文部科学省の調査によると、令和3年度における小学校の不登校者数は8万1,498人、中学生の不登校生徒数は16万3,442 人と、過去最多を記録しました。
新型コロナウイルス感染症の流行などの背景もあり、家庭環境や学校生活、交友関係が変化したことも影響として考えられています。
(*出典1)令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
このような状況の中、お子さんたちの第二の居場所として注目されているのが「フリースクール」です。
フリースクールとは?
フリースクールは民間の教育機関で、主に不登校や引きこもりのお子さんに対して、学習や交流などの機会を提供し、”第二の居場所”として支援をおこなっています。
文部科学省も増加する不登校児童についての問題を重く受け止めており、令和元年に行われた「不登校児童生徒への支援の在り方」の議論では、フリースクールなどの民間機関との連携の重要性についても認めています。
この記事では、不登校や引きこもりのお子さんと保護者のサポートを行っているフリースクールについて、基本的な情報から選び方・進路を考えた時の選び方まで解説していきます。
フリースクールのカリキュラムについて
半数以上のフリースクールが「学習カリキュラムを決めていない」と回答しています。さまざまな状況にある不登校のお子さんに対応するため、あえて決めていないフリースクールが多いのかもしれません。
フリースクールによっていくつかの方針がありますが、不登校や引きこもりの子どものための第二の居場所というスタンスは共通しているといえるでしょう。
(*出典2)民間の団体・施設との連携等に関する実態調査Q&A
フリースクールの教育内容について
フリースクールで行われる具体的な活動内容として、多くの学校で「個別の学習支援」が行われているようです。また、「相談・カウンセリング」も実施率が高く、各ご家庭に対して向き合う姿勢を見せるフリースクールがほとんどであるといえるでしょう。
(*出典3)民間の団体・施設との連携等に関する実態調査Q&A
サポート校との違いは?
サポート校とは「高等学校卒業程度認定試験(高認試験)」の合格を目指すための個人に対して学習支援を行う塾のことです。
活動内容については、学習塾のように学習のみを提供するタイプから、既存の学校と類似した授業から部活動・行事開催まで行うようなタイプまでさまざまなものがあります。
フリースクールは学歴になる?
フリースクールは学校機関ではないため、卒業しても最終学歴にはなりません。
あくまでも卒業認定は母校が行うことになります。履歴書などに記載する学校名もフリースクールではなく母校です。
※就職面接などでフリースクールに言及するのは自由といえるでしょう。
フリースクールから進学はできる?
義務教育課程(小学生・中学生)の場合
フリースクールでの活動が出席扱いとされれば進学可能です。
義務教育期間の不登校や引きこもりのお子さんが進学するためには、出席日数・内申点の評価で不利になるケースがあります。
その場合、フリースクールでの活動を「出席扱い」にしてもらう必要があります。その際は、母校の校長がその認定を判断している点に注意が必要です。
フリースクールの教育でも出席扱いとして認められる事例はありますが、いくつかの要件に当てはまり、さらに校長の認可が必要になります。
詳しい要件などについては以下の記事をご覧ください。
▶フリースクール・ICTでの学習は出席扱いされる?要件やフリースクール選びのポイントを解説!
高校生の場合
大学への進学を希望する場合は「高等学校卒業程度認定試験(高認試験)」に合格する必要があります。
逆にいえば、高校を中退したとしても高認試験に合格さえしてしまえば大学受験は可能です。
ですので出席日数が大学受験に不利に働くことはありません。しかしながら学校での授業を受けていないことで基礎学力で不利になる可能性はあるでしょう。
不登校や引きこもりのお子さんが大学受験を検討する場合には、以下記事を参考にしてください。
▶不登校でも大学受験はできる?入学資格、受験勉強のポイント、保護者ができることを解説!
フリースクールの学費は?
フリースクールの月額費用については「10,001円~30,000円(38.2%)」「30,001円~50,000円(36.3%)」がボリュームゾーンです。
※全体の平均額は約33,000円
フリースクールを選ぶ観点として、月額費用と活動内容、進学を希望する場合は出席扱い認定の実績といった点を見ることをおすすめします。
(*出典4)小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査
フリースクールの種類について
フリースクールは通学するタイプと、オンラインで活動するタイプがあります。
それぞれの概要と特徴を説明します。
通学型のフリースクール
既存校と同様に、フリースクールに登校して活動を行っていくタイプです。週5日登校するものから、週1日登校など様々なコースがあるフリースクールもあるようです。
通学型フリースクールの特徴としては、先生たちや同じような境遇のお子さんたちとのリアルなコミュニケーションが取れる点です。
将来や進路を考えたときに、避けては通れない人とのコミュニケーションが取れる部分は魅力的です。
オンラインフリースクール
その名の通り、オンライン上で学習機会の提供や先生・お子さんたちとコミュニケーションを行うフリースクールです。
メタバースを利用するなどして、お子さんたちが楽しみながらワイワイと学んでいけるようなカリキュラムを組んでいるフリースクールもあるようです。
様々な理由があり学校に通えないお子さんも多い中、自宅に居ながら参加できる第二の居場所として注目が高まっています。
不登校になると出席日数の観点で進学が不利になるケースもあります。
オンラインフリースクールで活用する教材によっては出席扱い要件を満たす場合があるので、進学を検討する場合は取り扱い教材をチェックするのがいいでしょう。
フリースクールにはさまざまな方針・形態がある
不登校や引きこもりのお子さんたちの第二の居場所としてあるフリースクールですが、その活動方針はさまざまです。
ここではタイプ別にそれぞれの特徴をご紹介していきます。
個別指導型
進学や学校への復帰を臨むお子さんや保護者のために、学習指導をメインに行うタイプです。学齢と学校の授業に応じた内容の学習指導が行われるため、基礎学力を付けていくことができます。
学習指導だけでなく、先生や同年代のお子さんと過ごす中で安心感や自信を得られるような配慮をしているフリースクールも見受けられます。
オルタナティブ(代替)教育型
子どもの自主性を伸ばすことを目的とした、独自の教育方針に基づき活動するフリースクールです。
学校教育法等の法的根拠がない非正規の教育という立ち位置ですので、基本的にはオルタナティブ教育型フリースクール単体で正規の卒業資格は認定されません。
進学したい場合は、正規課程の履修を併用したり、卒業認定試験に合格する必要があります。
総合学習型
わかりやすくいえば、学習指導とオルタナティブ教育のハイブリッド型です。
基礎学力を付けるための学習指導を行いつつ、お子さん同士のコミュニケーションを通して社会性などを身に付けるための行事やイベントを実施することなどがあります。
どのフリースクールを選んだとしても、活動実績が出席扱いとなるかどうかは、フリースクールの過去実績などに左右されるでしょう。
事前にフリースクールでの活動が出席扱いとして認められた前例があるかどうかを事前に調べる必要があるでしょう。
フリースクールを選ぶ3つのポイント
フリースクールには様々な形態がありますが、それ以外にも選ぶ際に押さえるポイントがあります。
お子さんの意向と合っているか
フリースクールの指導方針や特徴は様々ありますが、最も重要と言えるポイントが、お子さんが「通いたい」と思えるかという点です。
不登校の原因によっては通学や対人コミュニケーションが難しい可能性もあります。その点を把握せずにフリースクールに無理やり通わせても継続が難しいかもしれません。
まずその点を確認した上で、フリースクールごとの雰囲気や、先生・講師たちとの相性などWEBで確認できる以外の情報をお子さんと一緒に確認していきましょう。
通学型であれば見学をしたり、オンラインであれば無料体験をすることで、実際に通えそうかどうか判断することができます。
活動内容・教育方針が合っているか
お子さんがフリースクールに通う意向が確認できたら、具体的に候補を選んでいきます。
フリースクールはお子さんの第二の居場所になり、過ごす時間も増えます。そのため、フリースクールでの活動内容・教育方針を軸として選んでいくのがいいでしょう。
また、「最終的には復学したい」「勉強の遅れがでないようにしたい」といった目的が達成できるカリキュラムなのかもチェックしましょう。
運営元が信頼できるか
フリースクールは特に資格や審査もなく開業ができます。そのため、運営内容に一貫性がなかったり、ずさんな対応をしている事業者もいるかもしれません。
ですので、フリースクール運営元が信頼できる団体かどうかは利用前に必ず確認することをおすすめします。
運営元がすでに別事業で実績のある企業であったり、WEBサイトで活動内容や過去の実績などを公開している事業者は信頼できる可能性が高いといえるでしょう。
学齢別にフリースクールを選ぶポイント
フリースクールは学齢による区別をしていないケースも見受けられます。
とはいえ、学齢別にフリースクールを選ぶ際に重視したいポイントは変わってきますので、その部分を説明していきます。
小学生・中学生のお子さんがフリースクールを選ぶポイント
義務教育課程のお子さんがフリースクールを選ぶ場合、将来的な復学や進学に備え、フリースクールでの活動が「出席扱い」として認められるかどうかを基準に選ぶ方が多いようです。
その条件を満たすフリースクールの中から、アクセスや活動内容・先生たちの雰囲気から、最もお子さんが通いたいと思えるところを選ぶといいでしょう。
高校生のお子さんがフリースクールを選ぶポイント
高校生のお子さんの場合は、大学に進学するかどうかによって選び方が変わるでしょう。
大学に進学する場合、高校卒業資格が必要ですがフリースクールでは取得できません。そのため、高校卒業認定試験に合格する必要があります。
フリースクール選びの基準として、学習機会と指導内容が重要になるといえるでしょう。
一方で、大学進学を考えない場合は、対人コミュニケーションや同じ境遇のお子さんたちとの活動内容や居場所としての雰囲気が重要になるかもしれません。
全国エリアのフリースクールをご紹介
ツナグバでは、全国エリアでおすすめのフリースクールを紹介しています。
気になるエリアの記事はぜひご覧ください。
【オンラインフリースクール】
【北海道・東北エリア】
【関東エリア】
【北陸エリア】
【近畿エリア】
【中国エリア】
【四国エリア】
◆徳島のおすすめフリースクール
◆香川のおすすめフリースクール
◆愛媛のおすすめフリースクール
◆高知のおすすめフリースクール
【九州・沖縄エリア】
◆佐賀のおすすめフリースクール
◆長崎のおすすめフリースクール
◆熊本のおすすめフリースクール
◆大分のおすすめフリースクール
◆宮崎のおすすめフリースクール
◆鹿児島のおすすめフリースクール
◆沖縄のおすすめフリースクール
まとめ
フリースクールは、民間の学習機関で主に不登校のお子さん向けに第二の居場所として活動・運営を行っています。
義務教育課程の場合、フリースクールでの活動が「出席扱い」と認定されることで、進学要件を満たせる可能性があります。
フリースクールのタイプは大きく2つあり、通学型のフリースクール、自宅から出席できるオンラインフリースクールがあるため、お子さんの意向に合わせて選ぶといいでしょう。
さいごに、不登校のお子さんに対して「学校に登校する・復学する」という結果のみを求めることは重圧となり、より心理的に負担をかけてしまうかもしれません。
ですので、お子さん自身が進路や将来を主体的に考えて自立できるようサポートするというスタンスで考えていくのがいいでしょう。
【出典一覧】
*1 令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
参考箇所:冒頭
*2 民間の団体・施設との連携等に関する実態調査Q&A
参考箇所:フリースクールのカリキュラムについて
*3 民間の団体・施設との連携等に関する実態調査Q&A
参考箇所:フリースクールの教育内容について
*4 小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査
参考箇所:フリースクールの学費は?