お子さんが「学校に行きたくない」と言い出したら、保護者としては心配でたまらないでしょう。
特に中学校は義務教育期間であり、「学校に通わないことが将来にどんな影響を与えるのか?」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、まず「中学校に行かない選択肢があるのか」、そして「学校に行かないデメリット」や「お子さんが学校に行きたくない理由」について解説していきます。
また、お子さんが学校に行きたがらない場合の保護者の対処法や、進学に対する影響についても詳しくご紹介します。
中学校に行かない選択が将来にどう関わるのか、また、実際に学校に通っていない生徒の割合についても紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
中学校に行かない選択肢はあり?
結論から言うと、中学校に行かない選択肢は「あり」です。
現在では学校以外の学びの場も増えており、必ずしも従来の中学校に通うことだけが選択肢ではなくなっています。
不登校が増える中で、学校に通わない理由はさまざまであり、お子さんや家庭にとって心身の健康や学習の質を優先するのも一つの判断です。
ただし、中学校に行かない選択をする場合、考慮しておくべきデメリットも存在します。
まず、学校に通わないことで、友人関係や集団生活で学べる協調性や社会性の育成機会が減る可能性があります。
中学校では多くの人と関わり、ルールやマナー、コミュニケーション力を身につける場面が多いため、将来の対人関係にも影響が出る可能性があるでしょう。
また、学業面でも遅れが出やすく、家庭でのサポートや自律した学習が必要になります。
特に高校進学を考える場合は、学校を通じた情報やサポートが受けられない分、別の方法で勉強を進めていくことが重要になります。
さらに、周囲の目や偏見により、お子さんや家族がストレスを感じやすくなる場合もあります。
不登校の児童生徒数が年々増えているものの、社会的にはまだ「不登校」に対する理解が進んでいるとは言えず、場合によっては心の負担が大きくなることもあります。
そのため、家族が協力し、サポート体制を整えていくことが、中学校に行かない選択をしても健やかに成長するために重要です。
中学校に行かないことによるデメリットは?
中学校に行かないことには、さまざまなデメリットが伴う可能性があります。
主なデメリットを挙げ、それぞれについて詳しく説明します。
1. 社会性やコミュニケーション能力が育ちにくい
中学校ではクラスメイトや部活動の先輩・後輩、先生とのやりとりを通して、対人関係の築き方やコミュニケーションの方法を学ぶ場面が多くあります。
学校に通わない場合、他者と関わる機会が限られるため、協調性や対人スキルが育ちにくいことがあります。
このため、将来の職場や社会で人と接する際に不安や不便を感じやすくなるかもしれません。
2. 学習の遅れが生じやすい
学校に行かないことで、カリキュラムに沿った学習から遅れが出やすくなります。
特に高校進学を目指す場合、受験対策や必要な基礎知識をお子さんが自分でカバーする必要が出てきます。
家庭やフリースクールで補習することも可能ですが、進度管理やモチベーションを維持するのはお子さんにとって負担が大きくなることもあります。
3. 進学や就職時の選択肢が限られる
中学校に通わない場合、高校進学や就職時に学校でのサポートが受けられない場合があり、情報や支援が不足する可能性があります。
特に全日制高校の受験においては、学力試験や面接だけでなく、在籍証明書や内申点が求められることもあるため、進路の選択肢が限られるケースもあります。
4. 将来の不安や心の負担が増える
「学校に通わない」ことに対して周囲からの偏見や否定的な視線を感じやすい場合があります。
これにより、お子さんや保護者が「学校に行かないのは良くないことでは」と自責の念や不安を抱えやすくなります。
特に社会的に不登校がまだ理解されていない地域や環境においては、これがストレスの原因になることもあります。
5. 自立性や責任感の育成が難しくなる可能性
学校生活では、登校や学習、課外活動などで「自分で決めて行動する」場面が多く、お子さんが自然と自立性や責任感を身に付ける機会が増えます。
学校に行かない場合、こうした自主的な行動を学ぶ機会が減少し、将来の自立や責任感の育成に影響が出ることも考えられます。
6. 孤独感や自己肯定感の低下
学校に通うことで同年代の友人と過ごす時間が確保され、自分の存在意義や価値を感じやすくなりますが、学校に行かない場合はこれらの機会が少なくなります。
結果として、孤独感を抱きやすくなり、自己肯定感が低下することもあります。
お子さんが中学校に行きたくない理由は?
お子さんが中学校に行きたくない理由には、さまざまな背景や要因が考えられます。
ここでは、よくある理由について具体的に説明します。
1. 友人関係のトラブル
中学生になると、友人との関係がますます重要になります。
気の合う友人と楽しく学校生活を送れていれば問題ないのですが、友人とのつながりが強くなるがゆえに、いじめや仲間外れ、友人関係のストレスが登校を避けたい理由になることがあります。
グループ内でのトラブルや対人関係の摩擦は、学校生活の不安やストレスを引き起こしやすく、登校意欲を低下させる大きな要因です。
2. 学業へのプレッシャー
中学校では学習内容が難しくなり、成績やテストに対するプレッシャーが強くなるため、学業への自信を失うことが考えられます。
特にテストの結果や先生からの評価がプレッシャーとなり、お子さんが「授業についていけない」と感じる場合、登校がストレスに変わることがあります。
3. 先生や学校との相性が合わない
学校や先生との関係がうまくいかないことも、登校をためらう理由になります。先生の教え方や対応が合わなかったり、学校のルールや方針に窮屈さを感じる場合、居心地の悪さから登校したくなくなることもあります。
4. 家庭環境の変化やストレス
家庭内でのトラブルや両親の離婚、引っ越しなどの環境変化があると、お子さんの心に負担がかかりやすくなります。
家庭環境が不安定だと、心の落ち着きが保てず、学校生活に集中できなくなりがちです。
これにより、登校意欲が低下するケースもあります。
5. 身体的・精神的な不調
成長期には体調不良が起きやすく、特に朝に体が重い、頭痛や胃痛があるなど、身体的な不調が続く場合、登校を避けたいと思うこともあります。
また、精神的な不調、例えば不安感や憂鬱な気分も、学校に行きたくない気持ちを引き起こしやすくなります。
6. 勉強以外のことに強い関心がある
お子さんによっては、学校での学習よりも別の物事に興味や関心を強く持っている場合があります。
趣味やスポーツ、あるいはゲームやインターネット活動に熱中していると、学校での時間を無駄に感じてしまうことがあります。
学校外で自分のやりたいことに集中したいという気持ちが、登校意欲を妨げる場合もあります。
7. 学校でのルールや集団生活への抵抗感
学校では多くのルールや集団生活の決まりごとがあり、これに抵抗感を持つお子さんもいます。
決められた行動や集団行動が苦手なお子さんにとっては、学校生活そのものがストレスになることがあり、登校に対するモチベーションが低下します。
お子さんが中学校に行きたがらないときの対処法は?
お子さんが中学校に行きたがらない場合、理由に応じた柔軟な対処が大切です。
前章で挙げた理由別に具体的な対処法を紹介します。
1. 友人関係のトラブルへの対処法
話をじっくり聞く
お子さんが信頼できる人に気持ちを話すことで不安が軽減されることがあります。
急かさず、「学校で何があったのか」を少しずつ話してもらうようにしましょう。
必要に応じて第三者に相談
信頼できる先生やスクールカウンセラーに状況を相談し、間に入ってもらうのも効果的です。
2. 学業へのプレッシャーへの対処法
目標を小さく設定
毎日の課題や目標を小さく設定し、少しずつ達成感を積み重ねることで、お子さんが自信を持ちやすくなるようにしましょう。
サポート体制を整える
塾や家庭教師、または家庭でのサポートを活用し、勉強面での支援を増やしていくと、プレッシャーが軽減されることがあります。
学習方法の工夫
勉強が楽しいと感じられる方法(例えばタブレットやアプリなどのデジタル教材)を取り入れると、学業への抵抗感が和らぐことがあります。
3. 先生や学校との相性が合わない場合の対処法
別の教師やカウンセラーに相談
担任以外の先生やスクールカウンセラーに相談し、問題を共有することで状況が改善される場合があります。
クラスや環境を変えることを検討
学校に選択肢があればクラス変更や進級後のクラス配置について相談するのも一つの方法です。
フリースクールやオンライン学習の活用
どうしても学校が合わない場合は、環境を変えることも選択肢として考えてみると良いでしょう。フリースクールやオンライン学習など、学校以外の新しい学びの場を活用することもできます。
4. 家庭環境の変化やストレスへの対処法
心のケアを優先する
まずは学校に行くことよりも心の安定を優先し、家庭でリラックスできる環境を整えます。たとえば、親子で過ごす時間を増やし、気持ちをリラックスさせましょう。
サポート団体の利用
家庭での悩みをサポートする団体やカウンセリングを活用し、家庭内の問題がお子さんの負担にならないようにサポートします。
5. 身体的・精神的な不調への対処法
医師の診察やカウンセリングを受ける
身体的な不調が続く場合は専門医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。
また、精神的な不調が原因の場合は、スクールカウンセラーや児童精神科医などのサポートを受けることも検討しましょう。
無理に登校させない
体調が悪い場合、無理に登校させるとさらに心身の負担が増すため、休養を優先する日を設け、心と体を整える時間を作りましょう。
6. 勉強以外のことに強い関心がある場合の対処法
興味を認め、理解を示す
お子さんが興味を持っていることを尊重し、その活動が成長にどう役立つかを一緒に考えましょう。
学業と趣味のバランスをとる方法を模索
たとえば、勉強時間を短く設定し、集中できる工夫をしてから趣味に没頭できるようなスケジュールを組むことで、学校と関心ごとに両立を促すこともできます。
7. 学校でのルールや集団生活への抵抗感への対処法
代替の学びの場を検討
フリースクールやオンライン学習など、集団生活のルールが緩やかな環境で学ぶことも検討できます。
ルールの意味を理解させる
集団生活で必要なルールの意義を、お子さんと話し合って理解する時間を設けます。
無理強いせず、自分で考える力をつけさせると効果的です。
中学校に行かないと将来どうなるの?
中学校に行かないことが、必ずしもお子さんの将来に大きな悪影響を与えるわけではありません。
最近は多様な学び方やキャリア形成の選択肢が広がっており、学校に通わない間も適切なサポートを受けることで、健全な成長や将来の成功を目指すことができます。
ただし、中学校に行かない間の過ごし方や対処方法には工夫が必要です。
お子さんが学校に行きたがらない場合の対処法でもご紹介しましたが、学校に行かなくても基礎的な学力を維持したり、社会性を育てたりする機会を確保することが大切です。
フリースクールやオンライン学習を活用することで学業の遅れを防ぐことができますし、家にいる時間を活用して趣味や興味のある分野に取り組むことは、将来の目標や自己肯定感を高める大きな助けになります。
重要なのは、「学校に行くかどうか」よりも、「その間にどんな経験を積むか」です。お子さんが安心して自分らしく成長できる環境を整えることで、将来への可能性は十分に広がります。
中学校に行っていないお子さんの割合は?
文部科学省の「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(*出典1)によると、不登校児童生徒数は10年連続で増加しており、不登校の中学生の割合は約6%です。
不登校の理由としては、生活リズムの乱れ、友人関係のトラブル、学業への不安などが挙げられています。
中学校に行かなくても進学できる?
中学校に行かなくても進学する方法は複数あります。
代表的なものは、通信制高校やサポート校、フリースクールを利用して学びを継続する方法です。
また、高卒認定試験を取得することで、高校卒業と同等の資格を得ることができるため、大学や専門学校への進学が可能です。
大切なポイントは、お子さんが「進学すること」ではなく、お子さんに合った学び方や進路を見つけることです。
教育の選択肢は広がっているので、お子さんの興味や将来の目標を考慮しながら最適な方法を一緒に検討しましょう。
また、進路については学校や教育専門機関に相談することで、具体的な情報や支援を得られます。
お子さんが「学校に行きたくない」と言ったときは、その理由に寄り添い、無理に登校させるのではなく、別の形で成長や学びをサポートする姿勢が大切です。
それぞれの方法を組み合わせながら、お子さんが安心して過ごせる環境を整えていきましょう。
【出典一覧】
*出典1 文部科学省「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果概要」
参考箇所:3 長期欠席