教室でじっとしていられない、集団行動で周りに合わせるのが苦手、全体での指示が伝わりにくい、忘れ物が多く提出物が出されない、思ったことをすぐに口に出してしまう、約束を忘れてしまいがち…。
そして、それらを学校で注意されることが多く、学校に行きたくないと言い出した。もしかするとそんなお子さんの不登校の背景には「ADHD」が関係しているかもしれません。
ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、以前は「注意欠陥・多動性障がい」と呼ばれていましたが、現在は「注意欠如・多動症」と改称されました。
ADHDは、お子さん本人の努力不足や保護者の育て方によるものだといまだに言われることがありますが、そのような事実はありません。
この記事ではADHDのお子さんに現れやすい特性や、ADHDのお子さんへの対応方法などについて解説します。お子さんの不登校の背景にADHDが関連しているかもしれないと思っている保護者の方はぜひ参考にしてください。
ADHDとは?
ADHDは、神経発達症候群(発達障がい)の1つで、お子さんの努力不足や、保護者の育て方によって発現するものではありません。お子さんがどんなに努力しても、体が勝手に動いてしまったり、先走ってしまったりしてしまうことがあります。
お子さんの体を車にたとえて、アクセルばかりが効いてしまい、ブレーキがうまく効かないような状態と表現されることもあります。
ADHDの主な特徴は「不注意」と「多動性および衝動性」です。「不注意」では、適切に対象に注意を払うことや、それを持続させることへの困難さ、不注意ゆえに生じるミスなどが挙げられます。
「多動性および衝動性」では、じっとしていられずに、たえず動き回ることや、他人の言葉を遮って喋る、口出しや横取りをするといった行動が見られます。ADHDの診断に至るには、発達水準に不相応に、かつ社会的及び学業的活動に悪影響を及ぼすほどである必要があります。
そのような特徴から、ADHDの特性を抱えるお子さんたちは、学校生活での活動全般に困難をきたしやすいことが考えられます。
また、成長とともに多動性や衝動性が落ち着いてくるような場合もありますが、小学校や中学校の在学中には、多動症や衝動性、注意欠如が学校生活に大きな影響を与えることもあり、その結果として不登校状態になることも十分に考えられます。
ADHDの特性
ADHDには「不注意」「多動性および衝動性」という特性があることを紹介しました。これらの特性は必ず全て同時に現れるわけではなく、1つだけが目立つ場合や、2つが同時に現れる場合など、お子さんによってさまざまです。
先述の通り、症状の度合いが日常生活に直接影響を及ぼすと、一定の基準をもとに判断された場合にADHDと診断されます。ここではそれぞれの特性の具体的な症状について紹介していきます。
不注意
不注意の具体的な症状は以下のようなものが挙げられます。
(1)忘れ物やなくし物が多い
お子さんが学校に教科書や文房具などをしょっちゅう忘れてしまう、買ったものをすぐになくしてしまい何度も買い足さなければいけないことがあるなどの場合は、不注意の症状が強く出ている可能性があります。
(2)集中力が続かない、すぐに気が散る
授業中に外を見て別のことを考えてしまう、工作をしている途中で昨日のアニメの続きが気になってテレビを見始めてしまうなども不注意の症状の1つかもしれません。
(3)先を見通せない
朝の登校時間が迫っている中、着替えずにパッと目に入った本を読み続けて遅刻してしまう、夏休みの宿題を最終日まで何も手をつけないで過ごしてしまうことなどの先の見通しの悪さも不注意の症状としてあげられることがあります。
(4)相手の話を聞き続けることが難しい
教室で先生の話を聞けず、授業内容を理解することが難しい、友達の話を聞けないことで、トラブルが多いなどの状態になることもあります。
多動性
多動性の具体的な症状は以下の通りです。
(1)体をもぞもぞ、手足をバタバタさせてしまうことが多い
お子さんがじっとしようと思っていても、手や足の一部が勝手に動いてしまう場合があります。視線などが絶えず動いてしまうようなこともあります。
(2)長く座っていることができない
授業中に席に着いていられず、椅子から立ち上がって歩き回ったり、教室の外へ出て行ってしまったりすることもあります。
衝動性
衝動性の具体的な症状は以下の通りです。
(1)一方的にしゃべり続けてしまう
相手の話を聞けず、一方的にしゃべり続けてしまうことがあります。
(2)すぐにイライラする
自分の思い通りにならないときに、大声をあげたり、手を出してしまったりすることなどがあります。
(3)衝動買いが多い
欲しいと思ったものを後先考えずに買ってしまうなど、欲求が自分のコントロールを上回ってしまうことなどもあります。それが叶わないことによって、上記のようにイライラしてしまうことなどもあります。
二次障がい
上記のようなADHDのお子さんの行動により、日常生活の中で友達とのトラブルが起こることがあります。
その結果、お子さんが相手に対して嫌な感情を抱いてしまったり、自信を失ってしまったりして、以下のような二次障がいにつながる場合があります。
二次障がいは大きく内在化障がいと外在化障がいの2つに分類があるといわれます。
内在化障がいとは、葛藤とそれに基づく感情(不安や気分の落ち込み)が自分自身の行動に大きな影響を及ぼすことです。強迫症状や対人恐怖、ひきこもりなどにつながる場合もあるといわれます。
それに対して、外在化障がいとは、葛藤とそれに基づく感情を自己の外の対象に向けて表現することです。反抗、他者や物に対する暴力や破壊行為、盗み、家出、放浪などの行動が含まれます。
ADHDが必ずこれらの二次障がいにつながるわけではありませんが、きっかけになりうる点について把握しておきましょう。
(*出典1)宇佐美政英|思春期自閉スペクトラム症の内在化障害および外在化障害について
不登校の原因となりやすいADHDのお子さんの苦手なこと
ADHDのお子さんは、その衝動性などから、自分でもそのつもりがないのに友達と喧嘩になってしまったり、順序立てて計画的に勉強したりすることが苦手な場合が少なくありません。
そして、それを周りに理解されないままでいると、日常生活や学校生活を送ることがつらくなってしまうこともあります。ここではADHDによってどんな問題が起こり得るのかを紹介していきます。
友達関係
ADHDのお子さんの中には、集中して相手の話を聞き続けることが苦手なお子さんもいて、友達から「話を聞いてくれない」と見られてしまい、結果として揉めてしまうお子さんもいます。
また、放課後に遊ぼうと約束していたのに忘れてしまい、相手から見たら約束をすっぽかされたと見え「もう遊ばない」と友達が離れてしまうようなこともあります。お子さん自身は周りと仲良くしたいと思っていても、意図しないところでADHDの特性に邪魔をされてしまったり、周りにADHDの症状を理解されないことで良い関係を保つことが難しくなったりしてしまうことがあります。本人としてはそのつもりがないため、自分はダメなやつだと自信をなくしてしまうこともあるようです。
授業時間・勉強
ADHDの特性で授業や勉強にも困難を抱えていることも少なくありません。じっと席に座っていることができなくて授業中に離席をしてしまったり、授業中にも関わらず周りの子に話しかけてしまったり、挙手せずに発言してしまい周りのひんしゅくを買ってしまったりするようなこともあります。
あるいは、先生の話を集中して聞き続けることができず、学習に遅れが生じて段々と勉強についていけなくなることもあります。本人としては勉強を頑張りたいという気持ちがあっても授業に集中できず、勉強についていけなくなってしまい、結果として自信をなくしてしまうことにつながることもあります。
計画的な行動・授業準備
計画を立てたり、見通しを立てることが苦手な特性から、翌日の学校の準備や計画的に宿題に取り組むことができないこともあります。そのことで周囲に迷惑をかけたり、宿題を忘れてしまったりして、結果として、学校で先生に注意されることが増えてしまうようなお子さんも少なくありません。
また、学校は急に予定が変更されるようなことも少なくありません。急な予定変更によって自分が想定していた予定が狂ってしまうと、なかなか柔軟に気持ちや行動が切り替えられず、聞き分けがないように見られてしまうこともあります。
予定を立てたり、見通しを立てるようなことは日々の中で多く生じるため、それが不得手であることで、毎日の通学の準備ができないなど、学校で授業を受けるにあたっても多くの問題が生じてしまいます。夏休みの宿題なども計画的に取り組むことが難しく、夏休みの終盤に慌てて取り組んだり、定期テストで計画的な試験勉強ができなくて点数を取れなかったりすることもあります。
お子さんが「ADHDかも・・・?」と思ったら
ADHDのお子さんが具体的に何に困っているのか知ることは、お子さんの不安を和らげたり、適切なサポートをしたりすることにつながります。ADHDについて学び、学校と連携をしながらお子さんに必要な支援を行うことで、生活上の課題も解決することができるでしょう。
そして、日々の生活上の困難が減ることで、安心して生活を送れることも可能となり、自分ができないわけじゃないと思えることが自信につながることもあります。ここではお子さんの不登校の原因がADHDである可能性を感じた際に保護者が取るべき行動について解説していきます。
病院に相談をする
ADHDを診断できるのは医師に限られるため、お子さんがADHDかどうかを確認するためには、まずは医療機関の受診が必要になります。ADHDかどうかは、問診、行動観察、検査など、さまざまな方法から総合的に判断されます。
問診では、これまでの生育歴、子どもの頃の様子、友達とのエピソード、病気にかかったことがあるか、家族のこと、就学前の保育園や幼稚園での様子、入学後のお子さんの学校や家庭での様子などが聞かれます。母子手帳、育児日記、学校からの連絡帳や成績表、学校のテスト、プリントやノートなどを用意しておくと、医師も多角的に情報を得ることが可能になります。
医療機関によって標榜している科が異なることがありますが、小児科や児童精神科、発達外来などで診断を受けることができます。大学病院や総合病院を受診する場合は、紹介状が必要な場合もあるため、事前にかかりつけの小児科医などに相談するのもおすすめです。もしどこに行けばいいかわからない場合は、地域の保健センターなどに相談してみましょう。
病院でかかる費用は、診察内容によって異なります。保険診療か保険外診療かによって異なる場合などもあるため、受診する医療機関でどの程度の費用が見込まれるかを確認をしておくと良いでしょう。
ADHDについて勉強し、理解を深める
ADHDについて勉強できる方法はたくさんあります。以下のような方法でADHDに関する知見を深めましょう。
本
お子さんが困っていることと具体的な支援方法が事例で書かれている本もありますし、体験談をエッセイ風につづったような本もあります。文字で読むのが苦手な方には、ADHDについて漫画などでわかりやすく書かれている本もあります。ADHDのお子さんが抱える困りごとを知りたい、お子さんへの関わり方を知りたい、日常の中での工夫やコツを知りたい、ADHDの人が大人になった時にどのように生活しているかを知りたい、など目的に沿って選んでみると良いでしょう。
おすすめ書籍:ヒトはそれを『発達障害』と名づけました
インターネット
ADHDについての個人の体験ブログやSNSなども少なくありません。体験ブログなども、お子さん自身が発信しているようなものもあれば、保護者の想いがつづられたようなものもあります。SNSなどの場合は、ハッシュタグ(#)をつけて、「#ADHD」と検索してみると、当事者の日常が投稿されていたり、当事者同士のつながりを作ることも可能です。
また、情報サイトについても、まとめサイトや医療機関、国や自治体が発信している情報などもあります。中には、正確性を欠くような内容が記載されていることもありますが、正確かどうかを見抜くことは難しい場合もあります。そのような場合は、医療機関や国や自治体のサイトを中心に探してみたり、記事の中に根拠となるような書籍や文献を記載したりしているような記事を参考にしてみることをおすすめします。
専門家に相談する
書籍やインターネット記事は無数にあるため、どれを見ればいいのかわからなくなってしまうこともあるでしょう。また、ADHDと一口に言っても、お子さんごとにその特性の様相は変わってきます。そうするとなおさら、何を参考にしていいのかわからなくなってしまうことがあると思います。その場合には、不登校やADHDに詳しい専門家に相談するのもおすすめです。
たとえば、学校には特別支援コーディネーターという役割を担った先生が配置されています。ADHDなどの特別支援に関する研修などを受けている場合が多いため、身近な相談の入り口として話がしやすいかもしれません。個別性が高いお子さんの生活上の困りごとについては、個別に相談することでそのお子さんにあった効果的な支援や必要な環境作りについて知ることができます。
学校以外で相談ができる機関としては、お住まいの地域の子ども発達支援センターや子ども家庭支援センター、家庭児童相談室、教育センターなど、公共の相談機関もあります。また、その他にも、臨床心理士や臨床発達支援士、特別支援教育士(S.E.N.S)などの資格を持った専門家に相談をしてみることも1つの手です。
交流会へ参加する
ADHDのお子さんの保護者による交流会などもあります。交流会で勉強をしたり、お互いの話を聞きあったりすることで、自分たちだけがそのことに困っているわけではないんだということがわかります。お子さんに対して正直腹が立つ想いがあることなども共感してもらえることで、気持ちが楽になり、これからどうすればいいのかが見えやすくなることもあるでしょう。
また、さまざまなお子さんに対する取り組みが共有されると、対応策の引き出しが増えてくるため、お子さんに合った方法を検討しやすくなることも考えられます。
一方で多くの情報に触れると、何が正しいのかわからなくなってしまい、かえって混乱してしまうような場合も見受けられます。全て取り組まなくてはいけないと思うのではなく、自分たちに合いそうなやり方を取捨選択したり、交流会との距離の持ち方も無理のないようにしたりすることも大切です。
担任の先生・学校に相談をする
お子さんごとの特性も異なるため、そのお子さんがどんな特性があるのかといった情報を少しでも多く集めることは、特に違和感を覚え始めた最初の時期においては重要です。担任の先生とコミュニケーションを取り、お子さんが普段の学校生活でどんな様子なのかを聞いてみましょう。コミュニケーションを取る方法には直接連絡する以外にも、連絡帳や個人懇談、授業参観や学校見学、学校行事の様子を見るなどがあります。
すでにADHDの診断を受けている場合は、診断の内容やお子さんの特性、苦手なこと、配慮してほしいことなどを具体的に伝えましょう。
たとえば「指示を出すときには、1つずつにしてほしい」「パニックになったら別室で落ち着かせてほしい」といったことです。必ずしも、全てを実行することは難しい場合もありますが、代替案を検討したり、より良い手段を提案したりしてもらえるような場合もあります。大切なのは、お子さんに合ったやり方であり、持続可能な方法を学校と連携しながら一緒に模索していくことです。
保護者の立場からすると、学校や担任への不満をぶつけたくなることも少なくないことは想像できます。しかし、学校や担任の許容度や力量に差があることも事実ではあるでしょう。対応の不備を伝える必要があることもありますが、実現可能なことや継続的に可能な手段、落とし所を見つけていくことが現実的には必要な場合も少なくありません。ときには、感情的に伝えたくなることもあるかもしれませんが、そのことがお子さんにとって不利益になってしまうことは避けたいため、そのあたりのことも考えながら学校とのコミュニケーションを検討していきたいところです。
その際に、苦手なことだけでなく得意なこと、これまでに取り組んで効果があった支援方法なども併せて伝えると、学校でも支援を検討しやすくなるかもしれません。お子さんの特性や支援方法を1冊のサポートブックにまとめるとスムーズに伝わりやすい場合もあります学年が上がったり、小学校から中学校に上がったりした際に、うまく情報が引き継ぎされずに、新たな学年で困りごとが再燃するような場合もあるため、これまでの取り組みなどはまとめておくと支障が少なく済む場合もあるでしょう。学校で特別支援の対応を受けていると、個別支援計画などを学校が作成してくれるところもあるため、そのような書類をうまく引き継いでいくことも重要です。
ADHDのお子さんが不登校になった際の対応
ADHDのお子さんが不登校になった際には、ADHDの特性と関連して不登校になっている場合や、そうではない場合もあるため、対応に注意が必要です。
場合によっては、ADHDの特性とは関係ないところで不登校になる場合もあるため、ADHDだからといって決めつけずに何が不登校につながったのかを改めて確認することが肝要です。そうでないと「どうせADHDだから」と、自分で自分を諦めたような気持ちにさせ、お子さんの心を傷つけることにもつながりかねません。そこを踏まえつつ、ここではADHDの特性からお子さんが不登校になった際の適切な対応方法について解説します。
無理に学校へ行かせない
ADHDに限らず、不登校のお子さんは自信をなくして心が疲れ切っている状態である場合が少なくありません。したがって、過ごしにくい状態の学校に無理に行かせようとしても、自信や心のパワーはますます弱っていってしまうため、まずは家でゆっくり休息を取ることが必要な場合もあります。特に、学校ではADHDの特性がゆえに、トラブルになることや注意されることなども少なくなく、非常に疲れ切ってしまっているようなこともあるでしょう。
また、そのような経験の中で、自信を失うような嫌な思い出を抱えていることもあるため、つらかったことや悲しかったことなど、お子さんの話をじっくり聞いて、気持ちに共感し、寄り添ってあげる時間を設けてあげてください。
学校は集団行動が多くなる分、手を尽くしてもその時は特性としてつらさが優ってしまう場合もあります。とはいえ、学校に行かずに家だけで過ごすのは心配であるという保護者の想いもあるでしょう。その場合には、今通っている学校以外にも、少人数制の学校や、学校に比べると比較的融通が効きやすいフリースクールなども視野に入れ、個別の支援が受けやすい環境を作っていくことも大切です。
担任の先生・学校と連携体制をとる
集団行動が苦手なお子さんは少なくありませんが、だからといって学校生活を諦める必要はありません。特性があったとしてもカバーできるコツや工夫を身につけ、環境を整えることで学校生活を安心して送ることができる可能性があります。
まずは、お子さんができることとできないことを整理し、学校と共有することが重要です。お子さんにどんな環境や支援が必要か、この学校ではこれから何ができるか、何はできないのかなどを、お子さんの様子を見ながら考えることが必要です。
そのためにも担任の先生や学校とはこまめに情報共有ができることが望ましいでしょう。文部科学省も学校教育での「ADHDの特性を理解した指導」を推進しています。
(*出典2)文部科学省|注意欠陥・多動性障害に関する学校における配慮事項について
とはいえ「毎回連絡を取るのは過保護な親だと思われるんじゃないか」「めんどくさい親だと思われているんじゃないか」と心配をされる保護者もいらっしゃいます。学校の先生も忙しく、他のお子さんの対応もあるため、十分に時間を取ってもらうことが難しいこともあり、迷惑をかけてしまうのではないかと心配されるのも無理はないでしょう。そのような心配がある場合は、担任の先生などにもその気持ちをそのまま伝えてみるのも良いでしょう。そのうえで、どんな形で情報共有していくのが良さそうかを、まずは検討するのも1つです。
ペアレントトレーニングから接し方を学ぶ
ペアレントトレーニングとは、保護者が子育てのスキルを上げるための親子プログラムです。ADHDのお子さんと保護者だけでなく、全てのお子さんの保護者におすすめできます。
ペアレントトレーニングでは保護者がお子さんへうまく関わることを促していくことで、子どもができることが増え、日常の困りごとが減っていくといわれています。
トレーニングは、講義、グループワーク、ロールプレイなどの形で行われます。全5回以上で1回90〜120分となっており、子どもの年齢や発達特性に合わせたプログラムもあります。医療機関で実施している場合もあれば、自治体などで行っている場合、個人で開業しているカウンセラーが開催している場合などがあります。
ADHDのお子さんへの接し方を保護者が学ぶことで、お子さんへの理解が深まり、親子ともに自信がついたり、気持ちが落ち着いたりすることにつながるかもしれません。
まとめ
ADHDは注意欠如・多動症とも呼ばれる神経発達症(発達障がい)の1つです。不注意・多動性・衝動性などの特性があり、それらを原因に学校生活が困難になることがあります。ADHDが不登校に関連している場合、まずはお子さんがどんなことで困ってきたのか、どんな気持ちでいたのかなどに寄り添い、お子さんの困りごとの理解を深めることが重要です。
そのうえで具体的な支援策を考えましょう。特性によって困難にぶつかることもありますが、環境が調整されることや、過ごし方の工夫やコツを身につけることで、解消できることも少なくありません。
「発達障がい」から「神経発達症」と改称された背景にも、本人の特性自体に困難があるわけではなく、環境との調和性などが重要であることもあります。とはいえ、支援や環境を整えることは大変なことのため、積極的に専門家や学校などを頼ってみてください。場合によっては、学校への復帰だけでなく、通信制の学校やフリースクールの利用も検討してみてはいかがでしょうか。お子さんの将来を考え、お子さんにとって最適な選択をできるようにしましょう。
【出典一覧】
*1 宇佐美政英|思春期自閉スペクトラム症の内在化障害および外在化障害について
参考箇所:二次障がい
*2 文部科学省|注意欠陥・多動性障害に関する学校における配慮事項について
参考箇所:担任の先生・学校と連携体制をとる
【監修者コメント】
ADHDという言葉は以前に比べると、言葉の認知は進んでいるように思いますが、まだまだ十分に理解されていないことや、ネガティブなイメージをもたれているように感じることもあるようです。
特に、小学校など年齢が低い状況では、まだ自分の特性との付き合い方が上手ではなかったり、衝動さが強く出たりすることなどで、友人関係でトラブルになることも少なくはなくありません。お子さんだけではなく、保護者の方自身も自信をなくしていたりするような場面に出逢うことがあります。
脳の作りの違いなどが指摘されることが多いですが、自分とは違う行動を取ることやマジョリティとは違う様子については、なぜそのような行動をしてしまうのか理解ができずに、ふざけているように感じてしまうことも少なくはないように見受けます。
まずは、保護者自身が、自分とは異なるそのお子さんの物事の見え方や捉え方などを想像してみることも大事かもしれません。
参考書籍:発達障害の人が見ている世界