日本の不登校児童生徒数が急増していることに伴って、学校の代わりに不登校のお子さんたちの「居場所」となるフリースクールも増えています。
不登校のお子さんを持つ保護者は、一度はフリースクールの利用を検討してみる人も多いのではないでしょうか?
しかし、フリースクールについて「どんな場所なのか、費用はどれくらいかかるのか、どんな制度が使えるのかわからない」という保護者が多いと思います。
本記事では、保護者の
- 経済的に余裕がなくてもフリースクールって通えるの?
- フリースクールに通うにあたって、何か助成制度ってあるの?
- フリースクールの助成金ってどうやったら受け取れるの?
- 支援の対象となる家庭ではないけれど、他にフリースクールの費用を工面できる方法ってないの?
といった疑問について解説していきます。
東京都のフリースクールを利用する際の助成金の申請方法についても詳しくご説明していますので、利用を検討する際のご参考にしてみてくださいね。
フリースクールにかかる費用はいくら?公立の学校と比較!
フリースクールは、国の公的な教育機関ではなく、個人や民間企業が運営している機関になるため、授業料が免除される公立の学校とは異なり、授業料を支払う必要があります。
フリースクールにかかる平均費用
フリースクールは、カリキュラムやお子さんのサポート体制も施設によってさまざまで、費用についても選ぶフリースクールによって大きく変わってきます。
どのようなカリキュラムやサポートを重点的に行っているかは施設によって異なりますが、フリースクールを利用するお子さんは精神的な問題から学校に通えなくなっていることが多いため、お子さんの精神的なサポートに力を入れている施設がほとんどです。
常駐カウンセラーによるカウンセリングなどの手厚いサポート体制が整っていることもあり、安くはない費用が必要になることが多いです。
一概には言えませんが、文部科学省が実施した調査(*出典1)によると、フリースクールに通う場合に発生する平均的な費用は、以下になります。
【1ヵ月の授業料】:約33,000円
(10,000~30,000円の施設が約38%、30,000~50,000円の施設が約36%を占める)
【入学金】:約53,000円
(アンケートに回答した319施設のうち、123のフリースクールが入会金無料で運営)
平均費用と中央値は違う
注意が必要なのは、平均費用が中央値ではないことです。
フリースクールは施設によって内容が大きく異なり、通学日数が週2、3日の場合もあれば、スタッフの人数にも大きな差があり、学習サポートの手厚さも異なります。
アンケートに回答している施設では、約10%が月額5,000円以下となっており、平均値に影響を与えていることが考えられます。
逆に、月額50,000円以上となっているところも約10%ありますが、お子さんに合ったフリースクールを探す際には、費用面だけ見るのではなく、日々のプログラムやサービス内容も含めて検討する必要があります。
公立の小・中学校にかかる平均費用
では、公立の学校に通う場合の費用はどれくらいになるのでしょうか?
公立の小・中学校は授業料が免除されていますが、給食費や遠足、部活動の費用が必要になります。
文部科学省の学習費調査結果(*出典2)によると、平均費用は以下になります。
【1ヵ月の学校教育費と給食費の合計】
公立小学校:8,749円(年間104,984円を月々で割った費用)
公立中学校:14,168円(年間170,019円を月々で割った費用)
やはり、フリースクールと公立の学校を比較すると、必要な費用には大きな差があります。
経済的に余裕のないご家庭にとって、フリースクールは敷居の高い選択肢となるでしょう。
フリースクールの補助金・助成金はある?
では、経済的に余裕のない家庭はフリースクールを利用することは難しいのでしょうか?フリースクールを利用する家庭を助けるための助成金の制度はないのでしょうか?
国からの助成金は見込めない
残念ながら、現時点(2024年7月)では、フリースクールの費用に関して国からの助成金はありません。
その理由として、フリースクールにははっきりとした定義がなく、カリキュラムや安全性に関する定めもないため、国がフリースクールに通うための経済的支援をする正当性を説明できないということがあります。
そもそもフリースクールは、一条校とは異なり、学校教育法などの国の基準にとらわれない自由な教育を行うことを目的に設立されていることが多く、今後も国から助成金をもらうということはあまり期待できないと考えられます。
自治体によって助成金を受け取れる場合もある
では、国ではなく、自治体の制度はどうなっているのでしょうか?
自治体では、地方の実情に応じて助成金制度を条例で定めることができます。
近年、急増している不登校のお子さんの「居場所」として、フリースクールが注目されることに伴って、独自の補助金・助成金制度を始めた自治体もあります。
お住まいの自治体にそういった制度がないか、ぜひ窓口で確認してみてくださいね。
2024年7月開始!東京都で「月2万円」の助成金制度
東京都では「フリースクール等利用者等支援事業」として、フリースクールに通う都内の小中学生の保護者を対象に、2024年4月分の利用費から月に上限2万円が助成されます。
また、事業者を対象に、フリースクールの活動を充実させる取り組みへの補助金も拡充されています。
不登校のお子さんが社会との接点を維持するためにフリースクールは非常に有効です。
東京都にお住まいで、経済的な事情からフリースクールの利用を諦めていた保護者は、ぜひ助成内容を確認し、助成金の活用を検討してみてください。
また、この助成金には所得制限がありません。所得が高く、さまざまな助成の対象外になっているご家庭も、一度内容を確認してみてください。
東京都でフリースクールの補助金、助成金を受け取る方法は?
2024年度から始まった東京都の「フリースクール等利用者等支援事業」の助成金の支給を受けるためには、東京都に申請を行い、審査を受ける必要があります。
申請は、2024年7月8日から東京都のホームページで始まりますが、2024年4月利用分まで遡って助成を受けることができます。
2024年7月5日までは、ホームページで事前登録ができます。
受給には交付申請と利用状況報告が必須
助成金の受給には、「交付申請」と四半期に一度の「利用状況報告」が必要になります。
交付申請は、オンラインでも郵送でも可能です。
本記事では、「申請者とお子さんが同居」または「申請者が世帯主である場合」のオンライン申請方法について解説します。
交付申請の必要書類とその準備方法
【必要書類】
1.交付申請書
(保護者が東京都のホームページでマイページを作成し、マイページから「交付申請書」を提出します)
2.フリースクール等確認書
(通所しているフリースクールに「フリースクール等確認書」の記入を依頼します。記入が完了した書類をマイページからPDFで提出できます)
【場合によって必要な書類】
・フリースクールのパンフレット等
フリースクールのホームページに「利用料金体系」と「不登校の児童生徒の支援を主たる目的として活動していること」が記載されていない場合は、その内容が確認できるパンフレットやリーフレット、チラシ等の提出が必要になります。
・他のフリースクール利用料の助成金受給が確認できる書類の写し
既にフリースクールの利用料について他の助成金を受給している場合は、受給が確認できる書類の写しの提出も必要です。
利用状況報告の必要書類とその準備方法
四半期に一度、利用状況報告が必要です。
【必要書類】
1.利用状況実績報告書
(東京都ホームページからダウンロードし、保護者が申請するお子さんのお名前や利用している施設名、実際に施設に支払った利用料などを記入します)
2.通所状況等報告書
(保護者が申請者情報を記載してから、フリースクールに「学校確認欄」の記載を依頼する必要があります)
3.口座振替依頼書(東京都様式)
4.利用料の支払いがわかる書類
申請時期や提出期限
助成対象利用料 | 利用状況報告の提出期間 | 支給予定月 |
2024年4月から6月分 | 2024年9月1日~9月30日 | 2024年10月下旬 |
2024年7月から9月分 | 2024年10月1日~10月30日 | 2024年11月下旬 |
2024年10月から12月分 | 2025年1月1日~1月31日 | 2025年2月下旬 |
2025年1月から3月分 | 2025年3月下旬~4月上旬 | 2025年5月下旬 |
フリースクールの助成制度がある自治体を一部ご紹介
フリースクールへの補助金制度を設けている自治体の一例を紹介します。(2024年7月時点)
【神奈川県 鎌倉市】
鎌倉市が認定するフリースクールに通う児童生徒(小学生・中学生・高校生)の保護者に対し、利用料等の補助を実施しています。
月の授業料について上限1万円(利用料等の3/1)
【茨城県】
茨城県教育委員会が認定するフリースクールの利用に対する授業料等補助があります。
月の授業料について上限15,000円(利用料等の2/1)
【滋賀県 草津市】
草津市が認定するフリースクールを利用するお子さんの保護者に対し、補助金を交付しています。
月の授業料について上限4万円(補助率は条件によって異なり、最低2/1以上)
自治体によって助成内容は異なるため、詳細は各自治体に確認してください。
ご紹介した事例はあくまで一例であり、他の自治体でも独自の補助金・補助金制度を設けています。
また、住民税非課税世帯や生活保護世帯など受給に条件のついた助成制度がある自治体は比較的多くあります。
ぜひ、お住まいの自治体の補助金・助成金制度を確認してみてくださいね。
フリースクール助成金の対象者から外れている場合は?
お住まいの自治体にフリースクールの利用に関する助成制度がない場合は、国の教育ローンを活用することで、フリースクールにかかる家計の負担を軽減することができます。
国の教育ローンはお子さん1人あたり350万円まで低金利で借り入れできる融資制度です。
ただし、扶養するお子さんの人数に応じて、世帯年収の上限があるため、注意が必要です。
教育に関する融資制度というと、奨学金や銀行の教育ローンも活用することができますが、フリースクール利用に関する奨学金はまだ給付数が少なく、銀行の教育ローンは銀行によって異なりますが、一般的に国の教育ローンより金利が高めに設定されています。
フリースクールの利用を経済的な不安から控えている場合は、国の教育ローンも視野に入れて検討してみてください。
国の教育ローンの申請方法
申請は、「教育ローンコールセンター」に電話、または日本政策金融公庫の各支店窓口で配布される借入申込書に必要事項を記載したうえで日本政策金融公庫に郵送します。
また、インターネットからのWeb申請もできます。
実際に教育費用が必要になる時期の2~3ヵ月前には申請を完了しておくように、前もって準備しましょう。
借入申込書と全ての必要書類が提出された後に審査が始まります。
審査開始から約10日で融資の可否が決まり、結果の連絡がきます。申請が通れば、審査開始から約20日で口座に一括入金されます。
まとめ
フリースクールの費用は公立の小・中学校の何倍もの料金になりますが、残念ながら、フリースクールの費用に関して国からの助成金はありません。
しかし、不登校児童生徒数が急増していることから、不登校のお子さんにとって学校の代わりとなる「居場所」の重要性に注目が集まっています。
フリースクールが不登校のお子さんの「居場所」としてより広く認知されてきたことに伴って、自治体独自の補助金・助成金制度が増えてきています。
特に、2024年度から始まった東京都の助成制度は所得制限がなく、多くの家庭が利用できる画期的な制度ではないでしょうか。
フリースクールの費用を助成する自治体が増えたといっても、まだ助成制度が始まることがニュースになるくらい特別なことです。
東京都の取り組みを皮切りに、全国にフリースクールの利用に関する助成制度が広がっていくことを願います。
また、オンラインフリースクール「シンガク」なら、一般的なフリースクールよりも利用費用が抑えられるため、フリースクールにかかるお金を少しでも減らしたいと考えている保護者はぜひご利用を検討してみてくださいね。
オンラインフリースクール『SHINGAKU』では、オンラインでの授業や同世代のお子さんとコミュニケーションをとることで、自宅にいながら楽しく学習できます。
またSHINGAKUでの活動について、「出席扱い制度」の申請もサポートしてくれるため、内申点が心配という人や、学校への復帰を目指しているという人にもおすすめです。
『SHINGAKU』の運営会社は、教育関連の事業で60年以上の歴史がある成基コミュニティグループです。長年教育に携わってきた企業のため、安心してお子さんを預けることができるでしょう。
【出典一覧】
*出典1 文部科学省「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」
参考箇所:5 会費等の状況
*出典2 文部科学省「令和3年度子供の学習費調査の結果」
参考箇所:1 学習費全体の状況