早速ですが、小中学校の学習指導要領解説の中で、不登校についてこのように記述があります。
不登校は、
(引用)小・中学校学習指導要領解説 総則編
・取り巻く環境によっては、どの児童・生徒にも起こり得ること
・多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっているということ
・その行為を「問題行動」として判断してはならないこと
・「不登校児童・生徒が悪い」という根強い偏見を払拭すること
現在、少子化の中にも関わらず不登校児童数は右肩上がりに増えています。昨日まで明るく元気なように思えていたお子さんが、ある日突然学校へ行けなくなることもあり得ます。
ふとしたきっかけやサインを見逃すと、お子さんの不安や悩みは大きく深くなり、不登校を未然に防げなかったり、長期化してしまいます。
今日はお子さんが不登校にならないために、また長期化させないために、5つの対策を解説していきます。
お子さんを承認し、活躍の場を設けてあげる
不登校を未然に防止するためには、まず魅力的な学校づくりが大切です。これは不登校だけではなく、いじめ等の問題行動を防ぐための共通の取り組みです。
同時に、家庭・親の協力も大事になります。学校側が親に働きかけることももちろんですが、親が学校側の働きかけに対して積極的に応じ、協力体制を作らなければなりません。
お子さんの不登校を未然に防ぐために、まずは以下のような視点を持ってお子さんと接するといいでしょう。
□子供のいいところを積極的にほめているか。
□子供の活躍の場を設定しているか。
□自己有用感や自己存在感をはぐくむ活動を取り入れているか。
参考:宮城県|不登校への対応 – ~未然防止・初期対応・自立支援
不登校の兆候は早期に発見すること
お子さんが不登校につながるような不安や悩みを抱えたとき、心の機微が言動・表情に出てきます。なるべく早くお子さんの不安を発見してあげることで、相談や対応によって深刻化を防ぐことができます。
□朝の挨拶に元気がない
□体調不良や登校を渋ることが増えた
□学習意欲の低下・ぼーっとすることが増えた。
□食欲の低下
□友達と遊びたがらない・一人で過ごすことが増えた。
例えば上記のような兆候がサインとして表れることがあります。
少しでも気になることが出てきたら、お子さんに話を聞いてみたり、学校の先生や周囲の人に相談して、チームとして対応しましょう。
参考:千葉県|1 早期発見と早期対応のために
不登校の状況や原因をつかむこと
不登校には個人によってさまざまな症状、原因が隠れています。
不登校やひきこもりは病気を意味する言葉ではありませんが、こころの病気が隠れていたり、不登校の状態がこころの病気に繋がったりすることもあります。
不登校でよく見られる症状
からだの症状
・発熱
・頭痛
・腹痛
・吐き気
・食欲不振
・全身の倦怠感
・目まい
こころの症状
・不眠
・無気力
・イライラ
・集中力の低下
・憂うつ感
不登校の経過
不登校の経過は以下のようなケースが多くみられます。
①体の症状があらわれる
発熱や頭痛、吐き気などの症状があらわれ、元気がなくなります。
②こころの症状があらわれる
学校に行きたくても行けない葛藤や、周囲からのプレッシャー、ストレスでイライラしたり、落ち込んだりします。時には暴力的なサインがあらわれることもあります。
③無気力状態
だんだんと情緒が落ち着きますが、その後は無気力に過ごす時期が続きます。
このように不登校やひきこもりは病気ではありませんが、中にはこころの病が隠れているケースがあります。特に統合失調症の陰性症状(感情の平板化、意欲の欠如、思考の貧困)、様々な不安障害、うつ病などで外に出られない場合もあるのです。
お子さんの要素を見守りながら、話せるタイミングでからだやこころの状態について話す機会を作ってあげましょう。
適応指導教室やフリースクールなどと連携すること
不登校の場合、スクールカウンセラーや適応指導教室、フリースクールなどの支援があります。お子さんにとっては、家族が自分のために社会とつながっているということが大切です。
スクールカウンセラー
普段から親子関係が良好でコミュニケーションがとれる家庭であれば、お子さんは悩みや不安を自ら相談してくれるかもしれません。不登校になったとしても、お子さんに原因や理由を聞けば返ってくるでしょう。
しかし、親子間で冷静に話ができない場合もあります。そのようなときに、スクールカウンセラーを頼ることをおすすめします。
スクールカウンセラーはお子さんの臨床心理に対して高度な専門知識や経験を有しています。主に臨床心理士の資格を持っていたり、元教育経験者です。
カウンセリングではお子さんの意志やプライバシーに配慮し、不登校の原因や現在の生活状況、これからどうしたいか、どんなことをお子さんが考えているかなどをヒアリングします。お子さんの心のケアを目的としているため、カウンセラーが何かアドバイスするというよりは、あくまでお子さんから話してもらいます。
カウンセリングによって必ずしも不登校から脱せられるわけではありません。不登校になる原因は一つではないことが多く、人による個性や環境・状況もありますので、すぐに効果が出ないことも多いでしょう。
また、親子や家庭のコミュニケーションも非常に大切で、カウンセラーに任せっきりでは一向に回復しないこともあります。親、学校、カウンセラー、支援施設など、チームとして協力することが必要です。
そのため、カウンセリングはまず保護者の方から、お子さんとの向き合い方などの面談を受けることも可能です。
参考:文部科学省|スクールカウンセラーの対象2ー症状、問題行動別の対応の実際
適応指導教室
適応指導教室は、不登校のお子さんに対する学習指導や学校生活への復帰を支援することを目的に、教育委員会などによって学校以外の場所や余裕教室に設置されています。
教育支援センターとも呼ばれており、お子さんが通う学校と連携を取りながら個別のカウンセリングや教科書を用いた指導、集団指導などを組織で計画的に行っています。
また、施設全体の3割程度が家庭への訪問指導も行っています。例えば大阪の適応指導教室では。家庭教育支援サポーターが家庭訪問して、保護者の方から悩みや不安を聞き出し、カウンセリングの知識を活かして連携を図っていきます。
学校復帰を目的にしており、義務教育の段階では小学校が約42%、中学校が約35%の学校復帰を果たしています。
フリースクール
フリースクールは不登校の子や発達障害、身体障害などの事情を抱えるたくさんのお子さんを受け入れ、学びや活動の場を提供しています。個人で経営されていたり、NPO法人やボランティア団体などが運営していたりする民間の教育機関になります。そのため、教育方針や活動内容がお子さんの意向にあっているか、信頼できる運営元であるか、費用などを無理なく負担できるかなど、検討する必要があります。
▶フリースクールについて詳しい記事はこちら
フリースクールの方針は様々です。
・お子さんに居場所を提供する
指導内容は様々ですが、まずは不登校のお子さんにとっての居場所として機能することを一番の目的としています。フリースクールではなく、フリースペースとして運営している施設もあります。
・学校復帰を目標とする
元々通っていた学校に復帰することを希望しているお子さんが対象になります。学校の授業の進度に合わせた学習指導を行い、卒業が近いお子さんには進路のサポートも行っています。
・ほかの人と共同生活をする
色々なお子さんと一緒に寝食をしながら、生活を支援します。不登校から抜け出すために、まずは規則を設けて正しい生活習慣を身に着けるところもあれば、個々人の意志を尊重しているところもあります。
・専門家によるサポート
学習障害や発達障害(アスペルガー症候群)のあるお子さんに対して、専門家がサポートします。個々の状況に合わせた学習サポートや、社会生活をうまく送るための訓練などを行います。
・オンラインでのサポート
居場所が必要だけれど外に出たくない、など事情を抱えるお子さんにはオンラインでのフリースクールもあります。自宅で学習したり、コミュニケーションをとったりすることで、不登校を脱する一歩目としてきっかけをつかむことができます。
このように様々なフリースクールがあり、サポート内容もそれぞれに特徴があります。フリースクールによっては通うことで、学校の「出席扱い」を受けられる制度もあります。
▶出席扱い制度について詳しい記事はこちら
お子さんの意向を聞きながら、無理なく通うことのできるフリースクールを選んであげましょう。
回復に向けて継続的な支援をすること
不登校は未然に防ぐこと、早期に気づいてあげることが大切ですが、不登校になってしまったお子さんに対しては、学校や専門機関との連携及び、継続的な支援が必要です。不登校には様々な原因があるため、単発的な支援での復帰はなかなか難しいでしょう。
例えば適応指導教室では、いずれの校種においても半数以上が半年以上在籍しており、特に中学校では73%が半年以上在籍しています。これは短期的な学校復帰の難しさを表わしていると同時に、継続的な支援によってお子さんの居場所を作ってあげれば、不登校のお子さんも適応指導教室やフリースクールに継続して通うことができ、社会とのつながりを失わずに済むということでもあります。
文部科学省は不登校児童の支援に対して、以下のように述べています。
効果的な支援に不可欠なアセスメント
文部科学省|「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」
不登校の要因や背景を的確に把握するため,学級担任の視点のみならず,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカー等によるアセスメント(見立て)が有効であること。また,アセスメントにより策定された支援計画を実施するに当たっては,学校,保護者及び関係機関等で支援計画を共有し,組織的・計画的な支援を行うことが重要であること。
このように、学校、保護者、その他関係機関が連携し、長期的な計画性の中でお子さんへの支援を続けていくことが不可欠であるとしており、そのための支援を充実させるための取り組みを続けています。
保護者の方は積極的に周囲の協力を得ながら、粘り強くお子さんと向き合いましょう。
不登校児童に対する対応の参考事例
相談機関の面談による家庭・学校との連携した不登校初期対応の事例(小学校5年生男子)
Aくんが学校で靴にいたずらをされたと、保護者から相談機関へ電話連絡がありました。Aくんはいたずらされる原因が分からず大きなショックを受けており、誰にいたずらされたかもわからない状況で学校にいるのが辛く、休みがちに。
相談機関では保護者とAくんと、三者面談を実施。まずAくんがいたずらされて驚いたことやショックを受けたこと、辛い気持ちを傾聴しました。Aくんは、学校を休んでから担任が毎日電話をくれるが、その時に親から学校に行くよう言われるのが辛いと話してくれました。
欠席の理由は体調不良にしてもらっており、友達が心配して連絡をくれることが嬉しかったり、所属する少年団の大会が近いため練習に行きたいという前向きな発言も見られました。
Aくんや保護者の了承のもと、相談機関は学校と情報交換を行い、Aくんの気持ちを踏まえた相談体制の確立や登校したときの関わり方の工夫、家庭と学校の役割分担の明確化を進めました。学校では、Aくんの状況に応じて教室や別室で学習したり、生活したりすることができるように学校の環境を整えてもらいました。
保護者にはこれまでのAくんの気持ちに寄り添った対応を称賛すると共に、これからもAくんの気持ちを受け止め続けることが大切であることを助言。
この事例のポイントは、まずはできるだけ早期に相談しやすい環境を設定し、信頼関係を構築して対応を進めたことです。そして保護者と学校との間でお子さんにどのような対応をするかなど、それぞれの役割を明確にしながら、登校開始後も保護者、学校、相談機関が連携してお子さんへの支援を継続的に行うという点です。
中学生の不登校生徒の進路実現に向け、民間機関と連携した支援の事例(中学校3年生女子)
Bさんは中学入学後、環境や人間関係の変化から不安を覚え、1年生の2学期から不登校傾向が始まり、3学期から不登校になりました。勉強に対して意欲があったため、先生たちは協力しながら家庭訪問を行いながら学習指導や教育相談を行ってきましたが、登校はできない状況が続きました。
3年生になったので、Bさんと保護者は中学卒業後の進学と生活改善に向けて、民間機関での指導を受けることにしました。学校側は進路実現と自立に向けて、民間機関と連携した支援を行いました。
Bさんが通う民間機関と学校の間で、Bさんに対する相談・指導の方向性や内容、結果を共有し、支援を計画的・効果的に行うことができるよう、連携に努めました。
また民間機関への出席状況は、担任がBさんの通所予定日の通学状況を民間機関に確
認するとともに、民間機関から毎月の出席状況を記録にまとめて提供してもらいました。
民間機関での学習指導は、教科担任の先生からBさんが民間施設での学習を予定している教科の指導計画や指導内容とともに、家庭訪問での指導を踏まえたBさんに適した課題や学習内容等を実施して、民間機関と学校の学習の連動を図りました。
学校側では、民間機関から提供された出席状況などの記録を参考に、Bさんが民間機関に通った日の出席扱いの判断、Bさんに対する指導の改善及び学習成果の評価への反映を行っています。
取組の成果として、Bさんは学校に登校してはいないが、民間機関への通所と家庭訪問での学習を重ねる中で、学習や人間関係づくりに対する自信をもち、将来の自己実現に向けての意欲を高めることに繋がりました。
まとめ
お子さんが不登校になることを防ぐためには、
・未然に防ぐための取り組み
・早期発見と対応
もしお子さんが学校に行きたくても行けないとなった時は、
・不登校の状況や原因をつかむこと
・外部の機関と連携すること
・継続的な支援をすること
これら5つの対策を意識して、お子さんの気持ちに寄り添いながら過ごして下さい。
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【出典一覧】
1.宮城県|不登校への対応 – ~未然防止・初期対応・自立支援
参考箇所|1番の対策は未然に防ぐこと
2.千葉県|1 早期発見と早期対応のために
参考箇所|不登校の兆候を早期発見すること
3.厚生労働省|「ひきこもりや不登校」というサイン
参考箇所|不登校の状況や原因をつかむこと
4.文部科学省|スクールカウンセラーの対象2ー症状、問題行動別の対応の実際
参考箇所|適応指導教室やフリースクールなどと連携すること
5.文部科学省|「教育支援センターに関する実態調査」結果
参考箇所|適応指導教室やフリースクールなどと連携すること
6.文部科学省|「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」
参考箇所|継続的な支援をすること
7.北海道教育委員会|不登校児童への対応事例集
参考箇所|不登校児童に対する対応の参考事例