近年、不登校者数は増加の一途を辿っています。
令和3年度の文部科学省の調査では、不登校状態にある小学生・中学生の児童生徒数はどちらも過去最多を記録しました。
(*出典1)令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
お子さんが不登校であったり、学校を休みがちの際に、「このままだと学校に行けなくなってしまうのではないか」「甘えているだけだ」と焦って「無理矢理にでも学校に行かせなくてはいけない」と考える保護者の方もいるでしょう。
一方で「無理矢理行かせても辛いだけなんじゃないか」という考えも頭に浮かび、どうすればいいのか葛藤される保護者の方も少なくはないのではないかと思います。
しかしながら、学校復帰を焦っても、お子さんに負担をかけてしまう可能性もあります。
今回は、不登校からの学校復帰について解説していきます。
大前提として、不登校は悪いことではない
まず、不登校は悪いことではなく「何かしらの要因により一時的に学校に通っていない状態」であると受け止めることを意識してみましょう。
不登校になる背景には、様々な要因が複雑に絡み合って起きていることが多く、お子さん自身も何が原因か言語化できないことも多くあります。
不登校状態のお子さんは、「自分は弱い」「将来が不安」「前日には学校に行こうと思っているのに朝になると行けなくて、自分はダメなやつだ」「何日も休んでるから学校にはもう居場所がない」「勉強もついていけないからもう無理」などとネガティブになっていたり、自分を責めてしまうことがあります。
そして「学校への復帰を急ぐことでより焦りが強くなる、そして行くことができないことでさらにネガティブな気持ちが強くなる、そして、また焦りが強くなる」という悪循環に陥り、結果としてストレスを高めているような状況にいるお子さんも少なくありません。
不登校については、まずは一時的に自宅に避難をして、心身を休めている状態であると捉えることで、保護者にも余裕ができ、対応についても視野が広がることもあるかと思います。学校について怖い気持ちを抱えているお子さんも少なくないため、まずは家庭内が安全な場であることを大事になさってください。学校に向かうのはその次かもしれません。
学校復帰の前に何が要因か探してみる
不登校であることに焦るあまりに学校復帰ばかりに目が行ってしまうことは望ましくない場合もあります。不登校の要因が解消しなければ、なんとか頑張って学校復帰をしても、再度不登校に戻ってしまうこともあるでしょう。
そして、再度の不登校を繰り返してしまうと、お子さんへの負担はもちろん、保護者の方も心配が尽きないでしょう。
まずは不登校の要因についてお子さんと対話ができるまでは、心身を休めて、向き合える時間を作ることもが大切といえます。
厚生労働省が管轄する不登校やいじめ、ひきこもりなどの相談窓口も各地にありますので、お悩みがあればまずは相談してみるのもいいでしょう。
ただし、先述の通り、お子さん自身も何が原因かよくわかっていないこともありますので、原因を追求しすぎないことも必要な時があることも頭に入れておいていただけると良いかと思います。
不登校から学校復帰までのステップ
一口に学校復帰といっても、いきなり丸一日授業を受けるだけが学校復帰ではありません。例えば、以下のような小さなステップでも達成できればOKとして、少しずつ前に進むことも重要です。
【自宅でできること】
- 朝起きて、学校と生活リズムを合わせてみる
- 午前中は自分の机で読書や勉強をしてみる
【外出を伴うこと】
- 通学路を歩いてみる
- 学校まで行ってみる
【学校内に入ってみること】
- 保健室まで行ってみる
- 学校内で誰かと会話してみる
- 1時間だけ授業を受けてみる
このように、少しずつ前に進むことで次第に学校に通うことができるかもしれません。お子さんごとに取り組めそうなステップは異なりますので、お子さんと一緒にステップを考えるようにできると望ましいです。また、ステップを検討する際には、お子さんが「必要だと感じること」や「やってみよう」と思えることも重要です。大人からの一方的に課題として押し付けるようにならないようにも注意が必要です。
フリースクールなどの民間施設の利用も1つ
学校復帰は1つの方法でしかなく、お子さんが将来のために必要なことを学んでいく方法は他にもあります。
フリースクールはその方法の1つです。
フリースクールとは、不登校や引きこもりのお子さんを対象とした民間の施設で、学習指導や体験学習の機会などを提供してくれます。
また、同じ境遇のお子さんと出会える可能性もあり、そこで出来た仲間と親睦を深めるといったこともあるでしょう。
義務教育課程の場合、フリースクールでの活動が「出席扱い」として認められることもあります。
これまで通っていた学校への復帰だけを目指すのではなく、「勉強をする場所」「家族以外との関わりを持てる場所」「自宅以外の居場所」などの役割を果たすことが可能であるのであれば、学校復帰だけを唯一の選択肢にせずに、より広い視野で方法を探してみてください。学校と併用して活用しているお子さんも中にはいらっしゃいます。
▶フリースクール・ICTでの学習は出席扱いされる?要件やフリースクール選びのポイントを解説!
(*出典2)文部科学省|民間の団体・施設との連携等に関する実態調査
【まとめ】
不登校の保護者の方の中には「元いた学校への復帰をして欲しい」という方も少なくないかと思います。それは決して間違っている考えではないと思いますし、まずは元いた学校への登校を考えるのは自然な発想でもあると思います。
しかし、お子さんによっては、不登校の要因が学校にあったり、学校への復帰がお子さんの意向とズレてしまっていれば、その選択肢自体がお子さんへの負担になってしまう可能性もあります。
学校に通う目的は「勉強」「コミュニケーション」「進学」など様々あるかもしれませんが、それらを満たす方法は一つだけではありません。
お子さんの意向を踏まえつつ、改めて学校に通う意義や目的を考えて、お子さんにとってよりよい方法を探してみてはいかがでしょうか。
【出典一覧】
*1 令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
参考箇所:冒頭
*2 文部科学省|民間の団体・施設との連携等に関する実態調査
参考箇所:フリースクールなどの民間施設の利用も1つ
【監修者コメント】
近年では「不登校は問題行動ではない」ということがいわれています。
不登校に至る背景には個人差はあれども、何かしらの必要性がお子さんに発生していることが考えられるので、その背景を考えずに「とにかく学校には行かなくちゃいけない」としてしまうと、逃げ場がなくなって行き詰まってしまうこともあるでしょう。
だからといって原因を探ろうとしても、はっきりしない場合やお子さん自身でも原因がよくわかっていないことや整理できていないこと、言語化が難しい場合も少なくはありません。
また、「学校が怖いから行けない」「学校に行く必要性が感じない」「学校に行きたいけど行けない」「学校に行きたくない」「学校に行きたくないから行かない」など、同じ不登校の状態であっても、個人差があるものです。
最近では「無理に行かなくてもいい」という言葉を聴く機会が増えてきているのは心強いと思うことも多くあります。一方で、「無理に行かなくてもいいけど、その先はどうしたらいいのか」というところは、議論が抜け落ちているように感じることもしばしばあります。
お子さんの心が削られるような状況であれば、まずは「避難」をすることが先決であり、とにかく避難しようというのは重要です。しかし「避難をしたその先」がどうなってしまうのかが見えない状況では、それはそれで「今の」不安を感じることも少なくはないのではないかと思います。
その意味で、先々の見通しを持つことや、その見通しに基づいて今はどう過ごすのがいいか、を整理することは、今の安心を獲得するためにも大事な視点であると考えられます。
必ずしも「元の学校に復帰をすること」が唯一の選択肢であるわけではないことを念頭においておくことも重要ですが、元の学校に戻ることを選択肢として考えるのであれば、学校復帰へのプロセスをスモールステップとして考えるようなことも一つであることを覚えておけると良いかと思います。
自分ができることが変化としてわかることが自信に繋がったり、安心を積み重ねることにも繋がります。
「選択肢は一つではないこと」「少しずつ安心を作っていくこと」この2点を主軸において、今できることを考えてみてください。具体的な中身の検討については、専門家と相談をすることなども一つの手段です。