2022年度の不登校児童生徒数は29万9048人で過去最多となりました。
この数字は、不登校児童生徒の割合が、小学校で1.7%(約59人に1人)、中学校で6.0%(約17人に1人)となる数字です。
今や不登校は珍しいことではなく、誰でもなり得るものになりました。
本記事では、不登校のお子さんを持つ保護者の
「不登校の子どもをどうサポートすればいいか知りたい」
「不登校を改善するための具体的な方法を知りたい」
「不登校に対するカウンセリングや専門機関の利用方法を知りたい」
「不登校の子どもの将来への懸念点や対策を知りたい」
といった疑問にお答えしていきます。
不登校の解決策がわからないという悩みをお持ちの保護者は、ぜひ参考にしてくださいね。
不登校の原因と背景は?
不登校の定義
文部科学省が定義する不登校の条件は、
「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者」(*出典1)
となっています。
不登校の原因は?
不登校の原因は多岐にわたり、大きく3つに分類されています。
・学校が原因
・家庭の問題が原因
・学校・家庭に関係のない、本人の問題が原因
詳しくは、子どもが学校に行かない!学校に行けない理由や対処法を紹介(リンクを貼る)
で紹介していますので、併せてご覧ください。
不登校は改善できる?具体的なサポート法を紹介
では、不登校のお子さんに対して、保護者はどのようなサポートをすればよいのでしょうか?
ここからは、不登校を改善するために保護者ができる4つのサポートを紹介します。
生活リズムを保つ
不登校のお子さんにとって、生活リズムを保つことは非常に重要です。
学校に復帰するうえで、規則正しい生活習慣は欠かせません。生活リズムは一度昼夜逆転すると治すのが難しく、特に注意する必要があります。
生活リズムを保つ方法としては
・毎朝決まった時間に起きる
・一日三食を意識する
・事前に時間を区切って予定を決めておく
などがあります。
昼夜逆転についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
▶不登校の中高生は昼夜逆転しがちなのはなぜ?治し方や注意点を親子の両視点で解説
毎日コミュニケーションをとる
お子さんが学校復帰を目指すうえで家族とのコミュニケーションは大切です。
本来、お子さんにとってご家庭は一番居心地の良い、安心できる居場所です。
不登校のお子さんは、学校に自分の居場所がないと感じ、自己肯定感が低下してしまっています。
そんなお子さんに「自分にも居場所があるんだ」と感じてもらうために、毎日コミュニケーションをとることが、復帰への大きな一歩になるでしょう。
コミュニケーションは些細なものでも構いません。「おはよう」「おやすみ」など、日常の挨拶だけでもお子さんは嬉しいものです。
少なくとも一日一回はコミュニケーションをとるよう心がけましょう。
焦らない
お子さんの学校復帰に対して焦ってしまうと、過干渉になり、お子さんにストレスを感じさせてしまう可能性があります。
学校復帰を目指すうえで、お子さんにストレスをできる限り与えないことが重要です。
「学校に登校さえすればいい」という気持ちを保護者の方が少しでも持っていると、お子さんはその気持ちを敏感に読み取り、無理をしてしまう可能性があります。
無理をすることでお子さんはストレスを感じ、より学校への復帰が遅れてしまいます。
焦らず、落ち着いた気持ちでお子さんと接してあげましょう。
お子さんの心身の健康を第一に考える
「お子さんの心身の健康を第一に考える」ことも大切です。
不登校は心身の不健康から生じるものです。不登校になったということは、お子さんはさまざまなことに悩み、心を消耗させています。
そんなお子さんには、ストレスを緩和し、リフレッシュする機会が必要です、
生活リズムを整えるほかにも、お子さんが嫌がらない場合には外出を促したりしてみましょう。
不登校について、学校はどの程度対応してくれるの?
学校による不登校支援は、連携する「教育支援センター(適応指導教室)」への通所サポートがメインになります。
教育支援センターでは、不登校のお子さんに対する通所指導(カウンセリング、教科指導、体験活動など)を行っています。
教員免許を保持する職員が個別指導を行うことが多いため、お子さんに無理のないペースで通うことができます。
精神科医や臨床心理士などのカウンセリングが設けられていることも多く、その点も安心です。
また、要件を満たせば、教育支援センターの利用が学校出席扱いになります。
もし、お子さんが完全な不登校になる手前の状況で、登校したりしなかったりしている場合は、スクールカウンセラーを中心としたカウンセリングによる対応を行います。
このカウンセリングにより、学校の対応の決定や保護者への連絡とアドバイスをします。
たとえば、カウンセリングから学業不振による行き渋りであることがわかれば、別室登校を進め、お子さんのペースに合わせた補習授業を行うなどのサポートをすることもあります。
どの情報を信用して良いか分からないときは、専門機関を利用しましょう
不登校は、お子さんと保護者だけで解決することが難しい問題です。
無理に自分たちだけで問題に対処しようとすると、不登校が長引いたり、お子さんの心身の状態がさらに悪化するなど、解決から遠ざかる恐れもあります。
また、不登校のお子さんへの対応をネットで検索してみても、情報がありすぎて何を参考にすればいいかわからないことも多いでしょう。
不登校支援の専門機関はその道のプロなので、さまざまなケースへの対応経験があります。気軽に相談してみてくださいね。
主な相談先を下記にご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
①教育センター・教育相談所
各教育委員会が、教育相談を行うための相談窓口として設置している公的機関です。
不登校に関する悩みを相談できるほか、必要に応じた情報を提供してもらえたり、カウンセリングや医療機関などの関係機関との連絡調整を行ってもらえます。
②教育支援センター(適応指導教室)
不登校に関する支援を行うために教育委員会が設置している公的機関です。
保護者の悩みを相談できるほか、不登校のお子さんに対する通所指導も行っています。
③子どもの人権110番
不登校やいじめなどの相談を電話で受けつけています。法務局員や人権擁護委員が相談に乗ってくれます。
☎0120-007-110
④24時間子どもSOSダイヤル
夜間休日問わず24時間いつでも利用できる電話相談窓口です。電話は、所在地の教育委員会の相談機関に接続され、さまざまな悩みや不登校に関する相談もできます。保護者も利用できます。
☎0120-0-78310
⑤フリースクール
不登校のお子さんに対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設です。 規模や活動内容は施設によって大きく異なりますが、不登校のお子さんを対象とした施設であるため、不登校に関する知見があり、長年不登校のお子さんと関わってきた専門カウンセラーが相談にのってくれる可能性も高いでしょう。
学校への復帰はもちろん、問題解決へのアドバイスをもらえる可能性もあります。
⑥児童相談所
子どもの一時保護などでよく知られている児童相談所ですが、お子さんや保護者からのさまざまな相談に応じ、適切な助言や援助を行っています。
⑦子供家庭支援センター
市区町村における子どもと家庭に関する総合相談窓口です。18歳未満の子どもや子育て家庭に関するあらゆる相談に応じています。児童相談所とも連携しています。
⑧ひきこもり地域指導センター
社会福祉士や保健士、臨床心理士、引きこもり支援コーディネーターなどが在籍しており、学校復帰に向けた支援を受けることができます。
⑨青少年センター
青少年育成センターや青少年指導センター、青少年相談センター、少年センターなど、地域の活動内容に応じてさまざまな名称で呼ばれていますが、不登校やひきこもりといった問題に、精神医学や心理学の視点からケアを行っています。
不登校を相談する専門機関は、ご紹介したとおりたくさんあります。専門機関を活用して、ご自身に合った、最適な相談先をみつけることが大切です。
不登校を経験した保護者の声は?
お子さんが不登校になった経験を持つ保護者の声を集めました。
お子さんが不登校のときにやってよかったこと
「学校に行くことにこだわらず、『せっかく子どもが家にいるのだから、子どもと過ごす時間を楽しんで過ごそう』と気持ちを切り替えました。当時は『本当にこれでいいの?』と不安もありましたが、平日に遊びに行ったり旅行をしたりできたのは、良い思い出です」
「家で過ごす時間を充実させるために、家庭菜園を始めました。コミュニケーションのきっかけになりましたし、野菜や植物が育っていく様子に子どもも元気をもらっていたように感じます」
「不登校が長期化してきたタイミングでフリースクールに通わせました。学校の人間関係に悩んでいた娘も、フリースクールでは気の合う友人に出会えて、楽しんで通うようになりました」
「オンラインの家庭教師を利用したところ、学習への不安感がなくなったのか、家でも勉強する時間が増え、しばらくして再登校への意欲も見られるようになりました」
後悔していること
「不登校の初期段階に『学校に行くべき』という思いが強すぎました。子どもを追い込んでしまったので、学校に行かない選択肢もあるということを知っておきたかったです」
「学校に行かなくなったことにうろたえてしまい、子どもに適切なサポートができませんでした。静観したことにより、夜中にオンラインゲームをして日中寝るようになってしまい、昼夜逆転が続いています」
「塾や習い事を始めるなど、外出するきっかけを作って家族以外の人とのコミュニケーションをとらせておくべきでした。学校に行かなくなって外出する理由がなくなり、ひきこもり状態になってしまいました」
不登校の悩みを解決するためのポータルサイト「ツナグバ」の「Q&A」では、不登校に関する質問や相談に対し、同じ悩みを抱えた経験者や専門家からアドバイスを受けることが可能です。
ぜひ気軽にご活用ください。
不登校のお子さんの将来はどうなる?
「不登校が今後の子どもの人生にどのような影響を与えるのだろうか」と不安に感じる保護者も多いと思いますが、不登校経験があっても就職は可能です。
人事担当者は不登校経験の有無よりも、人間性や価値観、どのような経験をしてきたのかを見ています。
お子さんが、しっかりと自分の強みや過去の経験について理解し、それを適切に表現できるようにしておくことがポイントになるでしょう。
しかし、応募条件が「高校卒業以上」となっている求人も少なくないため、最終学歴が募集条件を満たしているかを確認することも重要です。
選択肢を広げるために、通信制高校や定時制高校、高等学校卒業程度認定試験で高卒資格取得を目指すのもおすすめです。
また、高校進学には中学校での出席日数が条件になる場合があります。
近年の不登校児童生徒数の急増に伴い、学校に登校せずとも一定の条件をクリアすることで出席扱いにする制度の拡充が進んでいます。
オンラインフリースクール「シンガク」でも、出席扱い制度の申請サポートをしています。
学校に行かなくても、進学も就職も諦める必要はありません。
お子さんが不登校になっても、保護者ができるサポートをして、焦らずにお子さんを見守ってあげてくださいね。
【出典一覧】
*出典1 文部科学省「不登校の現状に関する認識」
参考箇所:不登校とは
*出典2 文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」
参考箇所:不登校の要因