「不登校中の学習方法として塾を検討している」
「不登校だけど塾に行きたい」
というお子さんや保護者は少なくありません。
不登校の児童生徒数は近年急増しており、実際に、学校には登校せず、塾や家庭教師、オンライン学習を利用して進学するお子さんがたくさんいます。
また、学習をサポートしてもらうだけではなく、心の回復に取り組むことができる場所として塾が選ばれることもあります。
本記事では、不登校生の塾選びはどのような点に気をつければいいのか、さらに、不登校生が塾に通うメリット・デメリットについてお伝えします。
不登校でも受け入れてくれる塾はある?
基本的には問題なく通える
お子さんが不登校の状況でも、それが理由で入塾を断られることはほとんどないでしょう。
ただし、入塾を断られないからといって、どんな塾でもOKかというと、そうではありません。不登校生は、不登校生に対して理解がある塾を選ぶことが大切です。
では、不登校に対して理解がある塾とは、どんな塾でしょうか?
不登校に対して理解がある塾=不登校に対して理解がある講師が担当講師である塾、と考えてよいでしょう。
講師がお子さんと接する中で、不登校であることを「怠けている」「ずるい」「さぼっている」「学校へ行くべき」などと言ってしまうと、悪気のない一言であったとしてもお子さんは深く傷ついてしまいます。
不登校は、「学校へ行きたくても行けない状態」であり、誰よりもお子さん本人が悩んでいることを理解している講師がいる塾が、心身を疲弊したお子さんが、お子さんなりのペースで前に進んでいける塾だと思います。
入塾テストがある進学塾だと厳しいことも
また、入塾テストがあるなど、比較的学力の高い児童生徒が集まっている進学塾は、不登校のお子さんにとって合わない場合があるので注意が必要です。
特に、不登校になるお子さんの中には「期待に応えようと無理をしすぎる」「得意不得意の差が大きい」といった場合があります。
進学塾であればあるほど、お子さんの成績を伸ばすことが主目標になっていくので、そもそも学校へ行っていないお子さんは塾の授業についていけなかったり、テストの点が伸び悩む可能性があります。
そういった場合に丁寧にフォローがあればよいのですが、塾によって力を入れているポイントが異なるため、見極めが重要です。例えば講師が、お子さんの成績を上げようとするあまり「努力が足りない」「もっと勉強すべき」などと言うことによって、お子さんが傷ついてしまうことがあります。
成績を伸ばすことをいちばんに考えるのではなく、お子さんが無理なく学習できる環境か、ストレスを感じさせない講師陣や生徒がそろっているかをポイントに選ぶとよいでしょう。
不登校のお子さんのための塾の選び方
不登校のお子さんにとって、塾選びは、塾の規模や合格実績など、成績の良し悪しではなく、お子さんに合うか合わないか、が最大のポイントになります。
不登校に対して理解があるか?
学力面だけではなく精神面でも良い影響を与えてもらえそうか?
お子さんの状態をよく観察してその子に合った指導を行ってもらえるか?
また、塾は個別指導や集団塾、オンライン塾など、形態もさまざまです。
お子さんにはどのような塾が適しているのか、それぞれのメリットデメリットを理解したうえで塾を選ぶとよいでしょう。
また、資料やインターネットで塾のことを調べても、雰囲気や活気など、実際に教室を訪ねてみないとわからないことも多くあります。情報収集して目星をつけたら、見学や体験を申し込んで実際に教室に足を運んでから決めると、入塾してから「こんなはずじゃなかった」という失敗を防ぐことができます。
個別指導塾
不登校生のお子さんにとっては、集団塾より個別指導塾が合っているというケースが多いです。
塾の先生や授業、カリキュラムが良くても、それについていくことが前提の学習形態はプレッシャーが大きくなります。
学校の授業に出席していないお子さんの場合、難易度が高い問題やつまづきやすい単元では、より丁寧なフォローが必要になりますし、お子さん一人一人の学習ペースに合わせて指導してもらえる方が、塾の授業についていけなくなるリスクが減ります。
ただ、集団塾の良さもあるので、まずは個別指導で始めてみて、学力面でも精神面でも集団塾で頑張れそうな段階になったタイミングで変えていくのがベストなケースもあります。
不登校専門・積極受け入れの塾
不登校の児童生徒が増えている今、不登校生専門の塾も増えています。
そういった塾は不登校への理解が深いので、通いやすいでしょう。
ただ、お子さんが望むのであれば、不登校専門の塾ではなくても全く問題ありません。どちらかというと、学校に通っているお子さんたちと同じ建物で一緒に学習を進めていく方が、再登校へのきっかけが生まれる可能性も高くなります。
逆に、お子さんが望んでいないのに、保護者の意向で無理に合格実績重視の有名進学塾へ通わせることはおすすめしません。
厳しい環境についていけなくなり、ますます自信を失って自己肯定感が下がったり、無理をすることで心身の疲労が回復せず、再登校への道のりも遠ざかる可能性があるからです。
お子さんはどんな塾を必要としているのか、今のお子さんの心身の状態と塾へ通う目的を考えて、それを踏まえた塾選びをすることが大切です。
オンライン塾
オンライン塾も増えており、選択肢がいろいろありますが、オンラインはお子さんの性格によって合う・合わないがあるので、注意が必要です。
外出せずに学習が進められて取り組みやすいというお子さんもいれば、対面ではないことに慣れず、講師に聞きたいことをうまく聞けなかったり、集中できないというお子さんもいます。
お子さん自身も、体験してみなければわからないことなので、評判や実績、口コミだけではなく、体験をしてみてから判断するのがよいでしょう。
家庭教師
家庭教師は、
- お子さん一人一人の理解度や学習レベル、性格に合わせて指導してほしい
- 家以外の場所では集中できない
- 初歩的なところからやり直したい
といったお子さんにおすすめです。
不登校のお子さんにとっては、家に講師が来てくれるので外出する必要がなく、学習する環境としてはハードルが低く始めやすいでしょう。
また、お子さんの理解度や学習レベルに合わせた指導をしてもらえるので、ついていけなくなる心配がなく、精神的にも安心して学べると思います。
1対1での指導になるので、学習面以外のことを気軽に相談しやすいといったメリットもあります。
家庭教師という第三者の立場だからこそ、お子さんが気軽に気持ちを話せる場合もありますし、勉強や生活についてのアドバイスがもらえることもあります。
ただし、家庭教師は学習塾や個別指導塾と比較して費用が高くなる傾向があるため、サービス内容や価格を比較検討するのがよいでしょう。
不登校のお子さんが塾に通うメリット
不登校のお子さんが塾に通うことは、学習面のサポートはもちろん、コミュニケーションの機会になることも大きな利点といえるでしょう。
塾に通うメリットを説明します。
学校の授業と同じ範囲を学習できる
学校の授業では、先生が一方的に説明する時間が多く、お子さんが練習問題を解いて問題の解説を聞く時間は少ない傾向にあります。
一方、学習塾では、練習問題を解いたり、解説を聞くことを中心に授業が進められます。
このように、学校の授業と学習塾では、指導方法が異なりますが、学習範囲は同じであることが多いです。
学校と同じ授業を受けられるわけではありませんが、塾に通うことで学校の学習範囲をカバーできるというメリットがあります。
不登校のお子さんが家で独学で勉強するというハードルはとても高く、塾で勉強しておくことで復学後も授業にスムーズについていきやすくなるので、定期的に通えそうな様子であれば、塾でしっかりと学習していくのが最善策だと思います。
受験や進学を選択肢にしやすい
学校に行かなくなっても、塾に通って学習を続けることで、受験や進学を諦める必要がなくなります。
学校の先生が対応してくれる進学相談についても、塾の講師に相談することができますし、受験や進学に向けた具体的なアドバイスももらえます。
学習塾は、受験のための情報も多く持っていますし、安心して相談してみてください。
学校の出席扱いとなる場合もある
文部科学省は、「不登校への対応について」(*出典1)で、不登校でも教育センターや塾などで義務教育と同じ教育を受けているとみなされた場合、「出席扱い」にできることを通知しています。
学校に相談したうえで、学校と決めた学習計画に対応してもらえる塾を探すことで、「出席扱い」が可能になります。
まずは、お子さんの通う学校に相談してみてくださいね。
【塾での学習を出席扱いにする方法】
①学校に相談
②学校と「出席扱い」の要件をすり合わせ
③学校と学習計画を立てる
④学習計画に沿って指導できる塾を見つける
⑤学校の許可を得る
「出席扱い制度」について詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。
コミュニケーションの機会を得られる
お子さんが学校に行かなくなることで不安になる大きな要因の一つが、家族以外とのコミュニケーションの場を失ってしまうことです。
日常的に同世代の友人との会話ができなくなることで落ち込む可能性が高まりますし、勉強においても、1人で黙々と勉強し続けるということはなかなか難しいことです。
塾に通うことで、定期的に家族以外の第三者とのコミュニケーションの機会が得られるため、受験を控えている場合なども相談相手ができ、精神的に安定しやすくなることが多いでしょう。
学校復帰のきっかけになることもある
不登校のお子さんが復学するきっかけにはさまざまなパターンがありますが、塾に通っていることが復学のきっかけになることもあります。
特に、授業についていけない、成績が下がるなど、学力面で自信がなくなったことがきっかけで不登校に至ったお子さんは、塾でしっかり勉強し、学力があがったことが実感できれば、また学校に行きたいと思う可能性が高いです。
また、人間関係のトラブルで精神的に疲弊していた場合も、塾の友人との交流によって回復していくケースがあります。
不登校のお子さんが塾に通うデメリット
不登校の根本的な解決になるわけではない
塾に通うことで学力が向上したり復学のきっかけになったりするケースはありますが、塾通いが不登校の根本的な解決になるというわけではありません。
学校は勉強だけではなく、社会で生きていくための集団生活を学ぶ場でもあります。塾は学習をサポートしてくれますが、完全に学校の代わりになることはありません。
不登校のお子さんが塾に通い始めるということは、一歩前進ではありますが、不登校問題の解決とはまた別問題であるということを認識いただければと思います。
授業料など家計への負担
塾によって料金体系には幅がありますが、塾に通う場合はコストがかかります。入会金や授業料、教材費、設備費など、各家庭の経済状況に合わせた塾を選ぶことが大切です。
不登校でも塾に通っている場合のよくある質問
塾だけの学習でも大学受験はできる?
不登校のお子さんが大学を受験するにあたっては、3つの条件クリアする必要があります。
この3つの条件をクリアできれば、高校に通っていなくても、大学受験をすることができます。
①大学受験の資格を得る
大学受験をするには、高校卒業または高卒認定試験(旧大検)を受けて高卒資格を得る必要があります。高校の途中から不登校になった場合は、足りない分だけ高卒認定試験を受験することも可能です。
高卒認定試験は大学受験で出題される問題と比較すると難易度的には簡単な試験です。
どの教科もまんべんなく勉強しなければいけないという大変さはありますが、塾に通って勉強することができれば、合格するお子さんが多いでしょう。
②受験の情報収集
大学受験では、全国の大学、広く見れば世界中の大学が進学候補になります。
- どんな大学があり、どんなことが学べるのか。
- 受験はどのような内容で、どんな準備が必要なのか。
- 自分の得意科目を生かして受験できる大学はどこか。
- 高校で不登校でも馴染みやすい雰囲気の大学はどこか。
こういった、さまざまな角度から多くの情報を調べる必要がありますが、学校の先生に相談できない分、お子さんが主体的に考えることが求められます。
もちろん塾の講師が進学相談に乗ってくれますが、ある程度は自分で情報を集めようと主体的に動けた方が、大切な進路を後悔なく決めていけるでしょう。
③受験対策の勉強
いちばん重要なことは、受験に合格するための勉強ができるかどうかです。これは塾が最も得意とするところなので、塾と相談しながら勉強計画をたてることができます。
特定の大学の受験に特化している塾もあるので、お子さんの負担にならない雰囲気であれば、塾の合格実績を参考に塾探しをするのもよいでしょう。
不登校の大学進学について詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
学校復帰に繋がるケースはある?
塾通いが復学につながることは少なくありません。
逆に、塾に通っていないことで、不登校が長引く理由が生まれてしまうこともあります。
たとえば、学校に行っていなかった期間に自分で勉強を進めていない場合、復学してから授業についていくのが難しくなってしまいます。「授業についていけなくなる」という不安から、復学したくないという気持ちが強くなってしまう可能性があります。
また、不登校が長引き、家族以外の人とのコミュニケーションが途絶えてしまうと、学校でいろいろな人に会うことにも拒否感や恐怖感が生まれてしまう可能性もあります。
学校生活にスムーズに戻るためにも、不登校のお子さんは塾に通って復学のタイミングを探っていくのがよいでしょう。
【まとめ】
不登校のお子さんにとって、塾で学ぶということにはさまざまなメリットがあります。
お子さんの様子をしっかり確認しながら、目的と用途に合った塾を選び、見学・体験を通して入塾を決めていただきたいと思います。
不登校に理解がある塾であれば、心身ともに回復途中のお子さんも無理なく頑張れる環境を用意してもらえます。
入塾後に、何らかのトラブルが発生しても、理解がある講師の方がいれば、トラブルが拗れることなく安心して通わせられるでしょう。
不登校のお子さんが通塾することのデメリットに気を付けて、塾を活用してみてくださいね。
【出典一覧】
*出典1 文部科学省|不登校への対応について
参考箇所:文部科学省の不登校に関する主な施策