お子さんが突然「学校に行きたくない」と言い出したら、保護者の方は悩んでしまいますよね。
どうして?原因は何だろう…
このまま不登校になりそうで心配…
嫌がりはするけれど学校に行っているし、このままでいいのかな…?
お子さんが学校に行き渋るたび、そんな疑問や不安に苛まれているのではないでしょうか?
本記事では、お子さんが登校を嫌がる「行き渋り」について、状況や原因、対応方法について詳しくお伝えします。
行き渋りとは?
「行き渋り」とは、毎日学校に行っているものの、気持ちとしては「学校に行きたくない」「学校が辛い」と感じているお子さんの状況を指します。
行き渋りは不登校の一歩手前って本当?
行き渋りは、学校に通えなくなる、不登校の1歩手前とも言えます。
日本財団が2018年に中学生6,500人に実施した「不登校傾向にある子どもの実態調査」(*出典1)では、学校に通っている中学生のうち、不登校傾向にあるお子さん(欠席が30日未満)が約33万人いることが判明しました。
この数字は、不登校の中学生の約3倍で、全生徒の10人に1人が該当しています。さらに、この調査はコロナ禍以前に実施されているため、2023年現在はさらに増えていると考えられます。
【不登校傾向にあるお子さんの状況パターン】
行き渋りは、上の図の「仮面登校B」に該当します。
仮面登校Bの状況では、本人が学校は辛いと感じていても、学校で特に問題となる発言や行動をしておらず、先生やクラスメイトは気づいていないケースが多くあります。
お子さんが行き渋りになったとしても、必ず不登校につながるわけではありません。ただ、学校に行きたくない何らかの理由があるのは確かです。
大事なのは、お子さんにじっくり向き合い、話を聞いたり様子を見たりして、行き渋りが起きている原因を見つけることです。
《小・中学生》行き渋りが起きる原因9選
そもそも、お子さんはなぜ学校に行き渋るのでしょうか?
原因はお子さんによってさまざまですが、主な原因として、以下の可能性が考えられます。
原因① 友人関係のトラブル
小・中学生のお子さんにとって、友人と良好な関係を築けているか否かはとても重要な問題です。
いじめはもちろん、ちょっとした仲間外れや友人に何気なく言われた一言で深く傷つくことがあります。
家族や先生などの周囲の人にも相談しづらい内容であるため、保護者の方が気づけないことも多くあります。
1日の大半を学校で過ごすお子さんにとって、クラスメイトとの人間関係は死活問題です。少しでも悩んでいる様子が見られれば、話を聞いてサポートしてあげましょう。
また、気になることがあれば、先生と連絡をとって情報共有することで、学校での様子もわかってくるでしょう。
原因② 授業や成績、進路の悩み
学校の授業についていけないため、勉強に対してやる気が出ず、悩んでいるケースがあります。授業についていけない自分が恥ずかしくて自信を失っていたり、テストの点や成績のことを友人にからかわれたりすることで、学校が苦痛になってしまうこともあります。
勉強についていけない場合は、塾や家庭教師など、学校以外で学習を補う方法を提案してみるとよいかもしれません。
保護者の方が成績の良し悪しにこだわっていると、「わからない」と言い出せない可能性もあるので、日頃からお子さんの気持ちを聞き、フラットなコミュニケーションをとることが重要です。
原因③ 苦手な先生の存在
学校には、いろいろなタイプの先生がいます。どんなお子さんも、程度の差はありますが、先生の好き嫌いがあるでしょう。
苦手な先生の存在が、学校に対する嫌悪感につながり、学校そのものが嫌いになってしまうことも。
お子さんとの会話の中で、原因が特定の先生だとわかれば、学校に相談してみましょう。クラス替えで考慮してもらえたり、学校生活の中でもフォローを望める可能性があります。
原因④ 学校への不信感
さまざまなケースがありますが、学校に何かを期待していた分、その期待に応えてもらえなかった場合、学校への不信感が募ります。
また、いじめや学級崩壊など、学校環境が悪化している場合も、学校への信頼感は低くなるため、「あんな学校には行きたくない」「行っても意味がない」と思うようになることも。
不信感の原因は何なのか、その原因を取り除くことはできるのか、お子さんとのコミュニケーションを通して話し合う必要があります。
原因⑤ 心身の疲労による無気力
「何となくだるい」「めんどくさい」といった気分が続き、学校に行く気力がなくなってしまうお子さんもいます。
原因は複合的なことが多く、一概には言えませんが、勉強や部活に追われるハードな生活に疲れてしまったり、何らかの理由で自己肯定感が低くなり、やる気が出なかったりするケースがあります。
こういったケースでは、本人も明確な理由がわからず「どうしていいかわからない」状態であることが少なくないため、保護者の方はお子さんを責めるような言葉をかけないように注意してください。
お子さんとのコミュニケーションを通してお子さんが今どのような気持ちでいるのかを理解し、時間をかけて解決策を探るのがよいでしょう。
原因⑥ 身体が動かない、体調が優れない
「朝起きるのが辛い」「頭痛腹痛が頻発する」といった症状がある場合は、「起立性調節障害」の可能性があります。
起立性調節障害は、自律神経のバランスが崩れやすい思春期に症状が出やすくなります。
代表的な症状は、朝起きられない、けん怠感、頭痛などで、中学生の約1割がこの病気だと言われており、不登校の原因になっていることも多くあります。
もし、起立性調節障害の可能性がある場合は、病院を受診してみてください。
日常生活では、暑気を避けたり、低血圧予防のための水分補給に気をつけたりすることで、症状を軽くできる場合があります。
原因⑦ 環境の変化
学年が上がるタイミングの、急な環境の変化に対応するのが難しいお子さんもいます。
新しい人間関係がうまくいかなかったり、先生と合わなかったり、勉強についていけなくなったり・・。
また、引っ越しや転校、保護者の方の転勤や転職など、家庭の環境の変化に戸惑い、精神的に疲れてしまうお子さんもいます。
環境が変わるタイミングでは、お子さんの様子を注意深く観察して、コミュニケーションを意識的に増やすことが重要です。お子さんの悩みに早期に気づくことができるよう、日頃から家族の会話を大切にしましょう。
原因⑧ 保護者と離れることによる不安(母子分離不安)
「母子分離不安」という症状をご存知でしょうか?
お子さんが、愛着関係にある人(養育者など)と離れることで過度に恐怖や不安を感じ、社会生活に支障をきたしている状態のことを指します。
特に小学校低学年のお子さんに生じることが多く、保護者の方から長時間離れる学校生活にストレスを感じ、結果的に行き渋りになります。
保護者の方の愛情を実感できれば、だんだんと母子分離不安はなくなっていきます。離れていても「自分は愛されている」という安心感を持ってもらうことが大事なので、親子の時間を増やし、しっかり関わってあげることが解消につながるでしょう。
原因⑨ 発達障がいや病気
お子さんの中には、病院で診断されたことはないけれど、実は発達障がいや病気を抱えていたというケースもあります。
発達障がいの代表的なものとして、学習障がいや注意欠陥多動性障がい(ADHD)、自閉症スペクトラム(ASD)があります。
さらに、発達障がいの特性が一部あるものの、診断に至るほどではない「グレーゾーン」と呼ばれるお子さんもいます。
発達障がいは生まれつきの脳機能の発達の偏りによるもので、クラスメイトが難なくできることができなかったり、生き辛さを感じることが多くあります。
お子さんの特性を理解し、どうすれば生きづらさを排除できるかを保護者の方も一緒に模索していくことが、お子さんの力になります。
行き渋りが起きた際の保護者のNG行動
お子さんが行き渋りをした場合、保護者の方はどのように対応すればよいのでしょうか?
保護者の方の対応によって、お子さんの行き渋りを長期化・悪化させる可能性があるため注意が必要です。
まず、保護者の方がお子さんに以下の2つの態度をとると、さらにネガティブな気持ちになり、学校に行く活力を減らしてしまう可能性があります。
●叱りつける
●過度に心配する
また、保護者の方の具体的な行動として、下記の言動がお子さんの気力をさらに奪ってしまう可能性があるので、極力しないように注意しましょう。
●原因を何度も聞く
●「問題はたいしたことない」とお子さんの気持ちを軽んじる
●やる気が出ないことを「甘え」と言う
●「頑張ろう」と言う
●専門機関や他人に頼らずに解決しようとする
行き渋りが起きた際はどうすべき?
お子さんが行き渋りを始めたときに保護者の方がやるべきことは何でしょうか?
①お子さんの気持ちに寄り添う・共感する
お子さんの気持ちが不安定なとき、保護者の方にいちばん大切にしていただきたいことは、お子さんに寄り添ってあげることです。
難しい言葉は必要ありません。お子さんの気持ちや言葉を否定せず、ただ聞いて、「そうだね」と受け入れてあげてください。
「私はあなたの味方だよ」とどんな気持ちにも寄り添い、共感することで、お子さんは安心感・安全感をより深く感じ取ることができます。
自己肯定感が高まり、自信を回復していく中で、行き渋りも軽減してくるでしょう。
②可能であれば学校を休ませてみる
無理に登校させず、家でゆっくり過ごすことを提案するのも手段の一つです。
その際、生活リズムを大きく乱さないようにすることがポイントです。
朝になったら必ず起きることで、休んでいても昼夜逆転生活は避けられます。
また、食事も栄養バランスが整ったものを用意してあげるようにしましょう。
学校を休むのは「休息を取る」「好きなように過ごす」ことで心身を休ませることが目的なので、自宅学習を強要しないことが重要です。
お子さんがスマートフォンやゲームで遊んでいても否定せず、見守りましょう。ただ、あまりに長時間になるようであれば、時間を制限する方がよいでしょう。
③保護者の方も自分の時間を持つ
意外にも重要なのが、保護者の方が自分の人生を楽しむということです。
保護者の方がお子さんの行き渋りに落ち込み、悩み、塞ぎこんでしまうと、お子さんは罪悪感でいっぱいになってしまいます。
「自分のせいで辛い思いをさせている」と思わせないように、保護者の方がやりたいことをやり、好きに生きること、人生を謳歌している様子をお子さんに見せることが大切です。
行き渋りが起きた際に相談できる場所
まずは学校の先生に相談してみることをおすすめします。
お子さんは保護者の方の前と友人の前では見せる顔が異なることが多いため、普段の学校の様子を担任の先生やカウンセラーに聞き、情報を共有してもらいましょう。
また、先生やカウンセラーと、問題解決に向けた話し合いも行うとよいでしょう。
行き渋りの原因となっている学校の協力を得ながら行動することが、問題解決の近道になります。
その他、支援団体に相談するのもよいでしょう。支援団体はその道のプロなので、さまざまなケースへの対応経験があります。保護者の方だけで悩む必要はありません。
主な支援団体には以下のような機関があります。参考にしてみてくださいね。
①学校関係
1:担任の先生
2:スクールカウンセラー
3:教育支援センター(適応指導教室)
4:特別支援教育コーディネーター
②公的機関
1:ひきこもり地域支援センター
2:児童相談所
3:青少年センター
4:子供家庭支援センター
③民間団体
1:フリースクール
2:学習塾
3:家庭教師
4:NPOなど
④医療機関
1:病院(心療内科など)
2:カウンセラー
3:発達障害者支援センター
4:精神保健福祉センター
【まとめ】行き渋りが起きても焦らなくて大丈夫
本記事では、行き渋りの原因や対応方法についてお伝えしました。
行き渋りはお子さんからのSOSです。SOSを保護者の方に向けて発信できているということは、お子さんが保護者の方を信頼している証です。
そのSOSを見逃さないために、お子さんの様子や言動に変化がないか、普段からよく観察してあげてください。
お子さんとのコミュニケーションを通して行き渋りの原因を探り、お子さんに寄り添うことで、状況は好転していくでしょう。
【出典一覧】
*出典1 不登校傾向にある子どもの実態調査
参考箇所:学校生活をめぐる子どもの特徴(タイプ)6群