お子さんが不登校になると、多くの場合、家庭内の雰囲気が大きく変わってしまいます。
理由はさまざまですが、お子さんが不登校になったことを保護者が心配していたら、他の兄弟までもが不登校になるケースもあります。
本記事では、
「不登校って兄弟にも影響するの?」
「子どもが不登校になった兄弟をずるいと思うのはどうして?」
「兄弟で不登校が連鎖する理由は?」
「不登校が連鎖しやすい性別や年齢ってある?」
「兄弟がそろって不登校になってしまったときの対処法は?」
といった保護者の疑問を解説していきます。
兄弟のいるお子さんが不登校になり、不登校が兄弟間で連鎖する可能性がある場合は参考にしてくださいね。
お子さんが不登校の兄弟の影響を受けてしまう理由は?
兄弟のうちの1人が不登校になると、今まで問題なく学校に通っていた他の兄弟までもが不登校になるケースが少なくありません。
どうして不登校は兄弟に連鎖するのでしょうか?
考えられる主な原因を4つ解説します。
原因① 学校に行かない選択肢を知ってしまう
学校は、性格も育った環境も異なるお子さんたちが集団生活をする場所なので、大なり小なりのストレスがあるのは当たり前の環境です。
それでも大多数のお子さんは、「学校は行くもの」「行かなければいけない場所」と思っているため、嫌なことやしんどいことがあっても我慢して学校に行きます。
しかし、家庭内に不登校のお子さんがいると、その家の兄弟は「学校に行かない」という選択肢を知ることになります。
その選択肢を知ることで、しんどいことがあったら「自分も休んでいいかも」と感じてしまうでしょう。
「学校に行かない」という選択肢が身近になることで、これまでストレスを我慢して学校に行っていたお子さんも学校を休みがちになってしまうかもしれません。
原因② 家で好きなことをしている兄弟が羨ましい
学校に行くということは、学校で決められたルールを守って生活し、決まった授業を受けるということです。
昼休みは短く、そのうえクラスメイトと毎日を過ごす関係上、本当に自分の好きなことを自由にできる時間というのはほとんどないとも言えるでしょう。
そういった学校生活に比べ、家で過ごす時間はほとんどが自由時間です。
家にいれば、ゲームやマンガ、インターネットなど、自分の好きなことに使える時間が格段に増えるため、不登校の兄弟が家で自由に過ごしていることを知れば、他のお子さんもその過ごし方を羨ましく感じてしまうことがあるでしょう。
原因③ 不登校の兄弟ばかり気にかけられてしんどい
不登校のお子さんに保護者の心配が集中している可能性もあります。
お子さんは、保護者が思っている以上に兄弟との対応の差を敏感に感じ取ります。
「自分は頑張って学校に行っているのに、不登校の兄弟ばかり気にかけられている…」
「親は自分には興味がなさそう…」
そんな寂しさを感じているお子さんもいるでしょう。
頑張って学校に行っても気にかけてもらえないと、次第に学校に行くのがしんどくなるかもしれません。
原因④ 不登校の兄弟がいることによるストレス
不登校の兄弟がいることによるストレスも考えられます。
特に小学生は、学校をずっと休んでいる人がいると、
「〇〇の兄弟はなんで学校に来てないの?」
「いつになったら学校に来るの?」
と、遠慮なく聞く子も多いです。
答えにくい質問を日常的にされると、しんどくなってしまうでしょう。
それが積み重なると、学校に行きづらくなってしまう可能性もあります。
なぜ不登校の兄弟をずるいと思うの?
毎日学校に通うということは、お子さんにとって楽しいことばかりではありません。
いろいろなことを我慢したり、自分を節制しながら学校に通っているのです。
そんなお子さんから見ると、不登校の兄弟は嫌なことや面倒なことから免除され、特別扱いされているように見えるでしょう。「羨ましい」という気持ちから、「ずるい」と感じてしまうことも不思議ではありません。
では、具体的にどのようなときに不登校の兄弟を「ずるい」と感じてしまうのでしょうか?
家で好きに過ごしているとき
「お子さんが不登校の兄弟の影響を受けてしまう理由」でも解説した通り、家で過ごす時間はほとんどが自由時間です。
「もっと寝ていたかったのに無理やり起こされた」自分とは異なり、不登校の兄弟が朝遅くまで寝ていたら…
「苦手な先生の授業を我慢して受けている」自分とは異なり、不登校の兄弟が家で好きなゲームをして過ごしていたら…
「好きじゃない給食を食べなくてはいけない」自分とは異なり、不登校の兄弟が家でお昼ご飯に好きなメニューを食べていたら…
特に、学校に行く前や学校から帰ってきたタイミングで、不登校の兄弟が家で好きに過ごしている様子を見ると、学校に行っているお子さんは「ずるい」と感じることが増えてしまうでしょう。
特別待遇に見えてしまうとき
不登校のお子さんに対して、保護者は「責めない」ことが重要だと言われています。
内心は「いつ学校に戻れるのだろう?」と不安でいっぱいでも、不登校のお子さんを優しく見守っている保護者が多いのではないでしょうか?
学校に行っているお子さんは、保護者が不登校のお子さんを責めずに見守っている様子を見て、不公平だと感じているかもしれません。
自分は頑張って学校に行っているのに、家で好きなことをして自由に過ごしている兄弟を保護者が怒らずに認めている状態に納得できず、「ずるい」と思ってしまうでしょう。
好きなタイミングで学校に行くとき
不登校のお子さんが、遠足や修学旅行のときだけ登校する場合があります。
先生や保護者からすると、どんな日でも、一度学校に行くことが再登校のきっかけになる可能性があるので、登校を後押しするでしょう。
しかし、兄弟からすると、授業の日は登校しないのに、楽しそうな学校行事の日だけ登校するということは「ずるい」行動に見えてしまいます。
勉強していないとき
不登校のお子さんが家で勉強していなかったり、塾にも通っていない場合、学校に行って勉強している兄弟からすると「勉強していないのはずるい」という気持ちになってしまっても不思議ではありません。
特に、学校に行っていないと宿題もないため、家に帰って宿題をするタイミングに不公平だと感じてしまうお子さんは多いでしょう。
兄弟姉妹で一緒に不登校になりやすい性別や年齢は?
不登校の連鎖のしやすさは、兄弟構成で異なるとされています。
もちろん、ご家庭によってさまざまですが、一般的に、歳が近かったり、兄弟姉妹など同性の兄弟で不登校の連鎖が起きやすいと言われています。
歳が近いということは、小さなころから一緒に遊んで過ごしてきた時間が長いため、お互いの関係性が強くなっています。
生活リズムや習い事も同じというケースが多く、兄弟からの影響を受けやすいと考えられます。
特に、兄が不登校になって、弟に連鎖するパターンが多いと言われています。
これは、兄弟間では下のお子さんより、上のお子さんの影響力が大きいためです。
もちろん、姉が不登校になり、妹に不登校が連鎖することも少なくありません。
特に仲良し姉妹の場合、いつも一緒に登校している姉がいなくなったことで寂しくなり、妹も不登校となってしまうことが多いです。
兄弟姉妹で一緒に不登校になりにくい性別や年齢は?
逆に、兄弟の歳が離れていたり、兄妹や姉弟など、異性の兄弟構成の場合は、比較的不登校は連鎖しにくいと考えられています。
歳が離れているということは、小さな頃から生活リズムが少しずれており、通っている学校も幼稚園と小学校、小学校と中学校など、同じ学校ではないことが多いでしょう。
別々に過ごしている時間が長いため、兄弟同士の影響力も年齢差の近い兄弟と比較すると強くありません。
また、性別が違うと好きな遊びなども異なってくるため、別々の時間を過ごすことが多く、お互いへの影響力も弱いでしょう。
男女で子ども部屋も別々にすることが多いので、同性の兄弟姉妹より不登校の連鎖が起きにくいと考えられます。
兄弟で一緒に不登校になったときの対応法は?
兄弟がそろって不登校になった場合、保護者はどうしたらいいのでしょうか。
意識するポイントを3つご紹介します。
①一人ひとりの学校との関わり方を考える
不登校と言っても状況はさまざまです。
不登校の原因もそれぞれ異なる可能性が高いので、不登校だからといって兄弟を同じように考えず、一人ひとりに合わせた対応をしましょう。
たとえば、学校に通えるようになりたいのか、それとも他の居場所を見つけたいのかなど、今後についての考え方もそれぞれです。
兄弟で同じように再登校を目指すのではなく、一人ひとりと会話して、向き合い方を考えていきましょう。
②兄弟で比べない
兄弟で比べるのは絶対に避けましょう。
保護者が比較しなくても、お子さん自身が兄弟との差に苦しむこともあります。
一人ひとりを気にかけて配慮する必要があります。
たとえば、兄弟のどちらかだけが学校に行けた日に、必要以上に褒めたり、「〇〇が行ったから一緒に行けばいいのに」と保護者が登校を促したりすると、行けなかったお子さんが劣等感を感じるかもしれません。
③再登校を焦らない
保護者が学校復帰を焦ってしまうと、お子さんのプレッシャーになります。
言葉で伝えなくても、保護者の様子からお子さんに伝わってしまうので、保護者が焦らないことが大切です。
お子さんが兄弟そろって不登校の場合は、特に焦ってしまうでしょう。
保護者が「自分たちのせいで子どもたちが不登校なのではないか」と自責してしまうかもしれませんが、不登校の原因はさまざまです。必要以上にご自身を責めないことが大切です。
また、お子さんのどちらかが学校復帰したからといって、もう一人も同じタイミングで復帰できるわけではありません。
焦る気持ちをこらえてお子さんに向き合い、お子さんのペースで学校復帰をすることが大切です。
兄弟の片方が学校復帰したときの注意点はある?
兄弟のどちらかが先に学校復帰した場合に意識しておくポイントをご紹介します。
先に学校に復帰したお子さんへの注意点と不登校を続けているお子さんへの注意点は異なります。
それぞれのお子さんにベストな対応をしてあげてくださいね。
先に学校復帰したお子さんへの注意点
不登校を続けている兄弟に対して、「まだ学校を休んでいてズルい」と思わないように説明すると良いでしょう。
特に小学生のお子さんは、不登校に対して「学校を休んで好きなことをして遊んでいる」と考えて、「サボっている」「ズル休みしている」と思ってしまうこともあります。
せっかく学校復帰をしたお子さんが兄弟に影響を受けて再度不登校にならないためにも、不登校を続けている兄弟がどのような状態なのかを理解してもらうことが大切です。
楽をしているのではないと理解できるように、兄弟に丁寧に説明しましょう。
例えば、不登校の原因が友人関係のトラブルである場合は、「お姉ちゃんは、友達と喧嘩して学校に行けなくなっちゃったんだよ」と兄弟にもわかりやすく状況を説明すると良いでしょう。
また、同時に「〇〇は学校に戻って偉いね」と、学校に通うお子さんを褒めてあげることも大切です。ただし、不登校のお子さんが聞いてしまうと、「間接的に否定された」と感じる可能性もあるので、発言のシチュエーションには注意しましょう。
不登校を続けているお子さんへの注意点
兄弟で比べずに一人ひとりに向き合うことが大切です。
兄弟がそろって不登校のケースと同様に、兄弟で比べることは絶対に避けましょう。
保護者が比べなくても、兄弟が学校に復帰している様子を見て、焦ったりしんどくなる不登校のお子さんも多いでしょう。
兄弟との違いが不登校のお子さんをさらに追い込まないように、お子さんの存在そのものを認めてあげて、一人ひとりに向き合うことが大切です。