起立性調節障がいのお子さんに親ができることは?適切な過ごし方や不登校との関連性も解説

「朝起きるのが辛い」「学校に行けない日が続いている」など、お子さんの体調不良が長引く原因の一つとして近年注目されているのが、「起立性調節障がい」です。起立性調節障がいのお子さんを持つ保護者ができることや、適切な過ごし方、さらに不登校との関連性などについて詳しく解説します。

監修:村上実優

監修:村上実優

累計7万人以上の指導実績を持つ成基の個別指導塾「ゴールフリー」で教室長を務めた後、シンガクの教室長に就任。子どもの本来持つやる気や意欲を引き出す“教育コーチング”のスキルを活かし、学校以外の多様な学びの機会提供と、子どもが安心して過ごせる居場所づくりを目指してシンガクを運営している。

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目次

「朝起きるのが辛い」「学校に行けない日が続いている」など、お子さんの体調不良が長引くと、保護者としても不安になりますよね。

その原因の一つとして近年注目されているのが、「起立性調節障がい」です。

この病気は、自律神経の乱れによって血圧や心拍数が適切に調整されず、特に朝起きるのが困難になる症状が特徴です。

本記事では、起立性調節障がいのお子さんを持つ保護者ができることや、適切な過ごし方、さらに不登校との関連性などについて詳しく解説します。

起立性調節障がいとは?

起立性調節がいは、自律神経のバランスが乱れることで、血圧や心拍数が正常に調整されなくなり、立ち上がる際に十分な血液が脳に送られず、立ちくらみやめまい、倦怠感などが生じる疾患です。

自律神経は、体を活動的にさせる交感神経と体を休ませる副交感神経がバランスをとりつつ体内の環境を保っていますが、その2つのバランスがくずれると、血液やリンパなど流れるべきものが流れなくなるため、体に不調を引き起こします。

特に、朝起きるのが難しくなるという特徴があり、小中学生に多く見られます。

この症状は、単なる「朝の弱さ」や「怠け」と誤解されることが多いですが、身体的な原因が関係しており、本人もコントロールできない体調不良です。

起立性調節障がいの治し方は?

起立性調節障がいの主な原因は、遺伝的な要素や体質、生活習慣の乱れ、ストレス、水分・塩分摂取不足です。

生活習慣や水分・塩分の摂取などはお子さん本人の意識で変えることができますが、遺伝的な要素や体質は、お子さん自身ではどうにもできないことです。

そのため、起立性調節障がいの治療法は、完全に「治す」というよりも、症状の軽減や生活の質を向上させることを目指し、症状をコントロールすることが重要です。

起立性調節障がいのお子さんに多い特徴は?

起立性調節障がいのお子さんには、身体的・精神的な症状や行動傾向が見られます。これらの特徴が組み合わさることで、日常生活や学校生活に影響を及ぼすことが多いです。

主な特徴を解説します。

1. 朝起きるのが難しい

起立性調節障がいのお子さんは、自律神経の乱れによって血圧や心拍の調節がうまくいかず、特に朝の目覚めが極端に難しくなります。

起きても体がだるく、動くのが困難ということがよくあります。

2. 立ちくらみやめまい

座っている状態から急に立ち上がると、血圧が急激に下がり、立ちくらみやめまいが生じやすくなります。これは、血流が急に変化するためです。

3. 疲れやすい・持続的な疲労感

一日を通して常に疲れを感じていたり、少しの活動で疲れてしまうことがよくあります。このため、スポーツや遊びに積極的になれず、体力も落ちやすいです。

4. 集中力の低下

体の不調により、学校の授業や勉強に集中できなくなりがちです。特に午前中に集中力が低く、午後になって少しずつ体調が改善することもあります。

5. 頭痛や腹痛が頻繁に起こる

特に朝や緊張した場面で頭痛や腹痛を訴えることが多く、これが登校への障壁となる場合もあります。

6. 感情の変動

体調不良によるストレスから、感情のコントロールが難しくなることがあります。落ち込みやすかったり、イライラしやすいことも特徴です。

7. 夜型の生活リズム

体内リズムが乱れているため、夜に眠れず、夜更かしをしてしまうことが多くなります。その結果、朝起きられないという悪循環が起こります。

8. 体温調節が苦手

自律神経の影響で、手足が冷えやすかったり、体温が安定せず、夏でも寒がることがあります。

起立性調節障がいのお子さんの過ごし方は?

起立性調節障がいのお子さんは、体調の改善を促進し、生活の質を向上させるための工夫が必要です。ここでは、日常生活で意識すべきポイントや具体的な過ごし方を紹介します。

1. 朝の過ごし方

急に立ち上がると立ちくらみやめまいが起こるため、まずベッドの中で軽いストレッチを行い、血流を促してから徐々に起き上がるようにします。

起きたらまずコップ1杯の水を飲み、体内の血流を整えることが大切です。水分を摂ることで血圧が安定しやすくなります。

食欲がないことが多いですが、少しでも食べることで体を目覚めさせます。消化の良いものや温かいスープなどが適しています。

2. 規則正しい生活リズムを意識する

夜型の生活を改善するために、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる習慣を身につけることが重要です。遅く寝すぎないよう、夜は電子機器の使用を控え、リラックスできる環境を整えます。

朝や昼間の太陽光を浴びることで、体内時計がリセットされ、生活リズムの改善に役立ちます。できるだけ外に出て、軽い散歩や外での読書などを取り入れると良いでしょう。

3. 食事と水分補給

適切な栄養バランスを保つことが、体調の安定につながります。特に、ビタミンやミネラルが豊富な食材は体調を整えるサポートをします。

また、血圧が低いことが多いため、適度な塩分摂取が推奨されます。また、水分補給をこまめに行うことが重要です。

4. 運動習慣

激しい運動は避け、ウォーキングやストレッチなど軽めの運動を日常に取り入れましょう。血流を改善し、自律神経を整える効果があります。

体調によっては動けない日もありますが、その場合は無理せず、体を休めることが大切です。体調に合わせて運動量を調整することが無理せず継続するためのコツです。

5. ストレスの軽減

ストレスが自律神経に悪影響を与えるため、リラックスできる趣味や時間を作ることが大切です。読書、音楽、アート、手芸など、心が安らぐ活動を取り入れます。

家族が理解を示し、お子さんのペースに合わせて無理のないサポートをすることが重要です。安心感が体調改善に寄与します。

6. 学校生活の調整

学校に行けない場合は、無理せず分散登校や午後からの短縮授業を学校と相談しながら取り入れることが良いです。段階的に登校時間を増やしていくことで、負担を軽減します。

クラスメイトから、お子さんが怠けて遅刻していると思われることも多いため、学校に病気への理解を深めてもらうことで、ストレスの少ない学校生活がおくれるでしょう。

7. 必要に応じて薬物療法を取り入れる

起立性調節障がいは医師の診断や指導に基づいて治療が必要です。生活習慣の改善に加えて、必要に応じて薬物療法やカウンセリングを受けることが推奨されます。

薬物療法では、漢方薬などを用いて自律神経を整えます。しかし、薬物療法だけでは効果が薄い場合が多いため、生活習慣の改善やストレス緩和のためのカウンセリングなど、ほかの方法と併せて行われることが一般的です。

起立性調節障がいの症状を緩和させるには?

起立性調節障がいの症状を緩和させるためには、生活習慣の改善や体調管理、必要に応じた医療的なサポートが大切です。

症状を緩和させるための具体的な方法を紹介します。

1. 生活習慣の改善

朝決まった時間に起床し、夜は早めに寝るなど、規則正しい生活を心がけることが症状の改善に役立ちます。

特に思春期のお子さんは成長のために多くの睡眠を必要とするため、無理のない睡眠時間を確保しましょう。

また、水分不足や塩分不足は血圧の低下につながるため、意識的に水分や塩分を摂ることが重要です。起床後すぐにコップ一杯の水を飲むことも効果的です。

2. 運動療法

軽い運動やストレッチを日常に取り入れることで、血流の改善を促し、自律神経の安定に役立ちます。

特に、下半身を鍛える運動が有効とされています。ウォーキングやスクワットなどが推奨されます。

3. 薬物療法

生活習慣の改善だけで症状が改善しない場合、医師の判断で薬物療法が行われることがあります。血圧を安定させる薬や、自律神経を整えるための薬が処方されることが一般的です。

4. 適切な休養

体調が悪い日は無理に学校へ行かせるより、しっかりと休養を取ることが大切です。焦らず、体調に合わせた生活リズムを作ることが改善につながります。

起立性調節障がいのお子さんにどのようなサポートができる?

起立性調節障がいのお子さんに、保護者ができるサポートにはどんなことがあるでしょうか?

お子さんの心身の健康を支えるために保護者ができる具体的なサポート方法を紹介します。

1. 理解と共感を示す

起立性調節障がいのお子さんは、周囲から「怠けている」と誤解されやすいため、まずは保護者がいちばんの理解者になることが大切です。

「体が思うように動かない」「疲れやすい」などのお子さんの苦しさに耳を傾け、無理に頑張らせるのではなく、「しんどいんだね」と共感し、お子さんのペースに合わせたサポートを心掛けましょう。

保護者として不安や焦りを感じることもありますが、それをお子さんにぶつけてしまうと、逆にストレスやプレッシャーを与えてしまいます。冷静に対応し、落ち着いた環境を提供することが大切です。

2. 生活リズムのサポート

起立性調節障がいは自律神経の乱れによって起こるため、生活リズムを整えることが非常に重要です。

朝起きるのが難しい場合でも、無理をせず、少しずつ起きる時間を早めるなど、徐々に生活リズムを整える手助けをしましょう。

また、夜更かしを避け、夜はリラックスできる環境を作ることも保護者の役割です。スマートフォンやタブレットの利用を控えるように促したり、寝る前に一緒に静かな時間を過ごすなどして、体を休めやすくします。

3. 学校との連携

起立性調節障がいのお子さんにとって、朝の通学は難しいことが多いため、学校側と相談して分散登校や短縮授業を検討することも一つの手です。教師や学校カウンセラーとの連絡を密にして、個別の対応を調整しましょう。

もし、欠席が長引く場合でも、焦らずにお子さんの状態に合わせて通学を再開することが大切です。無理に登校させるより、体調が整うまで家庭での学習や療養に専念することも必要です。

4. 健康的な生活習慣の促進

お子さんが朝食を取るのが難しい場合は、少量でもいいので何か食べられるように工夫しましょう。消化の良い食事や、ビタミンやミネラルが豊富な食材を取り入れることで、体調を整えやすくなります。

起立性調節障がいのお子さんは血圧が低下しやすいため、こまめな水分補給が大切です。塩分も適度に摂取させると良いでしょう。

5. 適度な運動をサポート

ウォーキングやストレッチなど、軽めの運動から始められるようにサポートします。少しずつ体を動かすことで、血流が良くなり、自律神経のバランスを整えやすくなります。

6. ストレスの軽減

ストレスが起立性調節障がいを悪化させる要因の一つです。家庭内でリラックスできる環境を整え、無理をさせないようにしましょう。趣味や好きな活動を通じてリフレッシュできる時間を大切にします。

日常的にお子さんとの対話を重視し、体調や気持ちの変化をしっかり把握しましょう。親子でリラックスした時間を過ごすことで、精神的なサポートになります。

7. 医療のサポート

医師の診察を定期的に受け、必要に応じて薬物療法やカウンセリングを行います。保護者が病院との連絡や受診の調整を行い、お子さんに合った治療を受けられるようサポートします。

症状に応じて、定期的な診察やカウンセリングを受けることも大切です。受診が難しい場合は、オンライン診療なども利用できることがあります。

8. 社会的なつながりを持つサポート

他の保護者と情報を共有することで、安心感を得られることがあります。支援グループや地域のサポートネットワークに参加することで、お子さんと保護者両方が心の支えを得られます。

お子さんの起立性調節障がいは母親が原因?

起立性調節障がいの原因を調べるなかで、「母親が原因」という言葉を耳にすることがあるかもしれませんが、それは誤解や偏見に基づいたものです。

起立性調節障がいは主に自律神経の調節機能に問題が生じることから発症し、これは遺伝的要因や身体的な要因が関与していることが多いです。母親が直接的な原因とされることはありません。

しかし、「遺伝的要因や体質的な問題=母親が原因」と受け止められることがあり、原因が母親にあると誤解されることがあります。

既にお伝えしてきたように、起立性調節障がいは自律神経の働きに関わる障がいであり、自律神経の調節機能や血圧の調整に問題がある状態です。

遺伝やホルモンの変化、ストレス、睡眠不足なども影響する可能性がありますが、母親の行動が直接的な原因となるわけではありません。

親が過度に責任を感じたり、母親が原因とされるのは誤った解釈です。

起立性調節障がいは成長に伴って症状が自然に改善されるケースもあります。保護者は、「原因は自分にあるのかも」と過度に自己否定する必要はありません。

起立性調節障がいのお子さんにとっては、成長や環境に合わせた保護者のサポートが重要です。

起立性調節障がいと不登校の関連性は?

起立性調節障がいの代表的な症状は、朝起きられない、立ち上がると気分が悪くなる、頭痛やめまいがあるといったものです。

特に午前中に症状が強く現れるため、朝早く起きることが難しくなるお子さんが多いです。このため、朝の体調不良が原因で学校を休みがちになり、不登校につながることがよくあります。

起立性調節障がいによって頻繁に学校を休むと、学業の遅れが生じます。

これがお子さんにとって大きなプレッシャーとなり、ますます学校に行きづらくなる負の連鎖に陥ることがあります。

学業面での遅れや、学校生活での孤立感が不登校を長期化させる原因にもなります。

また、学業だけではなく、学校を休むことで同世代の友人とのコミュニケーションが減ってしまうため、社会的な孤立感が増し、自己肯定感が低下することも少なくありません。不登校が続くことでさらに人間関係が希薄になり、学校生活への復帰がますます困難になることも懸念されます。

起立性調節障がいが長期化すると、うつ状態や不安障がいなどの精神的な健康問題を引き起こすこともあります。これが不登校をさらに悪化させ、治療や支援が複雑化する原因になります。

保護者は早期に症状を理解し、お子さんの生活リズムや体調に合わせたサポートを行うことが重要です。

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