スクールカウンセラーとは、生徒自身や保護者から、学校生活やお子さんについての悩みなどの相談を受ける役割の人です。全国の小学校・中学校・高校の約70%に配置されています。
スクールカウンセラーに相談してみたくても、詳しく知らないことで、安心して相談できないと思います。
そこで今回は、スクールカウンセラーとはどんな人なのか・相談するメリットや相談内容・相談する方法・相談するときのポイントなどを解説していきます。
悩みを抱えている生徒や保護者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
スクールカウンセラーとは?
スクールカウンセラーは、学校において「児童の心理に関する支援に従事する人」です。
児童生徒だけでなく、保護者や教職員からの相談にものることがあるため、「学校で生活を送る関係者の広い相談役」というイメージが適切かもしれません。
スクールカウンセラーは、近年のいじめの深刻化や不登校児童の増加など、児童の心に関する問題を解決するために配置され始めました。
資格・学校での位置づけ
スクールカウンセラーは、学校の職員ではあるものの、常に他の教職員と情報を共有する必要はなく、外部性を持った専門家という扱いです。問題の解決に際して、教員と連携することもできますし、相談者が秘密にしたいことは、第三者として守秘義務を守ってくれます。
誰でもなれるわけではなく、「心理に関しての専門的な知識・技術を有する者」でなければなれません。具体的には、臨床心理士や精神科医の資格が必要です。
(*出典1)文部科学省|2 スクールカウンセラーについて
職務内容
スクールカウンセラーの主な職務内容は以下の通りです。
- 児童生徒へのカウンセリング
- 教職員に対する助言・研修
- 保護者に対する助言・援助
- ストレスチェックや授業観察等の予防的対応
- 事件・事故等の緊急対応における児童生徒等の心のケア
(*出典2) 文部科学省|スクールカウンセラー・スクールロイヤーについて
またこの他にも、教職員や児童生徒への講話を行うこともあります。
スクールカウンセラーは、学校に所属するあらゆる人をカウンセリングの対象としています。相談にきた児童生徒や保護者の悩みを聞くだけでなく、自ら児童生徒と関わりにいき、配慮が必要な子を見つけて助けるのも仕事です。
スクールカウンセラーは学校の相談体制をコーディネートすることもあり、学校の教育相談体制における大きな役割を果たしています。
スクールカウンセラーに相談するメリット
スクールカウンセラー以外にも、悩みを相談できるところはあります。その中で、スクールカウンセラーを選ぶメリットを解説します。
お金がかからない
スクールカウンセラーへの相談は、料金がかかりません。
他にも、「教育支援センター」「教育相談所」「児童相談所」などの公的な相談先は、カウンセリングにかかる費用はありません。
しかし、フリースクールや医療機関・民間のカウンセリング施設となると、相談は有料です。資格を持ったカウンセラーが対応する場合、民間のカウンセリング施設は高額なところも多いです。
その点、スクールカウンセラーであれば、費用の負担なくカウンセリングを行ってくれるため、相談のハードルが低く、継続的な相談もしやすいでしょう。
学校との密な連携が可能
スクールカウンセラーに相談するメリットとしては、学校との協力体制を築けるところです。
学校でお子さんの様子を見て、普段の様子や変化を把握したり、実際に関わることで、お子さんへの理解を深めることができます。また、教員と相談して、不登校の生徒が保健室登校から始めてみる、などの措置をとることも可能です。
お子さんがどんな問題をかかえているのかが分からない場合も、スクールカウンセラーが学校で生徒と関わることで、問題を発見・解決できることがあるでしょう。
守秘義務を守りつつも、必要なときには学校と連携できるのがスクールカウンセラーのメリットです。
第三者の立場で相談にのってくれる
これは、担任などの学校の教職員に相談する場合との違いです。
スクールカウンセラーは学校職員ではあるものの、外部性を持った専門家として活動します。
児童生徒や保護者など、相談者の守秘義務はきちんと守り、学校外の第三者の立場から悩みを聞いてくれます。(ただし、児童生徒に危険が及ぶ可能性がある場合は、学校への報告義務があります。)
教師との関係が悪い場合や、周りに知られたくない家庭の事情があるといった場合でも、スクールカウンセラーなら安心して相談することができるでしょう。
スクールカウンセラーにはどんなことが相談できる?
では、スクールカウンセラーにはどんなことが相談できるのでしょうか。児童生徒自身の相談なら、どれも対応の範囲ですが、保護者の方はどんな相談ならしてもいいのか迷うことがあると思います。ここでは、実際の相談例も交えて解説していきます。
スクールカウンセラーに相談できること
よくある相談内容
令和2年のスクールカウンセラーへの相談内容の割合は以下の通りです。
①不登校(24.9%)
②いじめ(0.8%)
③暴力行為(0.5%)
④児童虐待(0.8%)
⑤友人関係(7.6%)
⑥貧困の問題(0.1%)
⑦非行・不良行為(0.7%)
⑧家庭環境(9.3%)
⑨教職員との関係(1.5%)
⑩心身の健康・保健(15.4%)
⑪学業・進路(6.8%)
⑫発達障害等(11.0%)
⑬その他(20.7%)
(*出典3)文部科学省|スクールカウンセラー等活用事業に関するQ&A
不登校や心身の健康、家庭環境といった相談が多いですが、「その他」の割合も高く、相談内容は多岐に渡ります。
どんな内容でも、なにか相談したいことがある場合は、一度相談してみてはいかがでしょうか。
実際の相談事例
ここでは、実際に相談されスクールカウンセラーを活用した方の事例を紹介していきます。
<事例>
中学1年生男子の例。
2学期後半より、体調不良が多くなり、冬休みにゲームに熱中してしまい課題が終わらなかった後ろめたさもあり、3学期から不登校に。
担任は当初、家庭訪問や保護者との電話連絡を熱心に行っていた。しかし、スクールカウンセラーと保護者と面談したところ、「本人も先生が来る時間が近づくと落ち着かない」「自分も仕事中に電話対応したりするのが正直キツイ」という家庭状況が発覚。
その後、家庭訪問の頻度を減らし、保護者との連絡は週末に保護者が訪問する形式で行うという方法を共有した。やることが明確になったことで、担任と保護者の双方にとって、心理的余裕を生じるきっかけとなった。
生徒自身とのカウンセリングも始まった。「欠席が多くなってしまった。今更戻れない…」という声をきき、戻りたい意思があるのかを確認すると、「友達と話すのは楽しい」「進学のために勉強しないと」という希望や目標が語られた。
その後、友達との関わりや、勉強に少しずつ取り組み、様子をカウンセリングで確認していった。中2になると保健室登校を始め、教員との関わりが増え、夏休み中に登校して勉強することで周りに学習進度が追いついた。
本人に自信がついたことで、2学期から教室復帰でき、フォローアップ面接でも安定している様子だったため、カウンセリングは終結した。
(*出典4)文部科学省|各都道府県・指定都市の取組の概要
事例はインターネット上にたくさん載っていますので、利用を迷っている方は、自分と似た事例がないか探してみるのも一つの手です。
スクールカウンセラーに相談する方法は?
多くの学校では事前予約が必要
スクールカウンセラーの利用の手順は、児童生徒と保護者では少し違います。
児童生徒がカウンセリングを受ける場合は、担任などを通して予約が必要な学校と、カウンセラーの待機室に生徒が出向いてその場でカウンセリングを受けられる学校があります。
保護者がカウンセリングを受ける場合は、基本的に担任などの教員を通じて予約しなければなりません。しかし、予約の際に相談内容を教員に明らかにする必要はありません。
スクールカウンセラーは週1回程度の勤務であることが多いため、予約なしで学校に行ってもいない確率が高いです。勤務日は、学校に問い合わせたり、スクールカウンセラー自身が配布している手紙を見ると確かめることができます。
わざわざ学校に行ったのに相談できなかったということがないよう、予約をとってから行くようにしましょう。
スクールカウンセラーに相談する際のポイント3つ
勇気を出してスクールカウンセラーと相談するなら、より有意義な時間にしたいところです。
ここでは、カウンセリングがスムーズに進み、的確なアドバイスをもらうためのポイントを3つ紹介します。
1、相談内容のメモを事前に作っておく
いざカウンセリングになると、何から話していいか分からず、頭が真っ白になってしまう人もいるかもしれません。そんなときでも自分の意見をしっかり伝えられるよう、事前に相談内容のメモを作っておくことがオススメです。
上手に話せなくても大丈夫です。
メモを見せながら話せば、スクールカウンセラーはしっかり意図を汲み取ってくれます。
事前にメモを作ることで、自分の中で考えが整理された状態で相談に臨めるという利点もあります。
2、自分が今後どうしたいのかを考えておく
スクールカウンセラーは、専門家目線で子どもの気持ちを教えることはできますが、今後どうしていくかを決めるのはあくまで相談者自身です。
スクールカウンセラーが答えを教えてくれるわけではありません。
自分や子どもがどんな風になりたいのかを伝えると、その方向に進めるようにカウンセラーは支援してくれます。
もちろん、「今後どうすればいいか分からない」「とりあえず話を聞いてもらいたい」という方もいるでしょう。そんな人は、思っていることをそのまま伝えれば大丈夫です。
「一緒に考えてほしい」と言えば、カウンセラーからさまざまな提案をしてくれるでしょう。
受身になりすぎず、自分の考えをしっかり伝えることが重要です。
3、守秘義務の範囲を明確にする
スクールカウンセラーは問題解決のために、教職員の人と連携して動くことも多いです。
その際は、相談内容が他の人たちに共有されることになります。
家庭事情や、ご自身のことなど、他の人に知られたくないことがある場合は、スクールカウンセラーにしっかり伝えるようにしましょう。カウンセラーには守秘義務があるので、秘密を守ったうえで連携をとってくれます。
秘密にしてほしい内容を明確にすると、カウンセラーも動きやすいでしょう。
しかし、子どもに危害が生じるような内容はカウンセラーにも報告義務があります。基本的には秘密を守ってくれますが、例外があることにも留意しましょう。
まとめ
この記事では、スクールカウンセラーとはどのような人なのか・相談するメリットや相談内容・相談する方法・相談するときのポイントなどを解説しました。
スクールカウンセラーは資格を持った専門家として働く、非常勤職員です。学校職員でありながら、第三者の専門家の目線からカウンセリングすることができます。
スクールカウンセラーへの相談は費用がかからず、他の相談機関と違って、学校と連携してのサポートが可能です。
スクールカウンセラーへの相談は事前予約が必要な場合が多いです。事前にメモをつくったり、今後の方向性を考えておくなどすると、より有益なカウンセリングになるでしょう。
この記事が、スクールカウンセラーに相談するか悩んでいる方の参考になりますと幸いです。
【出典一覧】
*1 文部科学省|2 スクールカウンセラーについて
参考箇所:スクールカウンセラーとは?
*2 文部科学省|スクールカウンセラー・スクールロイヤーについて
参考箇所:スクールカウンセラーとは?
*3 文部科学省|スクールカウンセラー等活用事業に関するQ&A
参考箇所:スクールカウンセラーにはどんなことが相談できる?
*4 文部科学省|各都道府県・指定都市の取組の概要
参考箇所:スクールカウンセラーにはどんなことが相談できる?