近年、不登校児童生徒の数は右肩上がりに増え続けており、同時に不登校児童生徒を支援するための学校外の施設も増えてきました。
今まで当たり前だった学校での勉強や卒業以外の選択肢が増えるのは素晴らしいことですが、一方で「各支援施設について違いがよくわからない」「自分の子どもに合っているサービスを知りたい」というような声も聞かれます。
今回はそのような疑問を解決するために「通信制高校とフリースクールの違い」についてまとめた記事をご紹介します。
通信制高校とは
通信制高校とは、通信教育で学習し、卒業要件を満たせば高校卒業の資格を得ることができる高等学校の形態です。全日制高校や定時制高校とは異なり、毎日通学する必要がなく、学年制ではなく単位制を採用しています。
留年がないため、学習のペースやスケジュールが柔軟で、働きながら学ぶことや特別な活動に専念しながら学業を進めることが可能です。
また、通信制高校は多様な生徒層が集まり、様々な事情を抱える人々が学び合う場としても成り立ち、近年では学習できるコースも多様化しています。
通信制高校の活動内容
通信制高校は、従来の全日制高校や定時制高校とは異なる学びのスタイルを提供しており、学習者の多様なニーズに応える教育機関として注目を集めています。
まずは通信制高校を卒業するために必要な活動内容から紹介していきます。
・レポートの提出
単位を修得していくにあたって、必ず必要なことがこのレポート提出です。学習スタイルは学校によって様々ありますが、最終的にはこのレポート提出が必須となります。
レポート提出のための学習方法は「学校に行って直接授業を受ける」か「オンラインでの学習」のどちらかですが、オンライン学習が主要な学びの手段となっています。
地理的な制約を超えて、自宅や任意の場所から学習が可能となることも通信制のメリットです。
・面接指導(スクーリング)
通信制高校では、年に一定期間「スクーリング」と呼ばれる面接指導が行われます。これは、生徒と教師が直接対面し、学習の進捗状況や理解度を確認する機会です。また、卒業条件として必須になっている特別活動などもスクーリングに行った際に実施します。
そのほかにもスクーリングでは、生徒同士の交流や学びのサポートを促進する場としても機能しています。
・単位認定試験
卒業をするためにはこの単位認定試験で一定の点数をとる必要があります。この単位認定試験に合格することで単位が取れ、3年間で74単位を修得する必要があります。学年制とは違うため、単位を落としたりしてしまっても3年間の中で74単位取れれば問題なく、高校卒業資格が取れます。
そのほかに、学習以外にも様々なイベントや交流活動が行われます。オンラインやリアルのイベントを通じて、生徒同士が交流し、学びの喜びを共有します。また、地域社会との連携も積極的に行い、地域でのボランティア活動や文化行事に参加する機会を提供しています。
学習カリキュラムについても近年ますます多様化しており、従来の一般科目に加えて、特定の分野に特化したコースや職業訓練コース、スポーツ・芸能コースなどが設置され、生徒は自分の興味や将来の目標に応じた学びを選択できるようになっています。
卒業後の進路
文部科学省の「高等学校通信教育の現状について」*3によると、通信制課程の卒業後の状況について、令和元年5月1日現在、平成30年度間に卒業した者のうち、大学等進学者が18.0%、専修学校(専門課程)進学者が21.7%、就職者が19.6%となっております。
ちなみに全日制の高校の場合、大学等進学者が55.5%、専修学校(専門課程)進学者が16.4%、就職者が17.2%となっておりますので、まだまだ大学への進学ということを考えると全日制の高校の方が割合が高くなっています。
通信制高校は高校による特色が明確に出ていますが、個々の生徒のニーズに合わせた学びを提供するため、卒業後の進路も多様で柔軟な場合が多いです。自分の目標に向かって学ぶことができ、生徒たちが自信を持って未来に進んでいくことができるのが通信制高校を選ぶメリットでもあります。
フリースクールとは
フリースクールとは、通常の学校教育にとらわれず、自主的な学びや自由な学習を重視する教育機関です。一般的な教育機関とは異なり、学年や教科書にとらわれず、生徒自身が学びたいことを自由に選択し、興味を持った分野を深めることができます。
そういった教科の学習だけにとらわれないカリキュラムの柔軟性があったり、教室だけでなく屋外やコミュニティスペースを学びの場として活用して、生徒同士が年齢や学年に関係なく交流するような社会的な場があることが特徴としてあげられます。
最近では、個々の生徒の個性を尊重し、自ら学びを見つけ、主体的に進める力を育む環境として、教育界でも注目を集めています。
フリースクールの活動内容
フリースクールは、自由な学びのスタイルを通じて、生徒たちの自主性や主体性を促進する場として、教育の新たなアプローチを提供しています。多様な活動を通じて、生徒たちは自己肯定感を高め、学びの喜びを発見していきます。
学習については、生徒が自ら学びたいことを見つけ、自主的に学習を進めることが重要な活動となります。生徒は興味を持ったテーマや分野を自由に選択し、その探究を深めることができます。
また、教師と生徒は近い距離でコミュニケーションができる場合が多く、生徒の意見や要望を尊重し、学びの進捗や課題について一緒に考えていきます。
フリースクールでは、教室だけでなく、屋外やコミュニティスペースを学びの場として活用することも特徴的で、フィールドトリップやアウトドア活動を通じて、自然や社会とのつながりを体験するような活動も行います。
卒業後の進路
フリースクールに通っていた生徒だけのデータは見つかりませんでした。各スクールによって特色が違ったり、どの年齢まで通うことができるのか?なども異なっているため、HPなどをしっかり確認したり、直接フリースクールの先生に聞いて情報収集することを心がけましょう。
通信制高校とフリースクールの違い
法律で定められた学校かどうか
通信制高校とは登校を必須とせず、自宅学習を中心に高校課程の教育を行う高等学校のことです。全日制、定時制と並ぶ正式な高等学校で、学校教育法の第45条に基づき法的な根拠を持っています。卒業条件を満たせば、高卒の資格を取得することができます。
一方で、フリースクールは法的な縛りがありません。一言でいうと何かしらの理由で「学校に行くことができない子どもたちの居場所」となっていることが多いです。日々スタッフと触れ合い、他人とともに生活し、体験学習などを通じて、子どもたちの主体性を尊重しながら、学校復帰を促すのが目的です。
通う目的や活動内容
通信制高校を選ぶ理由もフリースクールを選ぶ理由も本当にさまざまです。
通信制高校については、学業不振で中退してしまったり、人間関係がうまく行けず不登校になったり、経済的な事情で働きながら勉強しなければならなくなったりするなど個人によってはかなり複雑です。このように困難に遭遇した方が夢を諦めずに卒業資格の取得のサポートをし、勉強する場を与えているのは通信制高校です。
一方で、フリースクールは卒業しても卒業資格を取得できず、あくまで子どもの学校復帰と居場所作りを支援する役割を担っています。
普通高校、定時制高校、通信制高校など正式な学校に入学する前の学校復帰に慣れる場で、勉強の遅れを取り戻したり、社会性を身につけるための場所だと認識したほうがいいでしょう。
費用や運営する団体
通信制高校の場合は、全日制高校や定時制高校と同様に公立の場合は地方自治体、私立の場合は学校法人が運営しています。費用についても学校ごとに決められているため、気になった学校の費用については直接問い合わせてみましょう。
また、各自治体によって使用できる助成金などもあるので事前に確認しておくことをおすすめします。
フリースクールはNPO法人やボランティア団体などが運営している教育機関です。法的な学校にはあたりません。また、フリースクールの費用は各団体が設定するため、提供する機関によっての格差が大きいです。こちらも事前に確認して、長期間通う場合の費用感をイメージしておくことは重要でしょう。
通信制高校に向いているのはどんな人?
さきほどもお伝えしたように通信制高校を選ぶ理由は様々ありますが、特に下記のような方が多くなっています。
・働きながら学びたい人
通信制高校は、就労しながら高卒資格を取得したいと考える人にとって魅力的な選択肢です。通信教育の柔軟な学習スタイルにより、仕事と学業を両立することができます。
・中退や転校をした人
学業や家庭の事情によって通常の全日制高校を中退したり、転校を繰り返すことになった人が通信制高校に進学することがあります。通信制高校では、過去の学力や学歴に関係なく再出発できる点が利点です。
・発達障がいや不登校の人
通信制高校は、社交的な負担や人間関係のストレスを軽減するために、発達障害を抱える人や不登校傾向のある人に適している場合があります。自宅で学習できるため、学校に通うことに抵抗感を持つ人にとって有用です。
・スポーツや芸能活動を重視する人
スポーツ選手やアーティストなど、学業以外の活動に専念したいと考える人が通信制高校を選択することがあります。自分のペースで学びながら、個々の才能や目標を追求することができます。
・勉強に自信がない人
通信制高校は、学力に自信がない人にも適しています。個別に対応した学習スタイルやサポートが提供されるため、自分のペースで徐々に学力を向上させることができます。
自分のペースで通える通信制高校を探す方法
自分のニーズや目標に合った通信制高校を見つけるためには、多くの情報を収集し、比較検討することが重要です。自分のペースで学びたいという希望に合った学校を見つけることで、より充実した学びの体験ができるでしょう。
・インターネット検索:まずはインターネットで通信制高校を検索し、各学校の情報や特徴を調べてみましょう。通信制高校の公式ホームページや教育機関の情報を確認することで、学校の学習スタイルやカリキュラムについて理解できます。
・学校の比較サイトを利用:通信制高校の比較サイトやランキングサイトを利用すると、複数の通信制高校を同時に比較しやすくなります。学校の特徴やカリキュラム、入学要件などが一覧できるため、自分に合った学校を見つけやすくなります。
・口コミや評判をチェック:学校の口コミや評判をインターネットやSNSでチェックすることも重要です。過去に通った生徒や在校生の意見や感想を知ることで、学校の実情を知ることができます。
通信制高校のサポート校
通信制高校のサポート校は、教育基本法第一条に定められた「高等学校」ではありません。あくまで、別の通信制高校に所属した状態でその高校を卒業するための学習サポートをしてくれる施設や場所です。通信制高校やフリースクールと同様に、サポート校の取り組みも近年多様化してきており、高校卒業資格をとるためのサポートに留まらず、様々なイベントや行事を実施したり、それを特色としているサポート校も増えていっています。
魅力的な取り組みをしているサポート校があれば、ぜひそちらのお話も聞いてみると選択肢が増え、積極的な進路選択の一助になるかと思います。
まとめ|お子さんにとってのベストな選択肢を!
いかがでしたでしょうか?
これまでにイメージしていた通信制高校と比較してみてください。これから成長していくお子さんにとって、「通信制高校も悪くないな」と思うことができれば、現在のお子さんがおかれている状況を受け入れやすいかもしれません。
小学校、中学校に通えていないお子さんでも、現在はいろいろな選択肢が用意されている社会です。保護者の方々が腰を据えて、焦らず、子どもたちと接することができる時間が増えると、きっとお子さんも安心してやりたいことにチャレンジできるようになるのではないでしょうか。
【出典一覧】
*2 文部科学省|学校基本調査