不登校になる原因として人間関係が原因という人の割合は高く、日本財団の「不登校傾向にある子どもの実態調査報告書」によると、3割近いお子さんが「学校は居心地が悪い」「友達とうまくいかない」といじめや人間関係のことで悩んでいるというデータがあります。
家庭、学校が生活の大半を占めるお子さんたちにとっては学校での人間関係が上手くいかないことは大きな悩みであることは間違いないでしょう。どんなお子さんがそういった課題にぶつかりやすいのか?どんな解決方法があるのか?また、保護者はどんなことができるのかを、ご紹介します。
なぜ学校の人間関係に悩む人が多いのか
ひょうごユースケアネット推進会議の「子どもの生活といじめ・不登校等に関する意識調査」*1によると小学生・中学生のストレスの原因となっているものの割合は学校での友達、先生との人間関係が上手くいかないことが小学校で36%程度、学校で28%程度となっております。一番大きな割合を占めている問題は「勉強や宿題や成績が上手くいかないこと」となっておりますが、人間関係の問題は二番目に多い割合で子ども達にとっては大きな問題です。
人間関係の悩みはどんなときに起こって、どんな特徴があるのでしょうか。
学校での体験としてよく挙げられるものを、いくつかまとめてみました。
学校や職場で人間関係がめんどくさいと感じる瞬間は?
子ども達はどんなときに人間関係がめんどくさいと感じるのでしょうか?よく聞かれる意見としては下記のようなものがあげられます。
・周りの人に気を遣っているとき
・ルールや規制などの決まりに縛られていると感じるとき
・自分のことを否定されたとき
・クラスや複数人の集団で行動をとらないといけないとき
学校での生活ではこのようなことが頻繁に起こっています。そういった状況でお子さん自身が周りに対して「どのような対応をするのか?」は性格や考え方によって様々ありますが、人間関係がうまくいかない時には、いくつか特徴的な態度が見られます。
人間関係がうまくいかない時の共通点
一般的に人間関係がうまくいかない時に出てしまう態度の特徴としてあげられるものを紹介します。「ここは当てはまる部分があるな」という態度が出ている場合、人間関係でのストレスを感じやすかったり、学校に行きにくい原因となっているかもしれません。
・人見知り
・他人に気を遣いすぎる
・自己中心的
・人にどう思われるか全く気にしない
・気が強すぎて攻撃的になっている
・警戒心が強い
このような特徴のあるお子さんは特に人間関係でのトラブルを抱えやすい可能性があります。普段から上記のような部分が気になっていたり、「最近なにか様子が違うな」と思うことがあれば、意識的に会話の時間を増やしたり、周りの人に相談してみるのも良いでしょう。
人間関係を悪化させてしまうNGな3つの行動
・自己中心的な行動をとる
人間関係がめんどくさくなったときに少しでも自分のストレスをなくしたいとい思いから、自己中心的な行動をとってしまうこともあるかもしれません。また、つい感情的になってしまうこともあるでしょう。
自己中心的な行動をとることで、自分自身の我慢することによるストレスは少なくなるかもしれません。一方で、それが原因で人間関係がさらに悪化する可能性も否めません。無理に相手に合わす必要はありませんが、状況に応じて相手に共感したり、友人に協力してもらってできる限り関わりをつくらないようにする方法なども検討してみてはいかがでしょうか。
・放置して、不機嫌でいる
相手とのやりとりがめんどくさくなり、機嫌が悪くなってしまったり、素っ気ない返事をしてしまったり、相手に当たってしまいたくなります。しかし、露骨に嫌がった行動をとってしまうと、場合によってはめんどうな相手以外の人との関係にも影響を及ぼしてしまう可能性があります。他の人からも「付き合いづらい人」と認識されてしまい、自分にとって悪い環境になってしまいます。嫌なことを嫌と主張することも大切ですが、相手への尊重や、感情的になってしまった後はきちんと相手に謝ることを忘れないようにしましょう。
・やり返す
冷静なときにはそんなことはやらないだろう…と考えられる場合にも、感情的になっているときには無意識にやり返すような行動をとってしまうこともあります。悪口や陰口を言ってしまうこともあります。
しかし悪口や陰口を言うことで、言っていないことまで広まったり、さらに相手との関係性を悪化させてしまうことになり、かえって学校の居心地が悪くなります。
その場ではストレスを解消できるかもしれませんが、悪口が相手の耳に入ってしまう可能性もあり、そうなると関係がよりめんどうなものになってしまいます。一方で、そういったことをすべてため込んで精神的に疲弊することも考えられます。1つの手段として、自分自身の思いを汲み取ってくれる人に不快だった気持ちや理解されなかったことを自分の思いと一緒に伝えましょう。家族がお子さんの気持ちを理解しようとしながらじっくり聞いてあげることも効果的でしょう。
学校の人間関係に悩むお子さんに保護者ができること
では実際にお子さんが学校の人間関係にストレスを感じているときにどんな対処をしていけば良いか?具体的に考えていきましょう。
両親や担任の先生、カウンセラーなどに相談できる環境を作る
まずは身近な人に相談するところから始められることが理想的です。そのためには家庭での関係性、学校の先生との連携など日頃から意識して行うことで、事態が発生したときにすぐに対処できます。逆に、状況が悪化してからでは対応できないでしょう。特に親子関係や夫婦関係についてはお子さんにたくさんの影響を与えてしまう可能性があるため、意識的に良い関係をつくっておくことが望ましいです。
無理をせず学校を休ませる
保護者の方々の中でも、「学校には行くべき」「みんな行っているのだからウチの子も大丈夫」など、学校に行かないと問題だと思っている方は今も多いのではないでしょうか。一方で子どもたちは学校を休んでいる自分がどう思われているかに対して、「家族がどう思っているか不安だった」という割合は小学生で40%、中学生で47%となっております。(*2不登校児童生徒の実態把握に関する 調査報告書 文部科学省)
子ども達に学校に行くことを無理強いすることで、親子の関係性が悪化して相談しにくくなったり、学校での人間関係がさらに悪化する可能性も考えられます。まずは数日、担任の先生には事情を説明して休ませてみましょう。数日休むことでお子さんの頭の中の整理ができるかもしれません。
リフレッシュさせる
時間をつくってリフレッシュする余裕を持たせてあげてください。子ども達は自分から言いにくいこともあるかもしれません。提案をしてあげることで話しやすくなるので、「〇〇してきたらどう?」と声かけをしましょう。本人の趣味や好きなことをさせたり、一緒に散歩をするなど気軽にできることでもリフレッシュできるのではないでしょうか。
人間関係について整理する
自分にとって、だれが大切で、だれとは距離をおいて良いか。少し落ち着いて人間関係を整理することで、どのような付き合い方をしたら良いか?明確になることがあります。その際に、一度関係を断つことも1つの手段です。
これまでに仲良くしてきた、ずっと一緒にいたからと行って、今後もずっと一緒にいなくてはいけないわけではありません。冷静に今の状況を判断して、今の自分にとって必要、大切な人間関係に集中してもらいましょう。
学校の人間関係と自己成長
一方で、人間関係に悩んでいたり、しんどいときだからこそ、自己成長に繋がる部分もあります。今後、社会に出ていくにあたって、解決していくべき問題にはなるため、自分なりの解決方法を考えるなど、1つの成長の機会として捉えたいものです。
自己成長を促す学校の人間関係の克服法
学校の人間関係を克服していくことで自分自身に身につくことはいくつもあります。コミュニケーション能力の向上、共感スキル、リーダーシップの発展など、一定数の人数がいて、同じ年代だからこそ身につけられる能力があります。それらを身につけることが自分にとってプラスになるんだ!という意識を持つことができれば、積極的に人間関係の克服に向けて取り組んでいくことができます。
学校の人間関係と自己評価の関係性
高校生の「在り方生き方」を考える会の「高校生の対人関係に自己評価が及ぼす影響に関する実証的研究」*3によると、友人との関係に気を遣い、関係の維持に不安を抱えていたり、関係そのものに不満足感がある高校生の多くは、自分自身の良さや能力を見出していない人の割合が多くなっています。
さらにそのうちの二人に一人は、現実の自分自身を否定的に認識しているようです。したがって、学校での人間関係を円滑に進められるかどうかによって自己評価が高まるかどうかは大きく影響があると言えるでしょう。
学校の人間関係は心の健康に影響する
子ども達の生活している環境の中で、学校、家庭が時間のほとんどを占めていることは明白です。そのほかのコミュニティがあることも大変重要ですが、先ほどの2つのコミュニティでの良好な人間関係ができていれば健康な生活を送っていくことができるでしょう。
学校の人間関係が心の健康に与える影響
学校の人間関係が心の健康に与える影響は様々ありますが、良い人間関係は自己肯定感の向上、ストレスの軽減、孤立感の軽減など学校生活を営んでいくためのパワーになります。
学校で課される学習や課題について、自分自身が好き、得意なものだけで終始しないことを考えると、心が健康でなければ難しい課題にぶつかったときに乗り越えることができないでしょう。そうなるとさらなる自己否定を起こしてしまい、悪循環に陥ります。
【まとめ】人間関係に悩むときは立ち止まってみることも大切
今回の記事であげたように人間関係の中で身につくこともあり、自己成長につなげてほしいという思いもある一方で、人間関係が難しくなった際には上記の対処法などを上手く活用し、一時的に逃げたり、解消したりしながらバランスをとることが大切です。
もちろん、お子さん一人では、ご自身の状況次第で判断ができなくなっている状況も考えられますので、お子さんに関わることのできる人間が一体となってサポートしていくように努めましょう。
また、お子さんにとって家庭、学校がどうしても安心できない場合はそれ以外の教育機関を利用することも検討してみてください。1人でも多くの人との関わりをもつことが、お子さんの現状を脱する鍵になるかもしれません。
【出典一覧】
*1子どもの生活といじめ・不登校等に関する意識調査 – 兵庫県
参考箇所:5.子どもにとってのストレスの背景
*2不登校児童生徒の実態把握に関する 調査報告書 文部科学省
参考箇所:【自分がどう思われているかについて】