まで全て教室で過ごす必要はないということをお子さんに伝えることも有効です。
保健室登校や、好きな授業だけ出席、午前中だけ教室にいる、など、段階を追って全出席を目指すという方法があることを伝えてあげるとよいでしょう。
お子さんが登校スタイルにも選択肢があることを知ることで、無理をしてしまう可能性が減ります。
段階を追うことで、どこまでだとお子さんの負担にならずに登校できるのかがわかりやすく、負荷が大きくなった段階で少し教室の滞在時間を減らしたりするなどの調整ができるので、お子さんの精神状態が悪化することを防ぐことができます。
今の学校にこだわらない
今お子さんが通っている学校にこだわる必要はありません。
不登校のお子さんを支援している公的機関として、学びの多様化学校や教育支援センターなどがありますし、引っ越しができるのであれば他の公立学校に転校することも可能です。
民間のフリースクールやオルタナティブスクールも全国的に増えています。
今の学校に問題があるのであれば、その学校にこだわらず、視野を広げて考えてみることもおすすめです。
自宅で勉強をすすめておく
学校に戻る場合も、戻らない場合も、進学や将来に備えて学習を進めておくことは重要です。自宅で学習を進めておくことで、「授業についていけないから学校に行きたくない」という状況を防ぐことができます。
最終的に再登校をしなくても、自身で学習を進めておくことが、進学や将来の夢を考えるきっかけになるので、お子さんの気持ちに余裕が出たタイミングで、学習を勧めてみるとよいでしょう。
自宅学習の進め方は、塾や家庭教師、オンライン学習など、選択肢がたくさんあります。どの方法がお子さんに合っているのか、ご家庭でお話してみてください。
再登校した際に、学校のテストで以前よりもいい点数が取れるようになれば、自然とお子さんの自信にもつながるはずです。
不登校が再発してしまったときの対応
一度不登校を経験したお子さんが、再度不登校になるのはよくあることです。保護者の方は、ショックを受けないようにしてくださいね。
無理に再登校させようとしない
最初に不登校になったときと同様ですが、無理に登校させることは禁物です。
不登校の問題が解決し、お子さんが心身ともに元気になるのを根気強く待ってあげてください。
お子さんの様子をよく観察し、日常会話を増やして親子のコミュニケーションを密にすることで、事態の悪化を防ぐことができます。
学校との連携をとる
お子さんとのコミュニケーションを続けながら、学校との連携も深めていきましょう。
もし、お子さんの担任の先生に思うように対応してもらえず、不信感がある場合は、担任の先生ではなく学年主任や校長先生にかけあうこともできます。
いつも学校に連絡するのがお母さんというご家庭は、お父さんなど、連絡する人を変えてみるのも一つの手です。
このような態度を取ることで、「本気で解決しようとしている」ということが伝わり、学校側の動きも本格化するでしょう。
他の居場所を見つける
お子さんが通っている学校への再登校を目指さない場合は、学校以外にお子さんが安心して過ごすことのできる居場所を見つけてあげることが重要です。
不登校になると、お子さんは日中を家で過ごすようになりますが、共働きが増えている今、両親ともに朝から出社し、家には誰もいないということが珍しくありません。
また、保護者の方が家にいたとしても、家事に忙しかったり、他の兄弟の用事があったりすると、ずっと不登校のお子さんの相手をするというのは現実的ではないでしょう。
そういった状況に対応するため、学校の代わりに、お子さんが安心して過ごせる居場所が必要になります。
また、不登校が社会とのつながりを失うきっかけとなってしまうケースがあります。
不登校になって、日中を家で過ごすうちに、外へ出ていく気力がどんどん失われ、そのまま「ひきこもり」へとつながってしまうことも。
学校に行きたくないのであれば、無理に登校する必要はありませんが、学校の代わりに社会とつながる居場所を探してあげることが、精神状態の悪化を防ぎます。
家で1人でいることにより、「自分は社会でやっていけない」と絶望することもあるので、学校以外の場所で、人と関わりながら過ごすということはとても重要になります。
不登校の児童生徒数は急増しており、学校以外でお子さんの居場所となる選択肢は増えています。
実際に家から通える場所にはどのような「居場所」があるのか、リサーチしてみてください。
お子さんの居場所づくりについて、こちらの記事で詳しくご紹介していますので、参考にしてみてください。
趣味などの楽しみを見つける
どんな趣味でも構いません。お子さんが「楽しい」と思える瞬間がとても大切な時間になります。
例えば、Youtubeで好きなアイドルの歌を聞くだけでも良いでしょう。好きな有名人の言葉や歌に励まされることもあります。
ライブやイベントなどに参加することで、一歩を踏み出す力がもらえるかもしれませんし、趣味の友人ができることで、その友人との交流が学校に行ってみようと思うきっかけになることもあります。
できる範囲で勉強をすすめる
これも最初に不登校になったときと同じですが、学校に行かなくても学習は続けるようにすると良いでしょう。
塾や家庭教師を活用することもできますし、お子さんが自宅でオンライン学習などを使いながら学習を進めていくのもおすすめです。
学校に行っていなくても勉強を続けているということは、進学や将来の夢に制限がなくなりますし、お子さんが「いつ学校に戻っても授業についていける」という自信につながります。
不登校について相談できる団体
不登校支援の専門機関はその道のプロなので、さまざまなケースへの対応経験があります。家族だけで悩む必要はありません。
主な相談先についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
公的機関
①スクールカウンセラー
スクールカウンセラーは、専門的な知識と経験が豊富であるため、精神的に疲弊しているお子さんの話をしっかり聞いてくれるでしょう。
学校とも連携しやすく、スクールカウンセラーと学校、家庭の3者で学校復帰に向けた話し合いをすることもできます。
ただ、お子さんの「話を聞く」ことを軸に対応されることも多いため、具体的な問題解決に至らないこともあります。
②教育センター・教育相談所
各教育委員会が、教育相談を行うための相談窓口として設置している公的機関です。
不登校に関する悩みを相談できるほか、必要に応じた情報を提供してもらえたり、カウンセリングや医療機関などの関係機関との連絡調整を行ってもらえます。
③教育支援センター(適応指導教室)
不登校に関する支援を行うために教育委員会が設置している公的機関です。
保護者の悩みを相談できるほか、不登校のお子さんに対する通所指導(カウンセリング、教科指導、体験活動など)も行っています。
④チャイルドライン
いじめなどの悩みを持つ18歳までのお子さんを対象とした電話相談窓口です。電話に出るのはボランティアの大人たちで、問題解決を目的とせず、お子さんの「気持ち」を尊重しながらアドバイスをくれます。
名前や在籍校を伝える必要もないため、利用のハードルが低く、気軽に相談できるでしょう。
⑤子どもの人権110番
不登校やいじめなどの相談を電話で受けつけています。法務局員や人権擁護委員が相談に乗ってくれます。
⑥24時間子どもSOSダイヤル
夜間休日問わず24時間いつでも利用できる電話相談窓口です。電話は、所在地の教育委員会の相談機関に接続され、さまざまな悩みや不登校に関する相談もできます。保護者も利用できます。
⑦児童相談所
子どもの一時保護などでよく知られている児童相談所ですが、お子さんや保護者からのさまざまな相談に応じ、適切な助言や援助を行っています。
⑧子供家庭支援センター
市区町村における子どもと家庭に関する総合相談窓口です。18歳未満の子どもや子育て家庭に関するあらゆる相談に応じています。児童相談所とも連携しています。
⑨保健所
事業内容や勤務している専門職員、対応可能な相談内容は保健所により異なりますが、思春期のお子さんに関する悩みや不登校・ひきこもりに関する相談ができます。
⑩精神保健福祉センター
専門的な知識を持った担当者が心の不調を持った人の早期的な自立や社会生活への復帰をサポートしています。
うつ病などの精神疾患や不登校・ひきこもりについての相談もできます。
各センターでは「こころの電話相談窓口」を設けており、電話でも相談できるのが特徴です。
⑪ひきこもり地域指導センター
社会福祉士や保健士、臨床心理士、引きこもり支援コーディネーターなどが在籍しており、学校復帰に向けた支援を受けることができます。
⑫青少年センター
青少年育成センターや青少年指導センター、青少年相談センター、少年センターなど、地域の活動内容に応じてさまざまな名称で呼ばれていますが、不登校やひきこもりといった問題に、精神医学や心理学の視点からケアを行っています。
民間施設
①フリースクール
不登校のお子さんに対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設です。 規模や活動内容は施設によって大きく異なりますが、不登校のお子さんを対象とした施設であるため、不登校に関する知見があり、長年不登校のお子さんと関わってきた専門カウンセラーが相談にのってくれる可能性も高いでしょう。
②塾
不登校専門の塾も増えています。専門塾は、不登校生への対応ノウハウも豊富なので相談にのってもらいやすいでしょう。
また、不登校専門の塾でなくても、通っている塾に学習の進め方を相談できますし、保護者の方の不安な気持ちを聞いてもらうこともできます。
大切なのは、お子さんや保護者だけで問題を抱え込まず、専門機関や第三者に話ができる環境を整えておくことです。
不登校が再発しても進学は目指せる
何度もお伝えしていますが、不登校が再発することは珍しいことではありません。
何度不登校になったとしても、保護者のとるべき対応は同じで、お子さんの様子を見守り、コミュニケーションを取り続けること、必要に応じて専門機関に相談することです。
不登校になっても、自宅で学習を進めておけば、進学を諦める必要はありませんし、将来について悲観する必要もありません。
【まとめ】
本記事では、不登校が再発する原因や、再発防止のために保護者にできること、再発した場合の対応のポイントについてお伝えしました。
不登校が再発する原因はさまざまですが、不登校は複数の要因が複雑に絡みあって生じているケースも多いため、とにかく早く不登校を解決しようとするよりも、お子さんの様子を見て会話を絶やさず、規則正しい生活を続けていくことが重要です。
不登校が再発しても「よくあること」として、保護者の方は冷静に受け止めてください。
どのように学習を進めていけそうか、また、学校以外の居場所を探す必要があるのか、お子さんの様子を見て適切な環境を整えてあげることが、お子さんの状況が好転するきっかけになるでしょう。