お子さんが受験を乗り越え、高校に入学したにも関わらず「高校に行きたくない」と不登校になり、原因や対応に悩まれている保護者の方もいるかと思います。
高校生の不登校は、義務教育だった小・中学校とは異なり、留年や退学の可能性が高くなるため、お子さんのためにできることをしてあげたいと思っていても、「何をすべきかわからない」と悩まれている保護者の方は多くいらっしゃいます。
この記事では、高校生の不登校の中でも、特に学業不振を原因とするケースの理由や保護者の対応方法、勉強の進め方についてご紹介します。
学業不振が原因の不登校|高校生は7.4%
文部科学省の「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」*1によると、高校生の不登校の原因は下記のとおりです。
●無気力・不安(36.8%)
●生活リズムの乱れ・あそび・非行(12.4%)
●入学・転編入学・進級時の不適応(10.5%)
●いじめを除く友人関係をめぐる問題(10.5%)
●学業の不振(7.4%)
●進路に係る不安(5.1%)
高校では、「無気力・不安」が不登校の要因として最も多く、学業の不振は「生活リズムの乱れ・あそび・非行」「入学・転編入学・進級時の不適応」「いじめを除く友人関係をめぐる問題」に次いで多い理由となっています。
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小・中学校では「学業の不振」を要因とする不登校は5.2%となっており、高校では約1.5倍に増えていることがわかります。
一方、「家庭の悩み」は小・中学校と比較すると減少します。高校生になると、保護者から精神的に自立し始めていることが考えられます。
なぜ高校では学業不振を理由にした不登校が増えるのか
小学校・中学校は義務教育のため、受験をしないお子さんも多いのですが、高校生の多くは受験をして進学します。
受験をするということは、進学した高校には比較的自分と同じ、もしくはそれ以上の学力の持ち主が集まってきます。
特に、小・中学校ではいつも成績が良く、優等生として認識されてきたお子さんにとって、高校で初めて挫折を経験するケースは多いのではないでしょうか?
実は、進学校の生徒や高校1年生が不登校になることは少なくありません。
中学まで問題なく学校に通っていたお子さんが高校に入ってから不登校になる主な理由としては、次の理由が考えられます。
●勉強面で、今まで経験したことのない挫折を味わった
●授業についていくためにやらなければいけないことが多く、疲れて無気力になっている
●周りの期待に無意識に応えようとし、精神的に辛くなっている
実際のケースをご紹介しましょう。
完璧主義で挫折を経験したことがなかった
高校1年生のAさんは、中学校までは非常に成績が良く、定期テストの順位では常に片手で数えられるような成績でした。
もちろん、志望していた高校に無事合格しました。ところが、進学先は県内有数の進学校。集まっていた生徒は各中学校の上位成績者ばかりです。
Aさんが高校に入ってからの定期テストの結果は、どんなに勉強しても、平均くらいの成績でした。
Aさんにとって「成績が良い」ということは自身の大きなアイデンティティの1つだったため、良い成績をとれなくなった自分への自信がなくなり、「勉強ができない」という挫折を初めて味わいました。
定期テストだけではなく、早いスピードで進む授業でも理解できない部分があり、先生に質問されても答えられないという状況を初めて経験しました。
その後、Aさんは登校しようとすると吐き気や腹痛を感じるようになり、ほとんど学校に行けなくなりました。完璧主義のAさんは勉強ができないという挫折を初めて味わい、挫折への対処方法が分からなかったのです。
高度化した学習についていくための多忙なスケジュールに追われ、精神的に疲弊した
高校になると、学校の勉強は一気に高度化します。
中学校までは義務教育なので、真面目に勉強すれば多くの子どもが理解できるような内容だったものが、高校では急に大人でもわからないような問題が出てくるようになります。
中学校までは勉強に苦労することなく成績優秀だったBさんが進学した高校では、授業で難易度の高いテキストが使われるうえに、毎日多くの課題が出されていました。
授業は予習前提で進んでいくため、課題以外の予習の時間も必要でした。
加えて、「文武両道」を掲げた部活動が盛んな学校だったため、勉強と部活動の両立に追われるようになりました。
高校1年生のうちはハードスケジュールに耐えて登校を続けていたBさんも、高校2年生になると精神的に疲れ切ってしまい、不登校になりました。
周囲の期待がプレッシャーになった
高校に進学すると、次は大学受験が迫ってきます。
Cさんは、高校入学時のタイミングでは自分で「この大学に行きたい」「こういう職業に就きたい」という思いがはっきりしておらず、漠然と高校の勉強に取り組んでいました。
ところが、Cさんの家族や親戚から「〇〇高校なら●●大学に行けそうだね」「将来楽しみだ」などといった、悪気なく期待のこもった声掛けをされ、いつの間にか「周囲の期待に応えなくては」という気持ちが強くなっていきました。
しかし、期待に応えようとしても思うように成績が伸びなかったタイミングで、その期待がプレッシャーとなり、「自分では期待に応えられない」と勉強へのやる気や登校する意欲まで失ってしまいました。
ご紹介したケースのように、勉強への自信喪失や家族からのプレッシャーが原因で不登校になってしまう場合があります。
勉強についていけないことが原因の場合は、自分のペースで勉強できる通信制高校やフリースクールに転校することも選択肢です。
親は学業不振が原因の不登校の高校生にどのように対応するべき?
中学校までは問題なく勉強ができたゆえ、高校に入ってからの成績に伸び悩み、不登校になった高校生の保護者が今できることは何でしょうか?
どのようにお子さんに接するのが良いのか、ご説明します。
●エネルギー切れの状態を回復させるため、学校を休ませる
●不登校の理由を無理に聞かない
●お子さんの行動を否定しない
●今まで通りに接する
エネルギー切れの状態を回復させるため、学校を休ませる
お子さんが不登校になったら、保護者は不安を感じると思います。
「休んだら、さらに勉強についていけなくなるのでは?」
「大学進学が難しくなるのでは?」
「高校で何があったんだろう・・?」
お子さんの将来を思うがゆえに不安になり、どうにかして学校へ行ってもらえないかと思考錯誤するでしょう。
しかし、不登校のお子さんを無理に登校させようとするのは逆効果です。
お子さん自身も、「行かなければいけないとわかっているのに行けない」状態であることが多いため、親の「登校してほしい」というプレッシャーを感じると、ますます精神的に追い込まれてしまうからです。
保護者の方は「行きたくなければ、休んでいいんだよ」と声掛けをしましょう。
不登校の理由を無理に聞かない
お子さんによっては、不登校になった理由を聞かれることがプレッシャーになったり、自分でも言葉で説明できるような理由がわかっていなかったりする場合があります。
一度話を聞いてみて、お子さんから理由を言わなかった場合は、無理に原因を探ろうとするのは避けましょう。
お子さんの行動を否定しない
お子さんが高校に行かず、家で勉強するわけでもなく、一日中部屋でゲームをしていたり、スマートフォンを見ていたりしていても、その行動を否定しないようにしましょう。
先ほどもご紹介したように、お子さんは「学校に行かなければいけないとわかっているのに行けない」状態であることが多いです。特に、学業不振が原因の不登校は真面目なお子さんに多く見られます。
お子さんご自身でも、今の状態は良くないと思っているのに、更に親から否定されることで、より気持ちが落ち込んだり、無気力な状態が悪化することがあります。
どんな行動をしていてもお子さんを尊重し、否定するのではなく、お子さんのやっていることや見ているものに興味を持って話題を広げていくことを意識していくと良いでしょう。
今まで通りに接する
保護者の方は、不安になってしまうとは思いますが、できる限り今まで通りにお子さんに接してあげてください。
不登校になったお子さんに対し、怒ることや励ますことがお子さんを追い詰めることになると思い、逆に気を遣いすぎて腫れ物を触るように接する保護者の方がいらっしゃいますが、普段とは違う親の態度をお子さんは敏感に感じ取り、プレッシャーを感じることがあります。
普段と同じように「おはよう」と声をかけ、一緒に食卓を囲み、何気ない会話をすることがお子さんの気持ちの安定につながります。
勉強は学校以外の場所でもフォローできる!
保護者の方は、高校以外にも学習できる場があることを知っておくと、不安が和らぐのではないでしょうか?
勉強は学校に行かなくてもできる時代です。
●家庭教師(オンライン含む)
●塾
●フリースクール(オンライン含む)
●タブレット学習
●通信制高校
要件を満たせば出席扱いにできる可能性もあるので、不登校でも高校を卒業したいお子さんに合う学習方法を検討することができます。
▶出席扱い制度について詳しく知りたい方はコチラ
ただし、これらの学習もお子さんに無理に勧めるのではなく、様子を見て無理のない範囲で提案してみるのが良いでしょう。
「勉強が全てではないんだよ」という気持ちでお子さんと接することが、学業不振に悩むお子さんの救いになります。