不登校とは何らかの理由により、学校に通っていない状態のことを指します。
日本における不登校児童生徒数は9年連続で増加しており、社会課題として認知されつつあります。
(*出典1)文部科学省|令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
不登校状態になった際に生まれる悩みの1つとして「勉強」があります。
実際に「学校を休んでいる間、勉強の遅れに対する不安があった」と回答した不登校の小学生は、64%にのぼることがわかりました。
(*出典2)文部科学省|不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書
今回は、不登校になった際の「勉強の悩み」について解説していきます。
不登校時の勉強についてのよくある悩み
不登校の定義を端的に表すと「病気や経済的な理由による方を除き、年間30日以上欠席している」となっています。
不登校の定義について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
▶何日休んだら不登校?不登校の定義や相談先について紹介
約1か月以上、学校に通っていない状態ですので、勉強についての悩みが発生しやすいといえます。それぞれ詳しく解説していきます。
学校の勉強に遅れが出る
不登校の場合、学校の授業を休みがちであったり、全く出席していない状態になります。家庭学習していない場合は、授業の進度と乖離が広がってしまうため勉強の遅れがでやすくなってしまうでしょう。
また、そもそも学業不振が不登校の要因となる場合もあります。
令和3年度の調査では、小学生で3.2%、中学生で6.2%のお子さんが学業不振をきっかけに不登校になったというデータが出ています。
(*出典1)文部科学省|令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
わからない問題が解決しづらい
不登校中、自宅で勉強をするお子さんもいます。その際に、問題や参考書でわからない部分があった場合、先生や講師に気軽に相談できなくなりがちです。
わからない問題を後回しにしていたりすると、それが積み上がり勉強の遅れに繋がる可能性もあるでしょう。
また、内閣府の調査によれば、令和元年の共働き世帯数は昭和60年当時の約3倍に増加しているようです。
両親ともに夕方ごろまで不在となると、保護者が勉強を見るための時間を確保することも以前よりは難しくなっているといえるでしょう。
しかし、現在はSNSやWEBサービスが豊富なため、そういったプラットフォームで相談することで解決できる可能性は高まっているかもしれません。
実際にYahoo知恵袋で具体的な勉強の相談をしている方も見受けられます。
(*出典3)内閣府男女共同参画局調査課|「家事・育児・介護」と「仕事」のバランス~個人は、家庭は、社会はどう向き合っていくか
内申点に影響が出る可能性がある
不登校状態では内申評価が不利になりがちです。
学校の内申点は、テストの結果だけでなく、授業態度や小テストの内容も加味されるため、出席していない状態では評価が難しいです。 こちらについては、フリースクールなどを利用することで「出席扱い」と認められる可能性もあります。内申点の悩みがある際はフリースクールなどの利用を検討してもよいでしょう。 出席扱い制度について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
▶フリースクール・ICTでの学習は出席扱いされる?要件やフリースクール選びのポイントを解説!
勉強の遅れを取り戻すには?
まず、不登校状態であるからといって、極度に勉強に対して不安になる必要はありません。
文部科学省が定めた年間の標準授業数について、小学校4年生~6年生で980回、中学生は1,015回となります。
一部の上位進学校を除き、1回あたりの授業で進む内容については標準化されているため、長期的な不登校でない限りは巻き返せる可能性はあります。
また、勉強の遅れを取り戻すための方法も活用できますので是非参考にしてみてください。
(*出典4)文部科学省|新学習指導要領について
①自宅学習
不登校中の勉強を自宅で行うことも有効です。自分のペースで学習を進めることで学力だけでなく、心身を休めることもできるかもしれません。
教材については教科書や問題集を活用する方が多いかもしれませんが、授業を受けるわけではないため解法・解説が不足してしまう可能性もあります。
保護者の方と一緒に勉強したり、WEB上の学習コンテンツを見るなど工夫するといいでしょう。
②フリースクール
不登校状態の場合、フリースクールの活用も1つです。
フリースクールは主に学習サポートを行う民間施設で、勉強だけでなく体験学習に力を入れるところもあります。
お子さんと年齢が近く、同じ境遇の友人と出会える可能性もあるため、学力以外のものが得られる可能性もあるでしょう。
またフリースクールでの学習や活動が、出席扱いと認められる可能性もあります。
③家庭教師
通学が負担に感じるお子さんの場合、自宅まで勉強を教えに来てくれる家庭教師という手段もあります。
基本的にお子さんのペースと体調に合わせて自宅で学習できるため、負担が少なく勉強できるといえるでしょう。
一方で、先生との相性や費用面の負担、出席扱いが難しい可能性なども考慮する必要があります。
④個別指導塾
お子さんのペースに合わせて授業が行われる個別指導塾なら、不登校中の勉強の遅れを取り戻しやすいといえます。
しかし教室に通う必要があるため、周囲の目が気になったり、講師以外とコミュニケーションを取る必要があり負担に感じたりするかもしれません。お子さんの意向を第一に選んでいくといいでしょう。
不登校による進学への影響について
結論から進学は可能ですので、その点はご安心ください。
進学については、「中学から高校」「高校から大学」のどちらかによって方法や要件が異なります。
それぞれについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
▶不登校でも大学受験はできる?入学資格、受験勉強のポイント、保護者ができることを解説!
勉強に取り組む際の5つのステップ
不登校状態の場合、勉強の悩みを持つ方は少なくありませんが、いきなり勉強に取り組ませるのは良くありません。
保護者の方は、以下のステップを意識してみてください。
①心身を休める
不登校中のお子さんは罪悪感を感じていたり、自己肯定感が低下している可能性もあります。また勉強についての悩みを感じていることもあるでしょう。
その際、無理に勉強をさせるのは望ましくないといえます。お子さんの負担になるかもしれませんし、そもそも学業不振が要因の不登校のお子さんもいらっしゃいます。
まずは「学校を休んで、家にいていい」と伝えることでお子さんは安心できます。
すると勉強に取り組む余裕ができたり、不登校の要因について話すことができるようになるかもしれません。
②生活リズムを保つ
不登校要因の1つに「あそび・非行型の不登校」があります。
これは、食事・睡眠のリズムが不規則で通学が難しくなり、昼夜逆転することで不登校になるようなケースです。
あそび・非行型のお子さんは、居場所を求めてSNSやゲームの世界にのめり込む傾向もあるため、不登校に昼夜逆転が進行する可能性があるといえるでしょう。
生活リズムを保つために、「朝食・昼食を一緒に摂る」「日中できるフリースクールや習い事に通う」などの方法があります。
あそび・非行型の不登校については以下の記事をご覧ください。
③まずは机に向かってみる
心身を休めて活動の余裕が出たら、机に向かう習慣から付けるのがよいでしょう。
いきなり勉強するのではなく、読書や絵を描くなどの趣味に取り組むことでも大丈夫です。
小さな成功体験を積むことで、勉強に取り組む勇気と気力に繋がるといえます。
④自分で解ける範囲からはじめる
いざ勉強に取り組むといっても、いきなり新しい範囲に取り組むことはおすすめしません。習っていない範囲の場合は、それ以前の単元の知識を使う場合もあるため、そもそも解けないという可能性もあります。
取り組んだ問題が全く解けない場合、挫折を感じたり、やる気を削いでしまうかもしれません。
まずは以前習っていた範囲の復習から取り組みながら、徐々に進めていくのがいいでしょう。
⑤勉強を習慣化する
お子さんが勉強に取り組むことができたら、習慣化することが重要です。
いきなり1日に何時間も勉強できると期待せず、1日10分でも勉強できたら褒めてあげ、それを毎日繰り返し、お子さんの自信を高めていくことを意識してください。
学力は一朝一夕で伸びるものではないので、少しづつでもいいので取り組むことが重要というスタンスでお子さんを見守るといいでしょう。
【まとめ】お子さんの心身の健康を第一に焦らずに進んでいきましょう
いかがでしょうか。
不登校中は、勉強について悩んでいるお子さんは少なくありません。不登校の要因が「学業不振」の可能性もあります。
しかし、勉強が要因だからといって、勉強させれば不登校が解決するわけではありません。学業不振によってお子さんが自信を失っているということが要因の可能性もあります。
フリースクールなどの民間施設の利用も検討しつつ、まずはお子さんの心身を休めることを第一に対応することを意識していきましょう。
【出典一覧】
(*出典1)文部科学省|令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
参考箇所:冒頭、学校の勉強に遅れが出る
(*出典2)文部科学省|不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書
参考箇所:冒頭
(*出典3)内閣府男女共同参画局調査課|「家事・育児・介護」と「仕事」のバランス~個人は、家庭は、社会はどう向き合っていくか
参考箇所:わからない問題が解決しづらい
(*出典4)文部科学省|新学習指導要領について
参考箇所:勉強の遅れを取り戻すには?