春休み・夏休み明けなどの新学期になるタイミングで不登校からの復帰を考える方は多いのではないでしょうか。
お子さんが不登校中のご家庭にとって、「学校へ行く」というお子さんの意思表示はとてもうれしいものだと思います。しかし、久しぶりに登校するお子さんにとっては、学校に入るという行為だけでも大きなストレスと緊張を感じ、エネルギーを要します。
本記事では、「再登校」の定義や、再登校を考えているお子さんへの対応方法、家庭で注意すべき点についてご紹介します。
「再登校」とは
「再登校」とは、学校を長期欠席していたお子さんが、再度出席し始めることを言います。
文部科学省の2022年度の調査*1によると、学校を30日以上欠席した不登校の小・中学生の人数は、24万4940人で過去最多となっています。
不登校の小・中学生は増えていますが、再登校の割合も年々上がっており、不登校の小・中学生のうち、約30%が不登校を始めた年度内に学校へ再登校を始め、約85%は高校進学時までに復学しているという数字が出ています。
つまり、不登校になっても、年度内に30%、高校進学時には約85%のお子さんが再登校しているといえます。
不登校対応の教育支援センターやフリースクール、通信制・定時制高校が増え、受け皿が広がってきたことが理由だと考えられます。
お子さんが再登校するときの注意点
1.「再登校=不登校の問題解決」ではない
不登校を続けていたお子さんが、再び登校し始めると、保護者の方はほっと一安心されると思います。
しかし、不登校の要因は複雑に絡み合っていることが多く、一概に何をしたら解決、こうなったから問題解消、とはならないケースが多くあります。
お子さんが再び登校するようになっても、気持ちや体調にはまだ波があるかもしれません。
「もう登校したから安心」と考えるのではなく、再登校を始めたときはこれまで以上にお子さんの様子をよく観察し、フォローしていくことが大切です。
2.再登校のタイミングを決めるのはお子さん自身
お子さんが不登校を続けていると、少し元気な様子を見せているときや、長期休暇明けのタイミングで「学校に行ってみない?」と再登校を促す場合も多いと思います。
しかし、お子さんの意思を確認せず、保護者の方が無理に登校させようとすると、状況を悪化させてしまうことがあります。
再登校のタイミングを決めるのは、お子さん自身です。
なぜ再登校のタイミングを保護者主導で決めてはいけないのかというと、お子さん自身のタイミングで登校を再開するわけではないので、どこかで無理が生じ、再び学校に行けなくなってしまう可能性が高いからです。
そして、再び不登校になってしまうと、再登校のハードルが以前にも増して上がってしまうため、不登校が悪化する原因になってしまいます。
不登校の原因が何であれ、不登校中のお子さんはストレスを抱えています。お子さんが自ら「学校に行きたい」と思えるくらいの活力を得たタイミングで再登校できるよう、保護者の方は焦らず、温かくお子さんを見守っていきましょう。
3.生活リズムを整える
不登校中のお子さんは、決まった時間に起きて学校に行くという毎日の習慣がなくなるため、規則正しい生活から遠ざかっているケースも多く見られます。
お子さんが再登校への意欲を示し始めたら、まずは家庭での生活リズムを整えるようにしましょう。学校の始業時間に間に合う時間に起きられるようになっておくことが大切です。
昼夜逆転気味の生活リズムになっている場合は、寝る時間を早めたり、日中の活動を増やしたりすることで、生活リズムが改善されます。
さらに余力があれば、机に向かって教科書を開く時間を作ることで、学校生活への心の準備も整ってくるでしょう。
4.無理のない計画で、保健室登校も選択肢に
お子さんが再登校への意欲を示したら、「無理に時間割通りの学校生活を送らなくてもいいよ」と伝えてあげてください。
学校に行きたいと思うくらい調子が良くなったとしても、長く欠席しているお子さんにとって、教室で時間割通りのスケジュールをこなすのは大変です。
最初から完璧を目指す必要はありません。
まずは学校に行ってみる→好きな授業だけ受けてみる→午前中だけ教室で授業を受けてみる、というように、段階を踏み、無理のないステップで再登校を進めていくとよいでしょう。
再登校の意思があっても、教室に入ることにストレスを感じる場合は、保健室登校から始めることも選択肢に入れてみてください。
保健室登校は出席が認められるうえに、無理なく学校に慣れることができるため、長期に渡って不登校だったお子さんの学校生活へのリハビリとしておすすめです。
5.学校との連携を密に
再登校にあたり、保護者の方は学校とのコミュニケーションを密にしてください。
お子さんが再登校を希望しているのであれば、学校にも状況を伝えましょう。事前に不登校中の学習をカバーするための教材がもらえるなど、フォローを受けやすくなります。
また、家庭と学校で情報を共有し、再登校への認識を合わせておくことも大切です。
家庭では、無理のない範囲での再登校を考えていても、お子さんが学校で無理をしてしまうケースがあります。保護者の方から再登校の方針を事前に学校に伝え、認識合わせをしておくと、スムーズに再登校できる場合が多いです。
再登校を始めたら、学校での様子を先生から細かく聞くことで、家庭でのフォローがしやすくなります。保護者の方は、学校に遠慮せず、お子さんの様子を確認しましょう。
6.家庭は安心できる場所であることを伝える
再登校には、エネルギーが必要です。家庭は、お子さんが休める場所にしてあげてください。
「あなたはそのままでいいんだよ」という安心感を与えることで、お子さんが自分自身を受け入れ、学校に行っても行かなくてもありのままの自分を肯定できるようになります。
そして、家庭が安心できる場所であれば、再度エネルギーを溜めて挑戦してみようという気持ちになれます。
学校に行って疲れても気兼ねなく休め、何かあれば気軽に相談でき、ありのままの自分をさらけ出しても受け入れてもらえる、そんな安心して過ごせる家庭であれば、お子さんは回復していくでしょう。
7.一喜一憂は禁物
お子さんが再登校を始めたら、保護者の方は安心するでしょう。
しかし「再登校=これからずっと、毎日学校に行けること」ではありません。学校に行き始めたことを大げさに褒めるのではなく、冷静に受け止めてあげてください。
保護者の方がお子さんの言動に一喜一憂すると、お子さんは保護者の方の期待に応えなくてはいけないと感じ、追い詰められてしまうこともあります。
大切なのは「学校に行けるくらい元気になったことがうれしい。学校に行っても行かなくても、あなたはそのままで大丈夫」ということをお子さんに伝えてあげることです。
「学校に登校さえすればいい」という気持ちを保護者の方が少しでも持っていると、お子さんはその気持ちを敏感に読み取り、無理をしてしまう可能性があります。
学校に行っても行かなくても一喜一憂せず、冷静に、お子さんのありのままを受け止めましょう。
8.復帰後に再度不登校になることも想定しておく
再登校しても、再び不登校になる場合があります。
何らかの原因で心が疲弊し不登校になったお子さんは、一進一退を繰り返してゆるやかに回復していきます。
長期で学校を休んでいたお子さんが久しぶりに登校すれば、疲れが出るのは当然なので、再度ゆっくり休ませてあげましょう。
お子さんは、再登校後に休むことに罪悪感を持ってしまいがちですが、不登校は”悪”ではないし無理をする必要はないということをしっかり伝えてあげてください。
学校に行けなくなったという「できなかったこと」にフォーカスするのではなく、1日でも学校に行けたという「できたこと」に焦点を合わせていくと、保護者もお子さんも前向きに考えられるようになります。
【出典一覧】
*1 文部科学省|令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
参考箇所:小・中学校の長期欠席(不登校等)