不登校のお子さんが勉強しないことを心配している保護者は多いのではないでしょうか?
お子さんが学校を休んでいる期間が長くなればなるほど、保護者は「学校に行かない分、家や塾で勉強の遅れを取り戻さなくては」と焦る気持ちが強くなるでしょう。
本記事では、不登校のお子さんが勉強しない理由や保護者ができる対応策、学校の代わりに利用できる学習サポート、お子さんの将来への影響などについて解説していきます。
「学校に行かないなら、せめて家で勉強してほしい」
「不登校の勉強の遅れは取り戻せるの?」
「不登校の子どもに勉強を勧めるべき時期はいつ?」
「このまま勉強しなかったらどうしよう。子どもの将来が心配」
といった不安や疑問を抱えている方の参考になれば幸いです。
不登校のお子さんが勉強しない理由は?
不登校になったお子さんの中には、家で勉強するお子さんもいれば全く勉強しなくなるお子さんもいます。
勉強しなくなるお子さんはどういう心境なのでしょうか?
お子さんが勉強をしない5つの理由を解説します。
①勉強する「心の余裕」がない
不登校のお子さんは、理由はさまざまですが、人間関係のトラブルや学業不振などの大きなストレスにより、心身ともに疲れ切っていることが多くあります。
そういったケースでは、お子さんは「勉強したくても、できない」状態です。
不登校になってまだ間もないお子さんは、この状態であることが多いでしょう。
勉強する余裕がない状態のときは、お子さんに休息が必要な時期と考え、勉強ではなく、お子さんの好きなこと、できることをして過ごし、ゆっくり休ませてあげてください。
②勉強に対して苦手意識がある
不登校になった原因が「学業不振」である場合、勉強に対する苦手意識が強くなっていることが多いでしょう。
「授業についていけず、勉強が楽しくなかった」「成績が悪く、怒られてばかりいた」などの経験により、「勉強すること」=「辛いこと・苦しいこと」という思考になってしまっています。
こういったケースでは、家で勉強することに対しても強い拒否感を持つことがあります。
③勉強の必要性を感じない
不登校になるお子さんの中には、将来に希望が持てず、無気力状態になっているお子さんもいます。
この場合、勉強が嫌いなわけではないけれど、勉強する意味を見出せず、必要性を感じないため勉強しないという状況になっています。
④勉強のやり方がわからない
「②勉強に対して苦手意識がある」「③勉強の必要性を感じない」とは異なり、勉強に対してやる気はあるのに、実際には行動に移せないケースです。
学校に通っていれば、授業に出席し、出された課題に取り組めば誰でも勉強できます。勉強のやり方を考える必要はなく、受け身の姿勢でもあまり問題ありません。
しかし、不登校になると、受け身のままでは勉強できないのです。何を使ってどうやって勉強するか、自分で学習計画を立てる必要があります。
勉強のやり方と言っても、何でつまずいているのか、どんなことで悩んでいるのかはお子さんによって異なります。
一度自分でやってみようと行動した結果、うまくいかず、挫折してしまった場合もあるでしょう。
また、勉強の計画を立てようとしてつまづいているお子さんもいるかもしれません。
⑤将来のことを考えたくない
「③勉強の必要性を感じない」に共通する部分もありますが、不登校が長く続いている場合、進学や就職など、将来に関して、お子さんが希望の持てない状態にあります。
「学校に行けない自分が進学・就職できるわけがない」と思い込み、勉強する意味も見出せない状態です。
また、勉強することによって、逆に自分がどれだけ学校の勉強に遅れているかが明確になってしまうため、現実から目を背けたい場合にも「勉強しない」という選択肢が選ばれます。
このケースでは、内心、不登校になっていることや勉強できていないことに強い不安や焦りを感じています。
勉強したくないお子さんに、保護者ができることは?
不登校のお子さんが勉強しない理由別に、保護者ができる対応策を紹介します。
①勉強する「心の余裕」がない場合
とにかくお子さんを休ませてあげることが大切な時期です。
真面目なお子さんほど、学校に通えていないこと、勉強ができていないことで自分自身を責めています。
保護者は「今は休むことがあなたの仕事」と伝えて、お子さんが心穏やかに休める環境を整えてあげてください。
どれくらい休む必要があるかはお子さんによって異なりますが、安心する場所でゆっくりと休めたお子さんはそのうち行動するパワーが出てきます。
家族との会話が増えたり、外出したい気持ちが湧いてきたり、お子さんの様子が元気になってきたら、勉強することを勧めてみるのもよいでしょう。
②勉強に対して苦手意識がある場合
勉強に苦手意識のあるお子さんには、勉強における成功体験が有効です。
学ぶことで「わかる!」「できた!」という喜びが増え、ものごとの仕組みが紐解ける面白さを感じることができれば、「勉強=なんか嫌だな」という感情が「勉強=楽しい」に変わっていきます。
簡単な問題でよいので、お子さんが小さな成功体験を積み重ねられるように勉強のサポートをしてあげてください。
もちろん、苦手意識を持ってしまった個別の理由がある場合もあります。
お子さんに、なぜ勉強が嫌なのかを聞いてみるのも一手です。ただし、理由を聞くときは、お子さんを責めるような口調ではなく、お子さんに寄り添う気持ちを大切に、コミュニケーションをとってくださいね。
③勉強の必要性を感じない場合
こういったタイプのお子さんは、勉強する意味やメリットを理解できれば勉強に対してやる気を出せます。
保護者が「勉強することが何に役立つのか」を論理的に説明してあげることで、お子さんの意識も変わるでしょう。
「学校に行かないのに勉強をする意味がない」と考えているお子さんもいるので、学校に行くことと勉強することは必ずしもつながっていないということを説明してみてくださいね。
④勉強のやり方がわからない
お子さんが、何に困っているのか、具体的に聞いて、悩みを解決するためにできることをアドバイスしてあげてください。
塾や家庭教師、フリースクールなどの外部の専門機関に頼るのも一手です。
このタイプのお子さんは、自分に合った勉強のやり方がわかれば、勉強に踏み出しやすいともいえます。
⑤将来のことを考えたくない
学校に行っていなくても将来を悲観しなくていい、という大前提をお子さんに伝えてみてください。
お子さんは学校に行けていない自分、学校の勉強に遅れている自分に向き合うことがつらく、現実逃避をしている状態です。
こういったケースでは、簡単なことでも、できることを一歩一歩積み重ねていくことがお子さんの自信や自己肯定感につながります。
お子さんの好きな教科の勉強だけでも構いませんので、今、できることを一緒に考えてあげてください。
不登校のお子さんに勉強させても良い時期は?
「不登校」といっても、不登校になった理由や家でどのような過ごし方をしているのかは、千差万別です。
不登校になって何日目から勉強しましょう!というセオリーはありません。
回復してきたときが勉強の始めどき
保護者がお子さんの様子をよく観察し、「少し元気になったかな?」「ちょっと回復してきたかな?」という状況になったときが、勉強を始めるポイントです。
この時期は、勉強を始めるタイミングとしておすすめですが、勉強にこだわらなくても問題ありません。
お子さんの休息がとれた後、勉強だけではなく、人とのコミュニケーションや軽い運動など、学校復帰のためにできることはいろいろあります。
また、お子さんの見かけ上は「元気そう」「もう大丈夫かな」と思えるような様子でも、まだまだ安定しない時期です。
落ち込んだり、元気になったりを繰り返して徐々に回復していくものなので、保護者はお子さんの様子に一喜一憂しないことが大切です。
勉強を始めるポイント
勉強を始める際は、以下のことに気をつけてください。
・お子さんが主体的に勉強したくなるまで待つ
・短時間からスタートする
・苦手より得意に集中する
・独学で進められるテキストを選ぶ
不登校になってからずっと勉強をしていないと、どんどん授業に遅れてしまうため、保護者は「勉強してほしい」と考えますが、無理してやらせないことがポイントです。
お子さんの負担にならない程度にスタートさせましょう。
一気にたくさんやるよりも、毎日短時間でもよいのでこつこつと続けることが、学校復帰への近道になります。
勉強した努力を認め、褒める
お子さんが少しでも勉強に取り組めたら、「努力そのものを認めてあげる」ことを忘れないでください。
褒めるときに注意したいのが、「良い褒め方」と「悪い褒め方」があることです。
良い褒め方は、「過程や努力を褒めること」です。「勉強を始められてすごいね、偉いね」「私(母親・父親)もうれしい」といったことを伝えてあげることで、お子さんは努力を評価してもらえたと感じます。
反対に、悪い褒め方は「結果だけを評価すること」です。
たとえば、家で取り組んだプリントの理解度を見て「こんなに点がとれてすごいね」という褒め方では、短期的にはお子さんも褒められてうれしいのですが、長期的には「良い点をとらなければ意味がない」というプレッシャーになってしまいます。
結果的に「テストで良い点をとれない自分はダメ」と自己否定につながることもあるので、褒め方にも注意が必要です。
不登校中の学習の遅れは取り戻せるの?
不登校が長引くと、お子さんが勉強に遅れていくことが心配になりますよね。
今からでも追いつくことができるのか、進学できるのか、保護者は不安だと思います。
お子さんにとっても、学校でどんな勉強をしているのかがわからず「置いて行かれてしまっている」という状況は、不安感を高め、学校復帰のモチベーションを下げる原因にもなります。
結論から言うと、学校に行かなくても勉強の遅れは取り戻せます。
学校の学習ペースは、意外とゆっくりしています。
教室は、多様な学習レベルを持つ子どもたち全員が授業についてこれるような内容とスピードで進みます。
その結果、学校を欠席している期間にもよりますが、授業内容が著しく進んでいるということは少ないでしょう。
勉強する教科を絞る
学校では、国語・算数(数学)・理科・社会・英語という主要5教科に加え、音楽や体育などの技能教科の授業があります。
学校復帰と進学を目標に設定するのであれば、家で勉強するのは5教科だけでもよいでしょう。
長く不登校だと勉強が遅れていくのは事実ですが、進学に必要な科目を絞り、自分に合った勉強法で取り組めば、時間を有効に使えるので、遅れを取り戻すことは可能です。
不登校の子どもが、学校の代わりに利用できる学習サポートはある?
学校の代わりに利用できる学びのサポートにはどのような種類があるのでしょうか。
不登校中の勉強方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。
勉強法① 教科書や問題集を使った自主学習
いちばん気軽に始められる学習方法です。
もともと持っていた教科書や、市販の問題集などを使って、自分のペースで勉強していきます。
誰かとコミュニケーションをとる必要もなく、自分の好きな時間に勉強できるので、回復したばかりのお子さんにおすすめです。
また、参考書や問題集を購入する以外は費用がかからないため、どんな経済状況のご家庭でも始められます。
しかし、お子さんが自分でわからない問題が出てきたときに、すぐに質問できる人がいないというデメリットもあります。
また、モチベーションの維持が難しく、継続するにはお子さんの強い意志が必要になります。
勉強法② 通信教育
定期的に教材が送られてくる通信教育も、家庭学習には有効です。
教材を自分で選ぶ必要がない点やタブレットで学習できるなど、たくさんのメリットがありますが、基本的には自分で毎日勉強に取り組む意思が必要になります。
勉強法③ 個別指導塾
不登校のお子さんは、学校に似た環境となる集団塾には通いにくい場合が多いです。
個別指導塾であれば、先生1人に対して生徒1人または少数というスタイルなので、集団での学習に不安があるお子さんでも気軽に通えるでしょう。
受験対策や苦手科目の克服など、お子さんの状況に合わせた学習計画を立ててくれることが多く、わからない問題もその場ですぐに聞けるので、勉強につまづくことが少ない環境です。
ただし、集団塾に比べると費用が高額になることが多いでしょう。
勉強法④ オンライン個別指導
オンラインでの個別指導は、ビデオツールを使って1対1で行われます。
外に出る必要がなく、安心できる自分の家で勉強できるのがメリットです。
また、お子さんによって異なりますが、オンラインは対面のコミュニケーションに比べて気疲れしにくい場合もあります。
逆に、オンラインだと聞きたいことがうまく聞けなかったり、画面越しのやりとりに疲れてしまうお子さんもいるので、お子さんの性格や状態に合わせて活用してみてくださいね。
勉強法⑤ 家庭教師
家庭教師は、自宅で、マンツーマンで指導が受けられるので、わからないところをすぐに質問でき、効率よく勉強を進められます。
気の合う先生が見つかった場合、家族以外とのコミュニケーションの機会としてもよい刺激になるでしょう。
費用は他の学習方法より高額になってしまう場合が多いので、事前に確認しておきましょう。
勉強法⑥ フリースクール
フリースクールは、不登校の小中学生を対象に、学習支援やカウンセリングなどを受けられる民間の教育機関です。
施設によってカリキュラムや特色が異なります。
お子さんの状況に合わせて学習計画をたててもらえることも多く、自宅で自分で勉強を進めていくよりは、学習しやすい環境が整っています。
同じ悩みを持つ同年代の友達とも出会いやすく、友達づくりにも有効です。
不登校のお子さんの家庭以外の居場所としても機能します。
在籍している学校に認められれば、フリースクールへの参加が学校への出席扱いになるというメリットがあります。
勉強法⑦ オンラインフリースクール
リアルで通うフリースクールと同様に、人とのコミュニケーションの場や自分を出せる居場所を提供しながら、オンラインならではのゲームやメタバース空間を活用した活動をしているオンラインフリースクールもあります。
オンラインフリースクールのメリットは
・自宅から参加することができる
・スクールによっては顔を出さなくてもいいので心理的に参加しやすい
・しんどくなったら退出したり、また入室したりできるので、無理なく続けやすい
などが挙げられます。
また、勉強以外にも、自立性や仲間との協調性も身に着けたい人には「シンガク」がおすすめです。
オンラインフリースクール「シンガク」について詳しくはこちらをご覧ください。
勉強法⑦ 教育支援センター(適応指導教室)
主に不登校の小・中学生を対象に、学習を進めたり、集団生活を学べる場所として、教育委員会等が運営している公的機関です。
フリースクールと大きく異なるのは、教育支援センターは不登校のお子さんを学校復帰させることを目標としているため、長期の利用は想定されていません。
フリースクールと同様に、学校の承認があれば出席日数として加算してもらえます。
公的機関であるため、基本的に費用がかからないのも魅力です。
不登校中に勉強しないと子どもの将来に影響するの?
不登校中に勉強をすることは、学校復帰への自信につながります。また、将来の進学や就職に対する前向きな気持ちも持ちやすくなるでしょう。
逆に、不登校期間が長く、勉強もしていない、という状況になると、お子さんは「自分は何もできない」「将来なんて考えられない」とネガティブになり、自己肯定感も下がっていきます。
不登校初期は、お子さんの心身の回復を最優先とし、勉強は必須ではありませんが、回復したら、少しずつ、勉強を始めるのがおすすめです。
勉強は親のためにするものではありません。お子さんが、主体的に取り組んでいくものです。
保護者は、お子さんが主体的に勉強したいと思えるような動機付けをしたり、環境を整えてあげたりすることができます。
勉強を始める時期に手遅れはありません。いつ始めても、勉強の遅れを取り戻すことはできるので、将来を悲観する必要もありません。
冷静に、お子さんの様子を見守り、お子さんに必要な声掛けや手助けをしてあげてくださいね。