みなさん、不登校特例校という学校をご存じでしょうか?
不登校特例校は、平成17年7月に学校教育法施行規則改正で制度化された、法律上定められた学校です。まだまだ全国に24校しかなく、その名前を聞いたことのない方も多いのではないでしょうか。
学習指導要領の内容などにとらわれずに、不登校の状態にある児童生徒の実態に配慮した特別な教育課程を編成し、実施しております。
文部科学大臣が指定しており正式名称は、「不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校」といいます。
不登校特例校は、学校に通うことが難しい生徒を対象として特別な教育課程を提供し、彼らの学習や成長を支援するために設立されました。柔軟な教育環境と個別のサポートを提供することを目的としています。
不登校の生徒に対する国の基本方針は、特別な教育課程を編成して教育する特例校の設置を促進することになっております。
*1)不登校児童生徒の実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の概要 文科省
不登校特例校とは?
まず、不登校特例校が設置された背景にはもちろん不登校になる生徒の数が増えていることが理由としてあげられます。
*2) 令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の課題に関する調査結果の概要(文部科学省、令和3年10月)によると、長期欠席(年度間に「欠席日数」30日以上)の児童生徒のうち、不登校(長期欠席者のうち病気や経済的理由によるものを除く)の児童生徒数は、196,127人(前年度181,277人)でした。
また、過去5年間の傾向として、小中学校ともに不登校児童生徒数の割合は増加しています(小学校H27:0.4%→R2:1.0%、中学校H27:2.8%→R2:4.1%)。
このうち約55%の児童生徒が、90日以上欠席しているという心配すべき状況となっております。こういった状況を受けて、国全体として不登校の子どもたちをサポートする仕組みを整えるために制度としての不登校特例校がつくられました。
不登校特例校の目的と役割
国は、不登校問題解決の中核的組織として「不登校に関する調査研究協議会」を設置し、調査結果等を踏まえて検討を重ね、今後の不登校児童生徒への学習機会と支援のあり方について報告書にまとめました。*3) 不登校に関する調査研究協力者会議(令和3年第1回)議事要旨 文科省
その報告書では、今後、不登校対策として重点的に取り組んでいくべき方向性を大きく次の4点に絞って示しています。
①誰一人取り残さない学校づくり
②不登校傾向のある児童生徒に関するニーズの把握
③不登校児童生徒の多様な教育機会の確保
④不登校児童生徒の社会的自立を目指した中長期的支援
また、不登校についての基本的な考えとして、「不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮し、児童生徒の最善の利益を最優先に支援を行うことが重要」、「登校という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」、「不登校児童生徒の意思を十分に尊重しつつ、その状況によっては休養が必要な場合があることも留意しつつ、 個々の児童生徒の状況に応じた支援を行うこと」などが明記され、これらが教育関係者、教育機関等に周知されることの必要性を強調しています。この報告書においても、特例校設置の推進やフリースクール等の民間団体との連携促進などが提言されています。
不登校特例校とフリースクールの違い
不登校特例校に通った場合、一般的な学校より総授業時間数が少なく設定されてますが、卒業時には卒業資格を得ることができます。卒業証書を受け取ることができるということは、きちんとその教育課程を修了したと認められている証です。
そのため、中学校を卒業したあとでも高校に問題なく進学できます。卒業証書を受け取れるので、進学を諦める必要はありません。将来の選択肢を広げるためにも検討してみるとよいでしょう。
また、進路書類も作成してもらえます。不登校特例校でも、進学を希望すれば進路指導を受けられ、内申書などの進路書類も発行してもらえます。
不登校特例校を検討してる方は合わせてフリースクールも検討される方が多いですが、フリースクールでは卒業証書や進路書類は発行できません。注意しましょう。
一方で、フリースクールに通っている子どもの中でも出席扱い制度を活用して、学校の成績がついているお子さんもいらっしゃいます。出席扱い制度について詳しかったり、制度活用のサポートをしてくれるフリースクールもあるので進学を希望していてフリースクールを探す場合には頭に入れておきましょう。
不登校特例校の教育内容、カリキュラム
公立の学校と私立の学校の違い
不登校特例校には、一般的な学校と同じで私立と公立の両方が存在します。
現在令和5年時点では、全国に公立の学校が14校、私立の学校が10校あります。公立は比較的学費が安く、教育費を抑えることができます。
一方で私立は、学校によっては年間100万円以上学費がかかるところもあり、学校ごとに異なります。カリキュラムも各学校異なるので、子どもに合った学校選びが重要です。
特例校の運営体制とカリキュラム
不登校特例校では、授業形式やクラス編成が柔軟に組まれており、一般的な学校とは異なります。一般的には学校のクラスは学年ごとにクラスが変わりますが、不登校特例校では習熟度別や、学年の枠を超えたクラス編成をしており、複数の学年が混ざって同じクラスになることもあるようです。
一斉に同じ授業を受けるのではなく、一人ひとりが個別に学習し、困ったことがあれば先生に聞くという形式が多くとられています。また、オンライン学習を利用して自宅学習が許可されている学校も存在します。
年間総授業時間は750~770時間程度と規定よりも1~2割抑えられているので、その分総合的な学習の時間などに時間が充てられています。
これらは学校によって異なるので、不登校特例校を検討する際に、詳細の形式を確認することが重要でしょう。基本的には、どの学校も一般的な学校よりは自由度が高く、不登校児童生徒が学習しやすい工夫がされています。
一般的な教育課程のような詰め込み型ではなく、体験的な授業を通じて社会経験を積むことで、生徒の自信に繋がる経験をさせることを重視しています。
まとめ
特例校は学校が1つのチームとして機能している部分があり、全体で子ども達をサポートしています。不登校に理解のある教師が多いのも特徴の一つです。不登校児童生徒を対象とした学校のため、生徒との向き合い方を熟知してる方が多数いるそうです。
また、なにかあった際に早期支援をできるように教師やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、養護教諭等が専門性を発揮して連携しております。こども家庭庁とも連携していることも特徴的です。
子どもたちが一人で悩みを抱え込まないよう保護者への支援も充実しています。
こういった特徴もあるため、不登校特例校に子どもを入れるのが不安という方も、安心して任せることができるでしょう。
不登校特例校での事例はインターネット上でも、まだあまり情報が見られませんが、「先生たちの生徒一人ひとりのサポートがとても手厚く、とてもいいと思います」、「自分の子供が、嫌がらずに学校へ登校していますので、先生たちにはとても感謝しています。」
「行事も多く、生活に置いてルールもはっきりしていて、わかりやすかったようです。」
などポジティブな意見が多数見られます。
まだまだ、学校の数は少なく皆さんのご自宅から通える範囲にあるかどうか、距離の問題も1つございますが、もし通える範囲にあるのであればフリースクールなどと一緒に比較、検討してみても良いかもしれません。
不登校の子どもが増えていることからも、不登校特例校や不登校に対する国からの対策がさらに進むことが考えられます。学校以外の選択肢が増え、多くの子ども達やその保護者の方々が生きやすい選択ができるようになることを心から祈っております。
*1)不登校児童生徒の実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の概要 文科省
*2) 令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の課題に関する調査結果の概要
文科省