この記事を読んでくださっているということは、お子さんが学校に対する恐怖心を持っていて、対応に悩まれているのではないでしょうか?
毎日通う学校が「怖い」と感じているということは、とても苦しい状況でしょう。
実は、学校に怖さを感じている人は、少なくありません。「学校が怖い」と思うことは、誰にでも起こり得る、よくあることです。
本記事では、学校が怖いと感じる原因や、学校に怖さを感じているお子さんへの保護者の対応、学校以外の居場所の選択肢についてご紹介します。
学校が怖いのは自然なこと
学校への恐怖心は多かれ少なかれ誰にでもある
学校は、子どもにとっての社会です。さまざまな環境で育った、価値観の異なるクラスメイトと一緒に、授業や休み時間、学校行事を共有し、集団で生活していく場です。
いろいろな個性を持ったクラスメイトがいるからこそ面白いとも言えますが、集団生活は楽しいことばかりではありません。
毎日ではなくても、
「明日の体育の持久走、嫌だな。完走できるか怖いな」
「体調が悪くて宿題ができていないけど、先生に怒られるかな。学校に行くのが怖い」
「昨日ケンカしたAちゃん、今日もまだ怒っているかな。学校で会うのが怖いな」
というように、理由はさまざまですが、多くのお子さんは学校に行くことへの怖さを感じたことがあるのではないでしょうか。
そして、毎日のように学校に怖さを感じているお子さんもいるでしょう。
「授業についていけない・理解できない」
「走ることが苦手で体育が嫌い」
「苦手な先生がいる」
「クラスメイトに嫌なことをされる・言われる」
「心から信頼できる友達がいない」
「疎外感を感じる」
「原因はよくわからないけど登校したくない」
もちろん要因はさまざまですが、こういった気持ちから「学校が嫌だな」「学校が怖いな」と感じるお子さんは多いです。
「恐怖=不安」ではない
恐怖と不安は別もの
先ほどご紹介したように、学校を怖いと感じる理由は多種多様です。本記事では、恐怖と不安をまとめて「学校が怖い」状態としていますが、学校への「不安」と「怖さ」は似ているようで少し違います。
原因が学校にある場合は「学校不安」
学校を怖いと感じている理由がはっきりしていて、それが学校に起因している場合は、「学校不安」と言えます。
例えば、
「授業についていけない」
「成績が悪化している」
「いじめられている」
「仲間外れにされる」
というような、原因が学校生活にあり、お子さんが不安に思っていることがはっきりしている場合は「学校不安」でしょう。
原因が学校には直接存在しない場合は「学校恐怖」
一方、学校生活に明らかな原因が見当たらず、お子さんも怖さの原因がわかっていない場合は「学校恐怖」と言えます。
この場合、学校に怖さを感じる原因が学校には直接ないことから、原因の解明が複雑化してしまいます。
学校が怖い直接的な原因
先ほどお伝えしたように、原因が学校の中にあるものを「学校不安」と言います。
学校不安の主な原因をご紹介します。
友達との関係
お子さんにとって、友達と良好な関係を築けているか否かはとても重要な問題です。
いじめはもちろん、ちょっとした仲間外れや友人に何気なく言われた一言で深く傷つくことがあります。
家族や先生などの周囲の人にも相談しづらい内容であるため、保護者の方が気づけないことも多くあります。
1日の大半を学校で過ごすお子さんにとって、クラスメイトとの人間関係は死活問題です。少しでも悩んでいる様子が見られれば、話を聞いてサポートしてあげましょう。
また、気になることがあれば、先生と連絡をとって情報共有することで、学校での様子もわかってくるでしょう。
先生との関係
学校には、いろいろなタイプの先生がいます。どんなお子さんも、程度の差はありますが、先生の好き嫌いがあるでしょう。
苦手な先生の存在が、学校に対する不安につながり、学校そのものが怖くなってしまうことも。
お子さんとの会話の中で、原因が特定の先生だとわかれば、学校に相談してみましょう。クラス替えで考慮してもらえたり、学校生活の中でもフォローを望める可能性があります。
勉強についていけない
学校の授業についていけないため、勉強に対してやる気が出ず、悩んでいるケースがあります。授業についていけない自分が恥ずかしくて自信を失っていたり、テストの点や成績のことを友人にからかわれたりすることで、学校が苦痛になってしまうこともあります。
勉強についていけない場合は、塾や家庭教師など、学校以外で学習を補う方法を提案してみるとよいかもしれません。
保護者の方が成績の良し悪しにこだわっていると、「わからない」と言い出せない可能性もあるので、日頃からお子さんの気持ちを聞き、フラットなコミュニケーションをとることが重要です。
運動が苦手
学校では、体育の授業や運動会など、大勢の前で身体を動かすことが少なくありません。
運動が好きで得意なお子さんにとっては、何の問題もありませんが、運動が苦手なお子さんにとっては、みんなの前で「できないこと」「苦手なこと」を発表する場になっているケースがあります。
運動が苦手なお子さんは、自己肯定感も低くなってしまいがちです。運動以外の分野で自分に自信を持てるよう、お子さんをフォローしていくことが有効です。
クラスや教室の雰囲気に馴染めない
学校はいろいろなお子さんが集まっている場所なので、お子さんと気の合うクラスメイトが集まっているときもあれば、気の合うクラスメイトが全くいないということもあります。
心から信頼できる友人がいないと、クラスになかなか馴染むことができず、そのまま学校に対する不安につながっていきます。
学校が怖い間接的な原因
原因が学校の中にはないにも関わらず、学校に不安や恐怖を感じる場合を「学校恐怖」と言います。学校恐怖は、原因がはっきりしないことも多いのですが、比較的多く見られる原因をご紹介します。
親や家との分離不安
「母子分離不安」という症状をご存知でしょうか?
お子さんが、愛着関係にある人(養育者など)と離れることで過度に恐怖や不安を感じ、社会生活に支障をきたしている状態のことを指します。
特に小学校低学年のお子さんに生じることが多く、保護者の方から長時間離れる学校生活にストレスを感じるようになります。
保護者の方の愛情を実感できれば、だんだんと母子分離不安はなくなっていきます。離れていても「自分は愛されている」という安心感を持ってもらうことが大事なので、親子の時間を増やし、しっかり関わってあげることが解消につながるでしょう。
親の過干渉
過保護な保護者は、お子さんがやるべきことを先回りして行うため、お子さんの自己解決能力が育ちにくくなります。
保護者がいないと何もできないお子さんにとって、自分1人で問題を解決しなくてはならない学校へは「怖い場所」「行きたくない場所」という心理につながってしまうことがあります。
子どもにとっての「失敗」は、絶対にあってはならない「間違い」ではなく、これからの成長に欠かせない「経験」です。
保護者が過干渉なお子さんは、何か少し難しいこと、ちょっとした失敗があると立ち向かうことも立ち直ることもできず、保護者が守ってくれる安全な家に逃避するという傾向があります。
発達障がいなどの可能性
お子さんの中には、病院で診断されたことはないけれど、実は発達障がいや病気を抱えているというケースがあります。
発達障がいの代表的なものとして、学習障がいや注意欠陥多動性障がい(ADHD)、自閉症スペクトラム(ASD)があります。
さらに、発達障がいの特性が一部あるものの、診断に至るほどではない「グレーゾーン」と呼ばれるお子さんもいます。
発達障がいは生まれつきの脳機能の発達の偏りによるもので、クラスメイトが難なくできることができなかったり、生き辛さを感じることが多くあります。
お子さんの特性を理解し、どうすれば生きづらさを排除できるかを保護者の方も一緒に模索していくことが、お子さんの力になります。
学校が怖いと言われたときのNG対応
お子さんに「学校が怖い」と言われたとき、保護者の方がしてはいけない対応についてご説明します。
お子さんの話を受け入れない
いちばんよくない対応は、「話を聞かない」ということです。
もちろん、物理的にお子さんの話に耳を傾けないということもNGですが、話を聞いたうえで「そんなどうでもいいことで悩んでいたの」や「そんなことは気にする必要ない」と話の内容を受け入れないということもNG行動です。
保護者の方がどう思うかは重要ではありません。
お子さんが、今、どんなことに悩んでいるのか、苦しんでいるのか、その話してくれた内容をそのまま受け入れてあげてください。
学校に行くかどうかの判断を保護者がする
「学校が怖い」とお子さんがしばらく学校を休んでいたとしても、再登校の判断はお子さんに任せてください。
「そろそろ行った方がいいんじゃない?」などと声掛けをしてしまうと、お子さんは学校を怖いと思う原因が解決していないのに、無理に登校する可能性があります。
無理に登校することで、「学校不安」や「学校恐怖」がさらに深刻化してしまう可能性もあります。
「学校に行くべき」ということはお子さんもわかっていることです。登校を無理強いせず、お子さんに判断を任せてみてください。
過剰に反応する
「学校が怖い」という発言に対し、過剰に心配することも控えましょう。
「学校が怖い」という気持ちは、お子さんが勇気を振り絞って打ち明けたことかもしれません。保護者が過剰に反応することで、お子さんが気持ちを打ち明けることをやめてしまう可能性があります。
放っておく
お子さんが保護者に自分のマイナスの気持ちを伝えたということは、お子さんからのSOSでもあります。
過剰に心配することはよくありませんが、放置することもよくない対応です。
お子さんの様子を見て、適度に声をかけてあげてください。日常的な会話を増やしていくことで、本当に話したいことや相談したいことが出てきたときに、保護者に話しやすくなりますし、誰かと話すことでお子さんの孤独感を軽減することができます。
学校が怖いと言われたときに親がすべき対応とは?
お子さんに「学校が怖い」と言われたとき、保護者の方が積極的にするべきことはどんなことでしょうか?
お子さんの話を聞く
まずはお子さんの話を聞いてあげてください。お子さんが「学校が怖い」と伝えてくれたときはもちろん、その後もお子さんの様子を見て会話する機会を増やしていくとよいでしょう。
お子さんの話を聞くときは、「怖いなんて気のせい」「行ってみれば大丈夫」などとお子さんの気持ちを否定せず、「そうなんだね」と受け入れてあげてくださいね。
お子さんの自己肯定感を高める
「学校が怖い」という気持ちは、お子さんが自信を失ってしまうことで生まれる場合もあります。
家のお手伝いでも、スポーツなどの習い事でも何でも構いません。
何かを達成し、感謝されたり認められたりする経験を増やしていくことで、お子さんは自信を持ち、自己肯定感を高めることができます。
お子さんを安心させる
学校が安心できる場ではないからこそ、家ではお子さんが安心できる環境を整えてあげましょう。
家族で言い合いなどして険悪な雰囲気があると、お子さんにとって家も安心できる居場所ではなくなります。
家では心身ともに、安心してゆっくり休めるようにすることで、お子さんの不安が軽減する可能性も高まります。
お子さんが学校に行きたくないときの対処法
「学校が怖い」と思うお子さんにとって、学校は行きたくない場所であるケースが多いです。学校に行きたくないと言い出したら、無理に登校させず、家で休ませてみたり、学校以外の居場所を探してみることをおすすめします。
教室外登校などで様子を見る
教室に入ることが怖いのであれば、保健室に登校するなど、教室外登校で様子を見るという選択肢もあります。
教室外登校ができるかどうかは学校によって対応が異なるため、先生に相談してみてください。
また、教室外登校とは異なりますが、他の学校に転校するという選択肢もあります。特に、特定の人間関係に悩んでいるようであれば、環境を大きく変える転校も有効な手段になるでしょう。
公的機関やフリースクールを利用する
不登校児童生徒数が急増している今、不登校のお子さんが通える学びの多様化学校や教育支援センターなどの公的機関、フリースクールも充実しています。
施設によって、制度や特色や大きく異なるので、お子さんが通える範囲にはどのような施設があるのかをリサーチし、実際に通えそうか、見学・体験に行ってみるとよいでしょう。
【まとめ】
学校が怖いと感じる直接的な原因や間接的な原因、保護者の向き合い方、学校以外の選択肢などをお伝えしました。
「学校が怖い」という気持ちは、多くのお子さんが多かれ少なかれ感じることがある感情です。
お子さんに相談されたら、冷静にお子さんの話を聞いて、その気持ちを受け入れてあげてください。
「怖い」という気持ちから、登校を嫌がるようであれば、無理せず、休ませてあげたり学校外の居場所を探してあげることがお子さんの力になるでしょう。