お子さんが学校でお漏らししてしまったと聞いたとき、保護者は、不安になったり、どうすべきかわからなくなってしまうものです。
お子さんが何か病気にかかっていたり、発達が遅れているのではと心配になる方も多いかと思います。
また、お漏らしの原因や対処法も気になるでしょう。
今回は、お子さんが、学校でどんなときにお漏らししてしまうかや、原因と対処法を解説します。
学校でお漏らししても大丈夫?
お漏らしは珍しいことではない
お子さんが学校でお漏らしをしてしまうと、「うちの子だけではないか」と不安になるかと思います。
しかし、ユニ・チャーム株式会社の実施した、昼間のおもらしに関する実態調査によると、5〜15歳で4.3%の人が昼間のお漏らしの経験があります。
これは、40人学級の場合クラスに1〜2人に相当する割合です。
周りにも、お漏らしで悩んでいるお子さんはいるでしょう。
(*出典1)unicharm|5~15歳までを対象とした「子どもの昼間の“おもらし”に関する実態を調査」
年齢が上がれば自然となくなることも多い
また、特に小学生くらいの年齢においては、成長スピードに個人差が大きいです。
お漏らししてしまうお子さんも、膀胱の機能や排尿のための筋肉が未発達かもしれません。
その場合、年齢が上がり、身体の機能や筋肉が発達すれば、お漏らしも自然と治るでしょう。
ですので、お漏らしをしてしまった事実のみから、「何か大きな病気があるのではないか」と過度に心配しなくても大丈夫です。
不安がある場合は、専門医等の受診も検討しましょう。
学校でのお漏らしがきっかけで不登校になることはある?
とはいえ、学校でのお漏らしがきっかけで不登校になるケースもあるようです。
お子さんが学校でお漏らしをしてしまい、そのことをクラスメイトにからかわれ、学校に行きたくなくなることもあるでしょう。
また、2023年には茨城県の小学校教諭が、トイレの使用を巡って強い口調で指導を行い、児童3人が一時不登校になったり、休みがちになった事例がありました。
一人の保護者からは「先生が怖くて学校にいけない」との相談があり、教諭は児童へ謝罪をしたが、その児童は数か月後に転校を余儀なくされたようです。
(*出典2)東京新聞
お漏らしは珍しいことではありませんが、他の生徒や教員の対応によっては、不登校につながる可能性は否定できません。
どんなときに学校でお漏らししてしまう?
お子さんはどんなときにお漏らしをしてしまうのでしょうか?
原因が分かれば対策も可能です。ここではいくつかの代表的なケースをご紹介します。
トイレに行くことを忘れたり、トイレに意識が向かない
お漏らしの理由として特に多いのが、トイレに行くのに意識が向かないことです。
お子さんが遊びなどに熱中して、トイレに行くのを忘れてしまい、尿意を感じたときにはもう手遅れとなります。
こうしたお子さんに関しては、トイレに行く時間を決めるなど、トイレに行くことをきちんと習慣化させることが効果的でしょう。
学校の帰りに家まで我慢できない
家に帰るまで我慢できないのも、お漏らししてしまう子によくあるパターンです。
家が近づくと急にトイレに行きたくなるという経験のある人もいると思いますが、普通はそこで帰宅まで我慢できます。
お子さんの場合、無意識のうちに、トイレの直前に、頭の中で排尿する指令を出している可能性があります。
あるいは、学校で、何らかの理由でトイレに行けていなかったり、トイレに行くのに抵抗感を感じているかもしれません。
過度にトイレに行くのを我慢してしまうと、膀胱に炎症を起こす可能性もあります。
学校でトイレに行けているか、お子さんに確認してみましょう。
先生にトイレに行きたいと言い出せない
先生にトイレに行きたいと言い出せないこともあります。
普段から自分の思ったことをなかなか言えないお子さんの場合は、特に注意が必要です。
また、担任の先生が怖くて発言できない場合もあります。
授業中にお漏らししてしまうお子さんは、このパターンの可能性が高いでしょう。
こうした場合は、担任の先生に相談してみるのもおすすめです。
尿意が急に来てトイレに間に合わない
尿意が急に来て間に合わないこともあります。
大人の場合、急に尿意を感じても、多少我慢できますが、膀胱機能などが未発達なお子さんの場合、そこで我慢しきれないことがあるのです。
こちらも、お子さんの成長とともに治っていくものでしょう。
すぐにできる対策としては、時間を決めてトイレに行ったり、水分を一気に摂らないように促しましょう。
緊張したりストレスがあると漏れる
小学校高学年や中学生など年齢が上のお子さんに多いのが、緊張やストレスがある際のお漏らしです。
このケースでも、膀胱や排尿に関わる筋肉等に問題がある可能性もあります。
しかし、尿意が我慢できなくなるほどの大きな緊張やストレスがあるのだとすれば、そちらを軽減するアプローチも必要です。
具体的にどんな場面で漏らしてしまうのか、聞いたうえで対策しましょう。
原因がはっきりしない場合は、専門医等に意見を求めることも必要です。
お漏らしの直接的な原因とは?
お漏らしをしてしまう直接的な原因はどのようなものがあるのでしょうか。
排尿機能の未発達・低下
まずは、排尿機能の未発達・低下です。
膀胱の機能、排尿のための筋肉などが未発達の場合、お漏らしをしてしまうことがあります。
2歳後半から3歳にトイレトレーニングを始めるのが平均的ですが、お子さんの成長速度には個人差があるので、発達の速度が遅い子もいます。
また、ストレスなど何らかの原因により、排尿機能が一時的に下がることもあります。
しかし、尿路性器の先天奇形などの異常が原因の場合もあるので、心配な方は、専門医の診察を受けるのがおすすめです。
腎臓、背部・骨盤の神経の問題
腎臓、背部・骨盤の神経に何らかの問題があり、お漏らしをしてしまう場合もあります。
神経の障害としては、二分脊椎があります。
これは、胎児期に脊髄や脊椎の癒合不全が生じる先天異常です。
あるいは、腎障害などの場合もあります。
複数の要因が絡み合ってることも多いので、安易に何が原因かを決めつけるべきではありません。
不安な方は、専門医に診てもらうと良いでしょう。
ストレス等、精神的な問題
昼間のおもらしでは、明らかな神経や形態の異常がないこともあります。
こうした場合、ストレス等の精神的な面が原因かもしれません。
こどもの排尿障害の原因やメカニズムには、未解明の部分も多いです。
また、「お漏らしのストレスが原因で、またお漏らししてしまう」という悪循環に陥ることもあります。
「誰でも失敗はするものだから大丈夫」など、お子さんの心の負担を取り除いてあげるような声かけをしましょう。
子どもがお漏らしをしてしまったらどうすればいい?
お子さんがお漏らしをしてしまったとき、保護者はどのように対応すればよいのでしょうか。
小学生高学年になると自然によくなることが大半
先ほどから述べてきたように、お漏らしの原因が発達の遅れであることも多いです。
ですので、お子さんが小学校低学年の場合は、年齢が上がるとともに自然に治る場合もあります。
まずは、後半で解説している「普段からできる対処法」を実践しつつ、様子を見ることも考えましょう。
あまりに言うと逆効果
お子さんがお漏らしをしてしまうことに対し、叱ってしまいたくなる保護者もいるかもしれません。
しかし、お子さんに強い言葉をかけると逆効果になってしまうかもしれません。
お子さんも、自分のお漏らしについてストレスを抱えています。
また、治したいけど上手くいかない葛藤もあるでしょう。
そうした中で、お子さんを叱ると、逆にストレスを増やしてしまい、それがお漏らしの原因となってしまうこともあります。
お子さんには、ストレスや不安を和らげるような言葉をかけてあげましょう。
病気の可能性もあるので専門医の受診も
年齢が上がっても治らない場合、専門医の受診も検討しましょう。
また、小さなお子さんであっても、単に成長が遅れているのではなく、神経や排尿機能に異常がある可能性もあります。
対処法を試しても効果がない、あるいは不安がある場合は、ぜひ病院に行ってみましょう。
お漏らしは、様々な原因が絡み合って起こるので、専門医からお子さんにあったアドバイスを受けるのが効果的です。
普段からできる対処法は?
とはいえ、なるべくお子さんがお漏らしをしないよう、何かしらの対処法は打っておきたいですよね。
ここでは、普段からできる簡単な対処法をご紹介します。
トイレに行くタイミングを決める
すぐにできる対処法として真っ先にあげられるのが、トイレに行くタイミングを決めることです。
例えば、以下のように、行く時間を決めましょう。
- 朝起きたらすぐ行く
- 〇時間目と〇時間目の間の休み時間に行く
- 昼休みに行く
- 習い事に行く前に行く
「〇時」と決めるよりも「授業と授業の間」などにした方が、忘れにくく習慣化させやすいです。
東京女子医科大学病院泌尿器科によると、少なくとも起床から寝るまでの間に6回はトイレに行く習慣をつけるべきだそうです。
これを目安にトイレに行くタイミングを考えましょう。
(*出典3)東京女子医科大学病院 泌尿器科|尿失禁について
水分をこまめに摂る
水分をこまめに摂ることも大切です。
一度にまとめて大量に摂ってしまうと、後から急に尿意を感じやすいです。
トイレに行くタイミングと同様に、「〇時間目と〇時間目の間に水分を摂る」など忘れないような工夫をしましょう。
家にいる場合も、保護者が水分補給を促しましょう。
オムツや軽度失禁パッドをつける
上の2つはお漏らしを防ぐための日常的な改善方法でしたが、こうした方法は成果が出るまでに時間がかかります。
しかし、直近で学校や習い事などに行く予定がある方もいるでしょう。
そこで、一時的な対策としておすすめなのが、オムツや軽度失禁パッドです。
外から付けていることはわかりづらいですし、物理的な対策をすることで、お子さんもお漏らしへの不安が和らぐかもしれません。
まとめ
今回は、学校でお漏らししてしまういくつかのケースと対処法などについて解説しました。
保護者の方も、お子さんのお漏らしについて悩みが多々あるかと思います。
しかし、当然ながらお子さん自身も、お漏らしで大きなストレスや不安を感じているでしょう。
まずは、この記事を参考にして、お子さんの精神面のケアに努めつつ、お漏らしの対策をしましょう。
その上で、必要に応じて、専門医の受診も検討しましょう。
この記事の内容が少しでも役立ちますと幸いです。
【出典一覧】
*1 unicharm|5~15歳までを対象とした「子どもの昼間の“おもらし”に関する実態を調査」
参考箇所:お漏らししてしまううちの子は大丈夫?
*2 東京新聞
参考箇所:学校でのお漏らしがきっかけで不登校になることはある?
*3 東京女子医科大学病院 泌尿器科|尿失禁について
参考箇所:普段からできる対処法は?